群青の鮫

□26
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日本、とある空港――

「着いたな、日本に」

恐らく個人のジェット機だろう。
シンプルながらも気品を感じさせるデザインの機体から、数人の男たちが降りてくる。
どの男も、屈強な体を上品なスーツに包み、指にはそれぞれ違った色の、揃いの指輪をはめている。

「綱吉君に会うのが楽しみだよ」

中でも優しそうな微笑みを浮かべた老齢の男が言う。
それに対して、左腕に義手をつけた男が、うんざりしたように、だがその口元に微かに笑みを浮かべながら返した。

「イタリアを発ってからそればかり言ってるぜ9代目」
「それだけ楽しみだってことさ、コヨーテ」

談笑しながら空港を歩いていく彼らを、もう一人、飛行機から降りてきた人影が追い掛ける。
真っ黒な髪を、前髪だけ長く伸ばしているため、鼻より上はよく見えない。
口元も、深紅のマフラーが覆っているため、顔が見える部分は極僅かだった。
服装はマフラー以外黒一色。
だぼっとした恐らく一回り大きなサイズのものを着ているようだ。
音も立てずに追い付き、彼らの背後にそっと控えた。
その存在に気付いた老齢の男……9代目ボンゴレが声を掛ける。

「やあ、忙しいところ付き合わせてしまってすまないね」
「……」

黒ずくめの人物は、無言のまま首を横に振った。
その様子を見た男達の内の一人、前髪にメッシュを入れた男が声を荒げた。

「おいガキ……。9代目が声かけてくれてんだ。なんとか喋ったらどうなんだ!?」
「……」
「このっ!!」
「待ちなさい、ガナッシュ」
「……9代目」
「アクーラ、すまないね。報告は確りと受け取った。任務に戻っておくれ」
「……」

ガナッシュと呼ばれた男の言葉に、無反応を貫いたアクーラは、9代目の言葉に縦に首を振った。
そしてすぐに、その姿は掻き消えた。

「ガナッシュ……」
「あのガキ、オレは嫌いです」
「そう言わないでおくれ」
「……はい」

全員の顔が、曇る。
9代目以外の者たちは、アクーラのことを快く思ってはいないらしい。
彼らにとってアクーラは、ボンゴレに付き纏う闇の象徴だった。
それ以上に、常に彼らに向けて責めるような視線を送ってくるアクーラに、気持ち良く接することはできなかった。
彼は、ヴァリアーが起こしたクーデターの、その代償としてボンゴレに従っている。
正体はわからない。
それを知るのは、9代目と、スペルビ・スクアーロだけだった。

「……9代目、綱吉君にはいつ会うんですか?」
「そうじゃな……。明日でどうかな?」
「ボス、明日は予定が埋まってるだろう。会うのは明後日だな」
「どうしても無理かね……?」
「さっさと会場を準備しなけりゃ、継承式そのものが開けねぇ。諦めるんだな」

アクーラが去り、少しずついつもの空気に戻って行く。
彼らは揃って空港を出ると、待っていたリムジンに乗り込み、並盛町に向けて走っていった。
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