01/20の日記

08:10
ラピスラズリの天泣H
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久々な更新……。
瑠璃好きなんですけど、なかなか書く時間が取れず……。
さらに別のジャンルにはまったりもしてるので余計に時間が……!
ついに我が本丸にも髭切が来まして育成中なのです。
しかし明石は来なかった……ちくしょう資材が……!
そんなこんなで、瑠璃ですどうぞ(*・∀・)つ









ある日、私はのんびりと歩いていた。
本屋に行こうとしていたのである。
雲1つない青空。
出るときに少し、お天気雨が降っていたけど、今はもう止んでいる。
新発売の本を買おうとしていた私の足は軽く、途中ちょっと鼻唄なんかも歌っちゃったりして、その時は気分よく歩いていたのだ。
しかし途中、公園に差し掛かったとき、私は足を止めた。
道の端で起こっていたその事態を、凝視せざるを得なかったのだ。
だってだって、ボロッボロの服を着てぐったりしてる子どもと、それを足蹴にして追い討ちを掛けようとしている子どもがいれば、面倒ごとが嫌いな私でも足を止めざるを得ないじゃないか。

「ちょ……何やってるの僕!?」
「僕じゃねぇぞ、リボーンだ。オレは何もしてねーが、このアホ牛が飛び掛かってきたからな。ちょっと痛め付けてやっただけだぞ」
「ちょっとじゃなくてかなり痛め付けてるじゃ……って言うか君随分流暢に話すね!?」
「オレだからな」
「何その自信!」

子ども……と言うか、赤ん坊と言われても違和感のない見た目の子。
その子が何故か、しっかりばっちり二足歩行をしてその上とてつもなく流暢にかつ生意気に話している。
しかもその服装は真っ黒なスーツにボルサリーノ帽、あとついでに帽子には小さな爬虫類……カメレオン?が乗ってる。
いや、何者?
ビックリ人間ショーなの?
というか飛び掛かった?
このボロボロの子の方が?
嘘だろ、はい決定。

「嘘じゃねーぞ。こいつはよくオレにちょっかい掛けてきては返り討ちにあってるからな」
「は……え?そ、そうなの?ふーん。それは何と言うか、うん、ご愁傷さまだね?」
「まあもう慣れたからな」
「はははそりゃあ良かったネ」

嘘って思ってたこと、顔に出てたか?
図星を指されて動揺して、棒読みになりながらも頭の中で必死に考えを巡らせる。
とにもかくにも、この子どもには関わらないのが吉だ。
絶対ヤバイ厄ネタ持ちだ。
関わったらそこで人生の試合終了な予感しかしない。
そしてその子に足蹴にされている子。
あの子を回収してこの場を立ち去った方がいい。
このまま放っておいたらろくなことにならない気がする。
なんか頭の悪そうな顔してるし、この二人をこのままにしといたら危ない、気がする。

「じ、じゃあそこの倒れている子は私が連れていってあげるからさ。君はもうお家に帰った方がいいよ」
「そうか、世話かけるな」
「世話かけっ…………いや、大したことじゃないよ」

子どもの使う言葉じゃねーよ!
さっきから聞いてれば痛め付けるとか返り討ちとか、子どもの生活とはまるで縁の無さそうな言葉ばかり聞こえてくる。
こいつは本気で関わりたくない。
絶対普通じゃない。
倒れた子どもがいなければ私はすぐさま逃げ帰っていたと思う。

「あ、はは……じゃあさよならだねー」
「ああ、じゃあまたな、カラスマ」
「いや、きっともう会うことはないかと……え?」

あれ、私、あの子に名前教えたっけ?
ボロボロの子を抱きかかえようとしたときに、はっと気付いて顔を上げる。
私の記憶が正しければ、自己紹介なんてしちゃいない。
なのに何で、あの子は私の名前を知っているの?
しかし聞こうと思って顔を上げたその向こうに、ボルサリーノの子どもはいなかった。
背中に悪寒が走る。

「な、何者だよあのガキんちょ……」

しかも『またな』なんて言われたよね?
なんかヤな感じしかしねぇよ……。
あ、冷や汗と鳥肌が。

「……行こ」

こういうときは外をふらふらせずに、さっさと家に帰るに限る。
幸い倒れてた子は擦り傷とか打ち身とかだけのようだ。
でも近くに親や家族らしき人影はなくて、たぶん一人で遊んでたみたいなんだよな。
仕方ない。
一度家に連れ帰って、傷の処置だけして、さっさと帰そう。
これ以上面倒ごとに関わるのは御免だ。
この子には悪いけれど、長々と付き合って上げる余裕は私にはない。
男の子を抱えて、私は早足に家に帰ったのだった。

「カラスマハルカ……思ってたよりも鼻が利くみてーだな」

公園の傍にある木の上から、リボーンとか名乗っていた子がそう呟いているとも知らずに。


 * * *


休日の家庭、私の親(仮)は共働きで、休みは不定期のため、今日はどちらも家にいない。
私一人だけで、誰にも邪魔されずに本を読む、予定だったのだが……。

「こら!動くなー!」
「だって痛いー!」
「怪我してるんだから当たり前なの!動いたらいつまで経っても終わらないんだからね!」
「う、うぅ〜!が……ま……ん……!」
「よし良いぞ良いぞその調子!ランボ君偉いぞ〜」
「……やっぱり無理〜‼」
「ぎゃあー!」

暴れるボロボロの子……もとい、ランボ君のお陰で、私は消毒液を被ったり湿布が顔面に落ちてきたりと、もう散々な目にあわされている。
善意で彼を拾ってきたのだが、今は玄関から放り出してしまいたい気持ちで一杯だ。
それでもなんとか傷の手当てを終わらせて、疲れきった私はソファーの上にへたりこんだ。

「ハルカー!ランボさんお腹減ったー‼」
「そうかよクソガキ、自分の家に帰って夕飯を食べることをおすすめするぜ……」
「ランボさんジュースとケーキ欲しいー!」
「そうかよ、帰れ」
「ハルカのケチ!」
「誉め言葉だぜべいびーありがとな」

もうまともな返事をする気力もない。
でもこのまま寝るわけにもいかないし、とにかくこのクソガキを家まで送り返してやらなくちゃな……。

「ハルカぁ……怒った?」
「……怒ってないよ、疲れただけ」
「そっか!じゃあトクベツにランボさんの宝物やるから元気出すんだもんね!」
「えー?宝物ー?」
「にしししし、ブドウのアメー!」
「おおー、ちょっと値段の高いフルーツ飴か」
「ハルカにだけトクベツだからな!今回だけだからなー!」
「へいへい、ありがとねランボ君」

飴を受け取って口に放り込む。
あー、飴舐めるの久々な気がする。
何だか少し懐かしい気分だ。
ランボ君もまあ悪気があってウザいわけではないのだろうし、もうちょっと頑張って面倒みてやろうかと思えるくらいには、心が回復した。

「んー、美味しいね飴玉。ありがとねランボ君」
「ふっふーん、ランボさんのこともっとほめてもいーんだよ?」
「別に誉めてねーよ。でもまあ、んん、ジュースくらいは出してやろう」
「ほんとか!」

まあこの子の家の住所を聞くことを考えれば、機嫌が良い方が都合良さそうだし。
私はオレンジジュースを注いで渡し、嬉しそうにそれを飲むランボ君の前に座った。

「ランボ君さぁ、お家どこ?自分で家に帰れる?」
「んーランボさんのお家はねー、公園のぞうさんとねージャングルジムとねー、あとツナん家!」
「1つじゃないのか……じゃなくてツナん家?ツナ……沢田綱吉とか?いや、流石にそんな偶然は……」
「ツナはツナなんだもんね!」
「……一応電話してみるかな」

沢田君の家の住所はわからないけど、電話番号なら連絡網があるからわかる。
早速電話をかけてみた。

『ーー……はい、沢田です』
「あ、こんにちは。沢田綱吉君のクラスメイトの烏丸と申しますが……、綱吉君はおられますでしょうか」
『あら、ツッ君のお友達!?ちょっと待ってね、すぐに変わるから!』
「……はーい」

ツッ君か、可愛い呼ばれ方だな。
本人はめちゃくちゃ嫌がってそうだけどね。
保留の音楽が流れている間、ちょっかい掛けようとしてくるランボ君に静かにするようにジェスチャーを送る。
むぎゅっと口を閉じて黙ってる様子が不覚にも可愛いと思ってしまった。
ちくしょう、負けた気がする。

『あ、あの沢田です!綱吉です!烏丸さん?』
「そーです私が烏丸ですー。昨日ぶりだねツッ君」
『ツッく……母さんでしょ!
止めてよそんな呼び方?』
「あ、やっぱり嫌だったんだ。可愛いのにね、もったいない」
『可愛くないよ!それより何で烏丸さんがオレに電話?連絡網?』
「あ、いや。学校関係ではないんだよね」
『へ?』

ランボ君に萌えてしまった悔しさを沢田君にぶつけてみた。
予想通り怒られたけどスッキリしたので良しとしようじゃないか。
電話の向こうで沢田君が怒っているのを想像して笑いながら、ようやく本題に入る。

「沢田君さ、ランボ君っていう5歳くらいの男の子、知らない?」
『え……えー!?なんで烏丸さんランボのこと知ってるの!?』
「……沢田君ランボ君知ってるの?」
『あの……その、家で面倒見てるって言うか……ちょっと今家に住んでたりするって言うか……』

ダメもとで電話かけたんだけど、意外や意外、ランボ君の言うツナは沢田綱吉の事だったらしい。
世間は狭いんだな。
でもランボ君の家が見つかって良かった。
帰る家がわからないってなったら、警察に届けたり事情を聴取されたりって、厄介なことになりそうだしね。

「そのランボ君が、今私の家にいるんだけどね。沢田君の家で預かってる子なら、今から迎えに来てもらっても良いかな?」
『い、行く!すぐ行く!ランボの奴見かけないと思ったら……なんでそんなところに……』
「助かるわー。ちなみに沢田君、私ん家の住所わかる?」
『わ……かんない……』
「んじゃあ今から言うからメモしてー」
『ありがと!』

住所を伝えて電話を切る。
思ったよりも簡単に帰せそうで良かった。

「ランボ君、沢田君が迎えに来てくれるって」
「サワダ?」
「えーと、ツナ君が迎えに来てくれるって」
「えー、ツナぁー?」
「不満なのかよ、わがままだなお前」

思わず出た本音は、運良くランボ君には聞かれなかった。
そしてランボ君がジュースのペットボトルを半分飲み干そうかと言う頃、呼び鈴の音が響く。

「沢田君お疲れさまー。いやぁありがとね迎えに来てくれて」
「いやいやいや!オレの方こそありがとね!ランボ、暴れたりしなかった?」
「あー……まあ許容範囲内だったからノーカウントで。大丈夫でしたよー」
「う……ごめんね迷惑かけて……」
「平気平気ー。実は怪我してたの拾ってさ。一応手当てしといたけど、後でちゃんと見てもらった方が良いかもね」
「そ、そうなの?何から何までありがとう……」
「いやいや、なんてことないですよ」

なんてことあったけれども、そこは大人の礼儀として黙っておく。
奥から小さな足音がして、ようやくランボ君が玄関に来た。

「ハルカだれー?」
「沢田君……えーとツナ君だよ。ランボ君のこと迎えに来てくれたよ」
「えーやだー!ランボさんまだハルカん家にいるんだもんね!」
「こらランボ!我が儘言わない!烏丸さんのこと困らせるなよ!」
「だってー!」

とまあ、意外とランボ君、私になついてくれたらしい。
面倒のかかる子だけど、まあ子どもってのはそんなもんか。
私はしゃがんで、ランボ君の頭に手を置いて話しかけた。

「ランボ君、お家で待ってる人に心配かけちゃうから、今日は帰りな?」
「でも……」
「また遊びに来てもいいから、ね?」
「ほ、ほんと?」
「悠お姉さんは嘘つかないからね。そんときはお菓子用意しといたげるよ」
「ランボさん帰る!今度またお菓子食べに来てやるんだもんね!」
「ちょっ!ご、ごめんね烏丸さん!」
「あー、良いの良いの」

またランボ君と遊ぶと約束をして、バイバイと手を振る。
生意気なガキんちょだけども、たぶん悪い子ではないのだろう。

「本当に……ありがとね、烏丸さん」
「気にしないで良いって。沢田君も気を付けて帰ってね」
「あ……うん。……あのね烏丸さん、オレ1つお願いがあって……」
「ん?なに?」

沢田君、気を使える良い子だなぁ、なんてほのぼのしながら、彼にも別れの言葉を告げる。
でも彼は、少し言いづらそうに、と言うか恥ずかしそうにしながらお願い事、とやらを話す。

「その……沢田って呼ばれるの、あんまり慣れてないし……その、出来たらさっきみたいに、ツナって呼んでくれた方が、良いかなー、なんて……。あ!ごめん!嫌なら全然良いんだけどさ!」

ああ、そう言えばさっき、ランボ君に分かりやすいようにツナ君って言ったんだっけ。

「別に良いよ?そう言えば、ツナ君の友達みんなあだ名で呼ぶもんね」
「う……うん!じゃあ今日は本当にありがとね!また学校でね!」
「んー、またねー」

あだ名を呼んだ瞬間、ツナ君の顔がぱあっと明るくなった。
あーダメダメ、お姉さんそういう笑顔に弱いんだよなぁ。
思わずこっちも頬が緩んでしまう。
兄弟みたいに手を繋いで、並んで帰っていく二人を見送りながら、ほんのり暖かな気持ちを感じる。
ほしかった本は買えなかったけど、こんな1日も悪くはないかもしれないと思った。

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