群青の鮫

□35
2ページ/3ページ

さて、場所は変わって、並盛のとあるレストランにて、リボーンチームの代理戦争1日目報告会が開かれていた。

「どーなってんだ跳ね馬!!ヒバリはお前がうちのチームに連れてくるんじゃなかったのかよ!!」
「わりぃ!!恭弥が代理戦争1日目に代理になるか答えを出すっつーから期待してたんだが!!まさか当日に敵チームに入って襲ってくるとは……。いくらあいつでもそこまではしねーと……。想像を越えてたぜ……」
「甘ぇんだよ!!」

リボーンチームの1日目は、散々の結果で終わったらしい。
ヒバリは敵チームに入り、笹川了平はヒバリのトンファーにより、あっという間に脱落。
そして、沢田綱吉とその父親、家光との戦いも残念な結果に終わっていた。

「父さんに、負けたんだ」
「なっ、負けた!?」
「お父上に!?」
「あっという間にぶっ飛ばされて気を失ったよ……。だけどあいつは、なぜかオレのボスウォッチを壊さなかった」

沢田綱吉が気を失っている間に、リボーンが家光と取り引きをしたらしい。
ボスウォッチを壊さない代わりに、同盟を組んだそうだ。
悔しそうにうつむいた沢田だったが、聞こえてきた声にパッと顔をあげた。

『お疲れ諸君。この声は代理戦争用の腕時計をしている全ての者に届けている。私が″虹の代理戦争″の主催者である、チェッカーフェイスだ』

声は腕時計から聞こえてきた。
チェッカーフェイス。
何の捻りもない、そのまんまの名前である。

『今後このような形で、毎回戦いの後に各チームの戦績を発表する予定だ。腕時計よりホログラムで映し出されるので、戦略の足しにしてくれたまえ』

そして腕時計から映し出された画像。
その中の1チームが、全員の目を引いた。
ヴェルデチームである。

「一気に5人も倒してるチームがある!!」
「あいつら……何があるんだ?」

リボーンが疑問を口に出すが、それに答えるものはいない。
とにかく今は、要注意ということで話は終わった。
そして最後の議題は、ディーノが戦闘中に駆け付けられなかった問題だ。

「そのことならもう手は打ってあるぞ」
「?」

リボーンの視線の先では、ロマーリオがぐっと親指を立てている。

「なっ、ロマーリオ!」
「あいつ、いつのまに!!」
「残り2人の代理は引き続き探しておく」

そして、そこで一度言葉を切ったリボーンは、ピョンっとイスの背凭れの上に飛び上がり、声を掛けた。

「で、マーモンチームはどうだったんだ?」
「へ?」
「え?なんでマーモン?ってか何知らない人に話しかけてんだよリボーン!!」
「バカツナめ、こいつはスクアーロだぞ」
「ええっ!!」

リボーンは、オレに、話し掛けた訳である。
折角探り入れに、変装までして来たってのに。

「やっぱバレてたのか……」
「当たり前だぞ」
「え?え!?本当にスクアーロなの!?」

ニット帽に短髪、分厚い眼鏡にカジュアルな服装……。
結構自信あったんだがなぁ……。

「何しに来たんだ?」
「偵察に決まってんだろうがぁ!お前らがどんな調子かしっかり確かめておこうと思ったんだ!!」
「まあオレに逆に聞かれるわけなんだがな」
「んだとぉ!?」

ずるっとカツラとニット帽をとって、背凭れの上から後ろを向いて怒鳴った。

「そっちはどっかと戦ったのか?」
「なんでオレがそんなこと答えなきゃならねぇんだぁ?」
「オレが知りたいからだぞ!」
「身勝手だなゔお゙ぉい!!」

驚いた顔でこちらを振り向くチームの仲間たちには目もくれず、リボーンは質問を続けた。

「お前らのチームとスカルのチームだけが、倒しても倒されてもねーからな。気になるぞ」
「オレも知りたいのなっ。スクアーロもこっち来て座れよ!!」
「断る」

楽しそうに誘う山本を一刀両断して、目を逸らす。
だが、逸らした先に跳ね馬がいて、そのまま目を泳がせて、結局リボーンに目線を戻した。

「まあ、どうせ明日知ることになるだろうしなぁ……。オレ達はスカルチームと戦った。だがぁ、古里炎真を殺すか腕時計を壊すかで揉めた結果、タイムオーバーした」
「間抜けだな」
「一人やられた、お前らのチームには言われたくねぇな」

スカルの呪解については伏せておく。
今回の戦いで呪いを解いたのはスカルだけのようだし、これは重要な情報になるだろうから。
つっても、古里炎真が喋っちまったら台無しなんだがな。

「というか、そっちこそヒバリを敵チームに取られてんじゃねーか。間抜けだなぁ」
「そっちこそ時計はあと2つ残ってんだろ?見付けられんのか?」
「うちは今いる奴らだけで十分足りてんだぁ!!」
「あ、そっかー。ヴァリアーって人望ないから人が集まらないんだな」
「……かっ捌く」
「ヒイィッ!!落ち着いてくださいー!!」

このチビくそムカつく!!
掴み上げようと伸ばした手が空振りし、逃げたリボーンを追いかけて更に身を乗り出したところで、リボーンに頭を踏まれた。
…………ムカつく!!

「表出やがれ垂れ眉!!」
「望むところだぞっ」
「勘弁してよもうー!!」
「落ち着けって二人とも!!」

沢田がリボーンを押さえようとして逆に蹴られている。
オレはというと、後ろから跳ね馬に羽交い締めにされて止められた。

「オレの邪魔してんじゃねーぞダメツナ」
「ヒデー!!」
「離せっ!」
「おてんばだな……ホント」

跳ね馬の声が耳の間近で聞こえてきて、ハッとした。
ち、近い……!
一度気付くと、耳にかかる吐息とか、服の向こうから伝わる体温とか、たまに触れる脚とか、全部が気になってきてしまう。
一瞬固まった体を無理矢理捩って、跳ね馬を押し退けるように脱出して、オレは荷物とレシートを持つと、レジに向かった。

「帰る!!」
「え?もうか?つか、折角オレらおんなじホテルなんだし一緒に帰ろーぜ?」
「敵と一緒に帰るわきゃねーだろ、へなちょこがぁ!!」
「ウザ騒がしかったな」
「リボーンが絡むからだろ?」

さっさと会計を済ませて店を出る。
早足に道を歩きながら、左胸に手を当てた。
……異様に、鼓動が早い。
裸見られたりしたせいで、意識してしまっているのだろうか。
ニット帽をより深く被ろうとして触れた耳が、いつもよりも熱かった。
心臓はまだ、いつもより早いリズムで動いている。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ