群青の鮫

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嵐狼の顎が耳の数p横を通りすぎ、そのまま後ろにあった柱に噛みついた。
嵐狼の口の中で、柱の一角がボロボロと崩れる。
嵐の分解の性質か。

「ちっ!ちょこまかとうぜーヤローだなバーロー!!」
「ギャーギャーよく吠えるヤローだなゔお゙ぉい!!」
「んだとっ!?」

カッとなって殴りかかってきたザクロの拳を紙一重で避け、ダガーナイフで反撃する。
つきだしたナイフの刃に嵐の炎を纏わせ、長さをかさ増ししていたが、相手も嵐属性。
炎の効果は薄い上に、ナイフ本体も避けられてしまった。

「雨の炎だけじゃなく、嵐の炎も使うってのか?めんどくせーなバーロー」
「きっちり避けといて、言うじゃねーかぁ」

あの様子では、オレの暴風鷹-ファルコ・ウラガーノ-も使えそうにはない。
大量のスローイングナイフを投げる。

「どこ狙ってやがるバーロー!!」
「狙っちゃいねぇぞぉ!!」

ナイフに繋いでおいたワイヤーをピンと張る。
手を降り下ろし、ワイヤーで空間を裂く。
ザクロの肌に切れ目が入ったのが見えたが……。

「この程度で勝てるとでも思ったのかぁ!?」

ぶつんと切れてしまった。
ワイヤーを嵐の炎で覆いさらに上から雨の炎で覆っていたのだが、それでも足りないというのか……!

「いい加減、オレにゃ勝てねーってわかったんじゃねーのか?」
「ハッ……!」

得意気な顔で言ったザクロを鼻で笑う。
勝つつもりなんざハナからねえ。
ただ充分な時間足止めが出来ればそれで良い。

「沢田たちはそろそろアジトを抜けただろうぜぇ」
「あ゙あん?」
「そろそろオレも、お役御免ってわけだぁ」

キョトンとした顔で、訳がわからない様子のザクロから距離をとって、雨の炎をアジト全体に満たす。
その炎をきっかけにして、アジトに仕掛けたモノが作動し、揺れ始める。

「なんだこりゃあ!!」
「雨の炎のバリア……数日前から時間かけて用意したものだぁ!!例え真6弔花と言えども、破るのには時間がかかるだろうぜぇ」
「なにぃっ!!」

今頃外では雨の炎がドーム状のバリアとなってアジトを覆っていることだろう。
無線のスイッチを入れる。

「ゔお゙ぉい!!てめーら、無事に外まで逃げ切れただろうなぁ!?」
『スクアーロ!?今アジトから雨の炎が……!』
「この仕掛けで足止めできる時間はせいぜい5分程度だ。その間に身を隠せぇ。いいかぁ、決してバラけるな。わかったら早く行けぇ!!」
『わ、わかったけど!スクアーロは大丈夫なの!?さっきから地鳴りが凄いけど……』

そこまで聞いたとき、殺気を感じてその場から飛び退く。
轟音を立ててオレの立っていた床が抜けた。
ザクロの渾身の拳が炸裂したのだ。

「てめーバーロー!!オレを罠に嵌めたのか!?」
「ちっ、沢田ぁ!!話してる余裕はねぇ!!さっさと逃げろ、クソがぁ!!」

剣を構え、仕込み火薬で相手の足元を攻撃する。

「こんな花火が効くかよ!!」
「ならこっちならどうだぁ!?」

踏み込み、下段から上段へと切り上げる。

「てめーがそれを使うのを待ってたぜぇ!!」

ザクロの口が凶悪に歪むのが見えたのと、オレの脳天めがけて嵐の炎が飛んできたのが見えたのが同時だった。

―― スカッ

「……あ゙あっ!?」
「こっちだぁ!!」

霧の炎による幻覚で、オレの位置をホンの少しだけずらして錯覚させていたのだ。
だからザクロの攻撃はオレの体をすり抜け、バランスを崩した。
その背後に立ち、剣を振りかざす。

「てめっ!!」

剣を掴もうとしたのか、振り返ったザクロに、今度はオレが悪どく笑う。

「下だぁ!!」
「なにっ!?」

剣を持っていない右手にあるソレを見て、ザクロが目を見開いた。
オレはソレを……閃光弾を炸裂させる。
ぎゅっと目を閉じて地を蹴った。

カッ――……!

眩い光がザクロの目を焼き、オレはまんまとその場を逃げおおせた。
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