群青の鮫

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―― ティリリッ
『バトル開始1分前です。今回の制限時間は90分です』

午後3時丁度。
それぞれの腕時計が合図を告げる。
これが恐らく、最後の戦いになるのだろう。
綱吉達のダミーの目の前に、夜の炎が燃え上がる。
溶け出るように現れたバミューダとイェーガーは、早々に答えを求めてきた。

「やあ、リボーン君。迎えに来たよ。仲間になる準備はできたかい?」

十中八九、仲間になることを確信していたのだろう。
鷹揚に尋ねたバミューダに、だがしかし、リボーンが頷くことはなかった。

「悪いなバミューダ。お前の仲間にはなれねぇ」
「え?これは驚いたな。それが何を意味するのか、わかっているんだよね」
「お前らバミューダチームには、勝たせねぇから心配すんな」
「そしてリボーン達を殺させはしない」

強く言い放った綱吉達に、バミューダは感情を感じさせない、一本調子な声でせせら笑った。

「やれやれ、どう転んでもリボーン君達が生き残ることはできないと教えたのに。それとも何か、現アルコバレーノ達が生き残る秘策でも見つけたのかな。まあ、だがもういいよ。僕は生に固執するような、軟弱な仲間はいらない。ここで、お別れだね、リボーン君」
「ああ」

バミューダが、リボーンが、戦士たちから離れる。

『バトル開始』

腕時計の合図と共に、イェーガーが動き出した。
瞬きする間もなく、綱吉達の背後に移動する。
長い長い鎖が、唸りをあげて襲い掛かった。

「!?」

獄寺の首が断ち切られてゴトリと落ちる。
だが、その断面からは血が吹き出すでもなく、その体が崩れ落ちることもなく、違和感を感じたイェーガーは、その正体を叫んだ。

「この感触!人形!?」
「だが、おかしいよ。炎も、心臓の鼓動も感じる!!」

バミューダの疑問の答えはすぐに、イェーガーが縦に裂いた人形の中から姿を現した。

「機械だと?」

ダミーの本体と同じ炎、鼓動、声を発し、自動で動く囮人形。
ヴェルデ、入江、スパナが共同製作したその機械に、術士達が本物そっくりに造った人形を被せてある。
見分けることは先ず間違いなく、不可能だ。

「沢田綱吉を含む全員が人形だ!!」

全ての囮を破壊し、イェーガーはリボーンを睨め付けた。
そして間もなく、イェーガーを待ち受ける戦士が姿を現す。


 * * *


マーモンチームを倒しに向かったアレハンドロに続き、ビッグピノとスモールギアが倒されたことを感じ取り、バミューダは深くため息をついた。
さしずめ、復讐者ともあろうものが情けない、といったところだろうか。
そして目の前に現れた残り3チームの連合メンバー達を見やる。
六道骸、跳ね馬ディーノ、白蘭、そしてヴァリアーのXANXUSにスクアーロ。
その中で一人、進み出てきた白蘭が、楽しそうに笑いながら言った。

「んじゃ、僕からやらせてもらうよ。ジャンケンで勝ったんだ♪」
「貴様らがどんなつもりだろうと、オレは全員を一度に相手にする。そのつもりで気を抜かぬことだ」
「ふぅん。そんな余裕は、すぐになくしてあげるよ」
「どうだろうな」

十分な間合いを保ったまま、白蘭が自身の武器である白龍を召喚した。
勢いよくイェーガーに飛び掛かった白龍だったが、飛び掛かったその先に、イェーガーはいない。
突然、横から白龍の胴体が切られる。

「!!」
「今の動き!!」
「ツナの言ってた」
「短距離瞬間移動(ショートワープ)!!」

一瞬のうちに白龍の横に移動したイェーガーが、素手でその胴体を切ったのだ。
そのショートワープもさることながら、素手での戦闘能力もずば抜けている。
おもむろに白蘭に向き直ったイェーガーが、再びショートワープの姿勢に移る。
白蘭は体の前に腕を構えて防御するが、イェーガーが現れたのは、白蘭の側ではなかった。
XANXUSの背後、既に腕を振り上げた姿勢で現れたイェーガーは、そのままXANXUSの右腕の付け根目掛けて腕を降り下ろし……、

―― チュインッ
「!!」

イェーガーは死角から放たれた弾丸をギリギリで避け、飛び退る。
その瞬間に出来た隙を目掛けて、XANXUSと近くにいたスクアーロが攻撃に転じる。
XANXUSの銃撃を、ステップで避ける。
避けたイェーガーの背後から、スクアーロの剣が迫る。
三度、ショートワープで移動し、スクアーロの背後に出現したイェーガーが付き出した腕が、攻撃を防ごうと掲げた剣ごと、心臓を突き破った。
瞬間……――

―― ドガァン!!
「!?」

スクアーロの体が、一瞬膨れ上がり、次の瞬間派手に爆発した。
不意打ちの爆風に飛ばされたイェーガーが、空中で体勢を立て直し、少し離れたところに着地した。
その肩に、バミューダが乗り、初めて驚いたような声を出した。

「まさか……また、人形かい?」
「あはは、安心しなよ。人形はスクアーロクンだけで、僕たちは本物だからね」
「ふぅん。ってことは、もしかして、XANXUSクンへの攻撃を邪魔した銃撃はスクアーロ君のものかい?君達の中で、あれだけ正確で素早い狙撃が出来るのは、彼くらいのものだろうからね。イェーガー君」
「ああ」

イェーガーがバミューダの言葉に促されて、銃弾が発射された方角へとショートワープする。
広場を囲む木立、その中の1ヶ所に、光るものを見付けたイェーガーは、手刀を繰り出し、木と、黒い影を切り裂いた。

―― ボゴォッ!!
「クッ……!!」

再び、爆発が起こる。
イェーガーが切り裂いたのはスクアーロではなく、嵐の炎を含んだ爆発物だったのだ。

「……考えるね。一発撃つごとに場所を変え、居場所を悟られないまま、遠くから僕たちの攻撃の邪魔をするつもりかい?」
「そうだぞ」
「卑怯で矮小な、弱者らしい戦い方だね。ナンセンスだよ」
「クフフ、だがしかし、あなた達はその矮小な存在に倒されるのです。卑怯でも、臆病でも、奴は死と隣り合わせの生活の中でそうして生きてきたのですからね。……非常に、生意気なことですが」
「覚悟しろよバミューダ。新しいバトラー達は、半端じゃねーぞ」

リボーンがハードボイルドに、ニヤリと笑んだ。
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