群青の鮫

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早朝、陽光がまだ人の少ない並盛町を眩く照らし出している。
その中を、しっかりと武装した人間達が駆け抜けていく。

「なあ、本当に良かったのかスクアーロ?」
「何がだ」

先頭を走る山本が、唐突にスクアーロに問い掛けた。
腹に傷を負ったディーノの体を支えて歩くスクアーロは、山本の方に視線を向けもせずにぶっきらぼうに答えた。
顔には出していないが、もしかするとスクアーロも傷が痛むのかもしれない。
その様子を見て、傷を案じつつも、山本は質問を続ける。

「あのデイジーって奴、袋から出しちゃってさ」
「リングも取り上げた、匣も摘出したぁ。もう抵抗はできねーだろぉ」
「でも……流石にスパナと二人っきりってのは……」

山本が後ろを振り返ると、非戦闘員であるビアンキやジャンニーニ、更にヒバリやディーノを追って、草壁にロマーリオがついてきていた。

「仕方ないでしょ。あの場には京子やハルもいるのよ。あの子達の面倒は私が見るわ」
「白蘭との決着の場を見逃す手はありません!」

昨日夕飯を食べ終わった後、ビアンキやジャンニーニが、自分達も着いていきたいと申し出た。
草壁やロマーリオは、自分達のボスが出る以上、着いていかないという選択肢は論外のようであったし、結局はモスカ作りに夢中のスパナ以外、全員が決戦の場へと行くことになってしまったのだった。

「デイジーはしっかり縛ってある。モスカもあるし、大丈夫だろう」
「そうだぜ山本!それに、スパナだってマフィアの端くれ……、そう簡単にやられたりはしねーさ」

スクアーロとディーノ、二人にそう説得されて渋々頷いた山本は、気持ちを切り替え、キッと前を見据える。
日は登った。
遠くに見える森からは、既に爆発音が聞こえて来ている。

「行くぜ、みんな!」

いざ、決着の場へ。
山本の掛け声を受け、全員が走り出した。
朝焼けの空を、1羽の鳥が駆け抜けていく。
終わりの時は、刻一刻と近付いてきていた。
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