群青の鮫

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「先日は申し訳ありませんでした。今日はお詫びにパスタ詰め合わせを持ってきて……、」
「スクアーロちゃん!!待ってたのよ〜!お詫びなんて気にしないで良かったのに!!」
「いえ、ケジメですので」
「まあ、真面目なのねぇ。ツナにも見習ってほしいわ!!」
「ハハハ……」

日本に着いた翌日、オレは約束通り、沢田家を訪れていた。
出迎えてくれた奈々が、にこやかにオレの差し出した紙袋を受け取る。

「折角だし、お茶でもどうかしら?」
「いえ、申し訳ありませんが、今日は用事があるので……」

用事があるのは確かにそうなんだが、沢田家光と鉢合わせたくない。
すぐにでも立ち去りたかった。

「あらそうなの……、残念ねぇ」
「またの機会に、立ち寄らせて頂きます」
「……スクアーロちゃん、ちょっと堅いわ!」
「は?」
「この前みたいにもっと自然に話してくれて良いのよ?」
「いえ、でも奈々さんは……、」
「その『奈々さん』って言うのもダメ!呼び捨てで良いのよ?」
「オレが良くないです……!」

あくまで、あくまで!沢田奈々は、認めたくないが、オレの上司に当たる沢田家光の妻であって、そんな人に対して失礼なことは出来ない……この間しちまったけど!

「せっかく仲良くなったんだもの……もっと自然にお話したいの!!」
「……でも、」
「ダメ?」
「うっ……!」

そんな顔で見つめられたら断れない!!
ズルいだろその顔は!!

「スクアーロちゃんが嫌って言うなら私も諦めるけど……」
「い、嫌な訳じゃないっす!」
「じゃあお願い!」
「うぐっ……!」

そんなお願いなんて言われて手を握られたりしたら、どんな男でも落ちるだろ!
女だけど、オレ!
結局、しばらくの沈黙の後。

「な、奈々……?」
「そうそう!」
「なんか恥ずかしいぜ……」
「ふふ、私もちょっと恥ずかしいわ♪」

ご機嫌な彼女にぎこちなく笑い返した。
うーん、なんだかやっぱり、人妻を呼び捨てって悪いことしてる気分になるぜ……。

「スクアーロちゃんはこれからお仕事?」
「そんなとこだぁ」
「ふふ、頑張ってね!!」
「……Grazie」

頭を撫でられて、更に気恥ずかしさが募る。
沢田の奴、こんな良い母親持って羨ましい限りだな……。
名残惜しかったが、そろそろ行かなければならない。
1歩離れて、会釈をした。

「それじゃ、オレはこれで」
「また来てね、スクアーロちゃん!!」
「……また来る」

小さく手を振り返して、玄関から外に出た。
また、って、言ってしまった……。
今度休暇を取るとしたら、日本に来るかなぁ。
楽しみなような、ちょっとむず痒いような。
落ち着かない気持ちを抱えながら、ホテルに戻ったのだった。


 * * *


「じゃあ、報告を頼む」
「はい!予測通り、リボーンチームは沢田、山本、獄寺、笹川、跳ね馬が参加。雲雀並びにクローム髑髏の参加は確定していないようです。コロネロチームは、門外顧問、バジル、ターメリック、オレガノ、ラル・ミルチが参加。ユニチームは白蘭以外まだ日本に来てないようですが、イタリアの同士から桔梗、ザクロ、デイジー、トリカブト、ブルーベル、そしてジッリョネロのγ、太猿、野猿が集まっているとの報告を受けました。スカルチームには古里炎真が参加。他のシモンファミリーの参加は未定です。ヴェルデチームは六道骸、城島犬、柿本千種、M.M、フランが参加。風は今のところ誰とも接触しておらず、参加メンバーは不明です」
「わかった。お前はしばらく休んでろぉ」
「は、では失礼します!!」

報告を受け取り、部下を退室させた後、その報告書をマーモンに渡した。

「やっぱりフランを渡さなければ良かったぜぇ……」
「仕方ないよ、あの時はまだこの戦いがあることを知らなかったんだから」
「そりゃそうだがなぁ……」
「僕だって頭の悪いガキの面倒見るのはごめんだったもんね。むしろ助かったよ」
「そう言ってくれると助かるぜぇ。だが今回の戦いでは、ヴェルデチームはかなり厄介な敵になりそうだなぁ。ただでさえ厄介な術士が二人に、その力を最大限に引き出すことのできる科学者!初日は奴らとは接触しねえで、様子見した方が良さそうだなぁ」
「スカルチームの古里は厄介だけど、能力は割れてるし、今のところ一人きりだから狙い目かもね」
「確かにそうだな。あと気を付けるべきは、やはりリボーンチームか。チームワークはこの中では一番だろうし、報告書によれば、ユニチームと同盟を組んだんだろぉ?」
「どちらのチームも要注意、だね」

正々堂々となんて行く気はねぇ。
弱いところから潰していくし、策を弄して隙をついてやる。
バトルロワイヤルなんだから、手加減の必要はないはずだ。
マーモンとの話し合いでは、まずは古里を狙うことに決まったので、あの厄介な大地の炎とやらの攻略法を考える。
まあどんな力があっても使わなければ意味がないのだから、ベストは気付かれない内に倒すこと、なんだが。
それじゃあ、あの血の気の多い奴らは納得しねぇんだろうなぁ。

「古里のあの力、どうやったら封じられるんだろう」
「シモンと沢田たちの戦いを見る限り、古里はあの力を操るときに指や手の動きでコントロールしているように見える。あれだけの力だぁ。考えるだけでまともにコントロールできるとは考えにくい」
「ふぅん、成る程確かに」
「あの惑星やらブラックホールやらを使うとは考えにくいなぁ。沢田と同類の人間なら、周囲を巻き込むような戦い方は嫌うはずだ」
「ムム、意外と簡単に攻略できそうだね」

もちろん、他のチームとの戦いにおける作戦も考えておかねばなるまい。
少なくとも……。

「諜報部隊として、幻術を扱える奴を何人か呼んでおいた方がいいかもなぁ」
「諜報だけじゃなくて、部屋が壊れた時とかは誤魔化せるしね」
「あとは後方支援に、晴れの炎を使える奴らもだなぁ」

イタリアに残っている奴らを、何人か呼ばなければならない。
ぽつぽつと会話を交わしながら、着々と準備は進められた。
そして、待望のモノが届く。

「ボス、届いたわよん♪マーモンの全財産を注ぎ込んで彫金師のタルボじいさんに頼んで作ってもらった、新生(ニュー)ヴァリアーリング♡」
「……」
「ムム、なんか2つ多くない?」
「ああ、そりゃあオレのだぁ」
「そういえばスクアーロは3属性の炎が扱えたのだったな」
「スクアーロずっりーのー!」
「こればっかりは生まれつきの体質だものねぇ」
「ム、説明書ついてるよ」

新たに手に入ったリングをそれぞれが手に取り、説明書を読んでその性能を確認する。
代理戦争3日前。
こうして夜は更けていった。
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