群青の鮫

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ボンゴレ10代目の命を狙う者は、数多くいる。
それは、組織ばかりの話ではない。
フリーの殺し屋が、ボンゴレという名に釣られて沢田綱吉の命を狙ってくることもある。

「ヒッ……!ヒィッ!!何なんだよアイツ……!」

並盛町の路地裏を、一人の男が逃げていた。
ボンゴレ10代目を殺し、己の名を上げようと、並盛に来たまではよかった。
男には10代目殺害を決行できる程に、自分の実力に自信があったし、最強の赤ん坊が傍についてると言えど、彼が戦いには手を出さないことも知っていた。
成功すると、思っていた。
だが、10代目の姿を見るよりも早く、彼を襲った者がいた。
迷うことなく首を狙ってくる攻撃を、ギリギリのところで避け、逃げ出したことは、流石、10代目を狙いに来るだけはある。
逃げる男は、背後から迫る殺気に気付き、少しでも逃げ切る確率をあげるために、旧知の仲間へと連絡して、助けを呼ぼうとする。
だが携帯を取りだし、半分まで番号を押したときだった。

「っぎゃあ!!?」

チュインという音、撃ち抜かれた携帯。
いる、すぐ近くに!
奴はオレを、オレの命を間近で狙っている……!!

「どこだ、どこにいる……!?」

己の愛用の拳銃を構えて、ぐるぐると周囲を見回す。
誰の姿も見えない、だが殺気だけは確かに感じる。
ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。
どれだけ見回しても、誰も姿を見せない。
路地で生ゴミを漁っていた黒猫が、じっとりと男を見つめている。

「くそっ!!何見てやがる!?」

猫に向けて数発撃つ。
いつもなら百発百中のはずの拳銃も、今は当たらず、猫はけたたましく鳴いて逃げていく。

「くそっ!くそ……!!」
「……動物に当たるのは良くない」
「っ!?」

振り向いた先には誰もいない。
だが、背中に誰かが当たった感触、首には、細い何かが食い込む感触。
そして、男の脳裏に、一つの名前が思い浮かぶ。

「ガット、ネロ……」
「さらば」

男の視界はブラックアウトする。
ごとりと、自分の首が落ちる音が、聞こえたような、気が、した…………。

「……」

ガットネロ……、またの名をアクーラ、本当の名はスペルビ・スクアーロ。
彼……いや、彼女は、男の首を落としたワイヤーをしまい、指にはめた赤いリングに炎を灯す。
赤いリング……、嵐の炎を灯したリングを死体の上に翳すと、その炎が死体を覆った。
嵐の炎の性質は分解。
炎に包まれた死体は分解され、跡形も残さずに消えた。

「にゃーあ」
「……」

先程撃たれた猫だろうか。
黒猫が、するりと彼女の脚に擦り寄る。
屈んで、猫の喉を撫でる彼女の表情は窺えないが、その雰囲気は少し柔らかかった。
しばらく猫を撫でた後、おもむろに立ち上がり、路地の外へと歩き出した。
すぐそこに停めてあったバイクに跨がり、彼女は夜の闇の中に姿を消していった。

「なーう」

後に残った黒猫が、不気味に一声鳴いた。
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