06/05の日記

18:54
ラピスラズリの天泣G
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瑠璃が一番、真っ当な夢っぽい気がします……。
メイン、サブ連載が真っ当でないのは……たぶんストレスが貯まってたんでしょうね、きっと……(遠い目









家庭科実習、それは義務教育の現場では欠かせないイベントであり、尚且つ思春期真っ盛りな中学生ともなれば、『○○先輩!私の作った卵焼き、食べてくださいっ!』『○○君には特別に大きいカップケーキあげるねっ!』『えへへ、失敗しちゃった……でも、頑張って作ったんだよ?』なーんて女子が男子に料理を渡してカップル成立!なんて夢を見る少年達が多発する悪魔的イベントである。
その筈である。
しかし、だがしかし!

「……rice ball ?」
「どうして英語なのよ。」
「遥ちゃんの発音カッコいい!」

家庭科室で下された司令……もとい、授業の内容は、『おにぎりを作ること』。
おいおい待て待て、そんなこと小学生でも出来るだろう。
いや、下手したら幼稚園生だって出来る。
しかししかし、女子達は意外にも盛り上がっていた。

「私ぜったい山本君におにぎりあげる!」
「えー!私もあげる!」
「私は獄寺君かなー。」
「ちょっと怖いけど、私も獄寺君にあげたいなー。」

やっぱり山本君は大人気だ。
次いで、獄寺君の人気も高い。
……獄寺君ってあのやさぐれている転校生の彼か。
そんなに人気高いのか。

「で?あんたは山本に何おにぎりあげるの?」
「え?あげないよ?」
「は?」
「おにぎりは自分の為に握ってこそ美味いのです。」
「でも、山本君はきっと喜んでくれると思うよ?」
「京子ちゃん、あれを見てごらん……。
あんなにおにぎりもらったらお腹一杯で何も入らないよ。」
「あ、そっか!」
「おにぎりをあげるよりも、お茶の一杯でもあげるのが、級友としての優しさってものなのだよ……。」
「そうだったの……。
遥ちゃん、優しいんだね!」
「おバカ、こいつは単純におにぎりを自分で食べたいだけよ。」
「ぎくり。」

まあ花ちゃんの言うことは7割方当たりだ。
うん、今日はお弁当忘れたからこれがないとかなり厳しい。
そして一応、さっき言ったことも3割方本気だ。
だってあの数のおにぎりもらったら、いくら食べ盛りでもキツいでしょう。

「まあとにかく、私達は私達で好きなように作ろーぜぃ。」
「それには賛成。
京子は何作るの?」
「私はおかかと鮭!」
「花ちゃんは何つくんの?」
「梅干しと昆布ね。」
「お、渋いねー。」

で、私達は私達なりにおにぎり実習を楽しんだわけだ。
ちなみに私はツナマヨと焼おにぎりを作った。
そして実習終了後、教室に帰った私達を待ち受けていたのは、今か今かと腹を空かせた男子たちだった。
男子達は別の授業だったそうなんだけど、君達おにぎりそんなに食べたかったの?ってレベルの食い付き。
いやまあ、好きな女の子のお手製おにぎりって食べてみたくはあるんだろうけれど。
しかしおにぎりだぞ、おにぎり。

「そんなに食べたいもんかね。」
「そんなもんなんじゃないの?
ほら、京子なんてあっという間に囲まれたし。」
「お、京子ちゃん誰に渡すのかな〜。」

男子はやっぱり、学園のアイドル笹川京子に群がっている。
反して女子は、山本君か獄寺君に群がっていく。
モテる人は辛いね、まったく。
私はモテ組の様子を遠目に見ながら、今の内におにぎりを食べてしまおうと手を合わせた。

「いっただっきまー……「食べたら死ぬんだぞ!」……ぅえ?」

なんか聞き覚えのある声に邪魔されて、声の主の方へと視線を向ける。
そこには空から落ちてきたおにぎりをぱくんと加えた沢田君がいた。
……あの時同様、なぜかパンツ一丁で。

「うまい。」

いや、うまい。じゃないでしょう。
何で事あるごとに脱ぐんだろう、彼は。
おにぎりを両手に持ってそそくさと遠ざかりながら、片手のツナマヨを一口食べる。
遠くから眺めてよう。
その判断は、どうやら正しかったらしい。
その後、足りないだのなんだのと叫びながら女子のおにぎりを食いまくっていった沢田君のせいで、男子はみんなおにぎりをもらうことができなかったのだった。

「沢田ー!!」
「テメー1つ残らず食い尽くしやがって!」
「ここに一個残ってるわよ。」

そこでめでたしめでたし、と終わらせてくれないのが、我が友、花ちゃんである。
幸いにも沢田ショックを免れた私の焼おにぎりに、クラス中の男子の視線が集まる。

「か、烏丸……おまえ、オレ達の為に守ってくれたって言うのか!?」

違う。

「ありがとう烏丸、そのおにぎりはオレが……」
「待て!オレがもらうんだよ!」

そもそも誰かにくれてやるなんて言ったか私!?

「ん?烏丸おにぎりくれるのな?」
「いや、私は別に……てぇ!?山本君!?」

後ろから突然、声が降ってきた。
独特の語尾を持つ声の主は、やっぱり山本君で、じっとおにぎりを見ている。

「……くれねーの?」
「いやいやいや!あげるあげる!どーぞどーぞ!」
「そっか!ありがとなー!」
「どういたしまして……。」

あげてしまった後に、はっと気づいた。
あれ……私の……お昼……。

「バカね、遥。」
「良かったね遥ちゃん!」

正反対な言葉を掛けられた後、最後のおにぎりを手に入れられずに落ち込む男子達と共に、私もまた項垂れたのだった。

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