群青の鮫

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「スクアーロ、オレたち着替えて来るから、ちょっと待っててな!!」
「早くしろよぉ」

彼らは正装から着替えてくるらしく、オレは終わるのを廊下で待っていた。
腕を組み、神経を研ぎ澄ます。
ふわりと、リングに炎を灯せば、各所に設置した装置が反応し、薄い雨の炎がアジト全体を覆った。
簡単に言うならば、これはセンサーである。
何かがアジト内に侵入すればわかる……が、相手の具体的な情報はわからねーんだよなぁ。
まあ、今押し入ってくるとしたら真6弔花だろうから、何か感じたら兎に角逃げの一手だな。
戦えない者たちを抱えて、それもこんな狭いところで相手にするのは得策じゃないしなぁ。
……しかし、それにしても。

『あ、あの隊長……、ルッスーリア様が残党狩りで忙しいので日本に来る余裕がないと……』
「ザンザスに伝えるように言えぇ。ミルフィオーレとの決着がようやく着くんだぁ!今来ねぇでいつ来るっつーんだぁ!?」
『は、はいぃ!!』

くそが、空気読めよルッスーリア。
残党狩りなんざ下の奴らに任しておけばいいじゃねーか。
イライラを溜め息に込めて吐き出すと、少し気持ちが落ち着いた。
オレはまず、敵の察知に集中せねば。
気合いを引き締め直した、その瞬間、持っていた装置から警報音が響く。
続けて炎のセンサーが何かを察知。
同時に、耳障りな警報音とアジトを揺るがす轟音が響き渡った。
始めの警報音は偵察をしていたボックスからのモノ。
何かが……いや、真6弔花がアジトに侵入したのだ。

「ツナ君!!」
「何なの?」
「わからないよ!!」

オレはユニたちの前に立ちはだかり、剣を構えた。
早すぎるだろう……。
アジトで襲われたのはまだ幸いだったと言えるが。
ここはオレが足止めしている間に、できるだけ遠くまで逃げてもらうしかないか。

「スクアーロ、これは!!」
「敵さんに決まってんだろぉ!!」

早く逃げろと言うより早く、オレの言葉を遮って、ザクロとかいう敵が壁を突き破り現れた。

「バーロー、みっけたぜユニ様」

途端、見えないプレッシャーを全身に感じて、反射的に雨の炎を展開させた。
雨の炎で出来たバリアーに当たるのは、とんでもない量の見えない嵐の炎……しかもこの程度は朝飯前って感じかぁ?
真6弔花……実力の、底が見えねぇ。

「転送システムがぶっこわれて外へ吹っとばされ、無線もレーダーも粉々になった時はどうなるかと思ったが……。ふあ〜あ、バーロ〜。なんとかなるもんだな」

欠伸までして、なめられたもんだな。
オレ以外誰も、嵐の炎に気付いていないんだから、なめられても、当然っちゃ当然か。
リングに炎を灯し、臨戦態勢になっている山本と獄寺を腕を上げることで宥める。

「てめーらはユニをつれてさっさとここから逃げろ!!」
「でもスクアーロ一人でなんて……!?」
「まだわかんねーのかぁ!!オレたちはすでに、攻撃されてんだぞぉ!!」

オレの指摘で、彼らはようやく嵐の炎に気付いたらしい。
これ以上、こいつら全員を庇うことで無意味に炎を垂れ流すのも嫌なんだ。
わかったらさっさと逃げやがれ。

「オレも残るぜスクアーロ!」
「バカがぁ!!」

間の抜けたことを抜かした山本をぼかりと殴る。

「てめーの刀はこの狭いところじゃ戦い難いだろぉ。他の奴も同じくだぁ。獄寺や笹川なら良いかも知れねぇが、獄寺は中遠距離の補助系、笹川は考えなしに敵に突っ込むバカだ。オレが足止めしているうちにできるだけ遠くに逃げろドカスがぁ!!」
「スクアーロはどうすんだよ!?」
「後から追っていく」

その言葉に、しぶしぶ納得した山本が引き下がり、全員が逃げるために動き始める。
動きを察知し、嵐の炎を膨れ上がらせたザクロに、匣兵器……アーロを開匣することで防いだ。

「ちっ、バーロー。いちいちじゃまするヤローだぜ」

背後ではほとんどが逃げて、あとは沢田とユニが残るだけとなっていた。

「スクアーロさん!!ありがとう!!」
「……そういうことは全部終わった後に言え」

沢田に急かされて、ユニが走り去っていく。
3分もあればアジトからは抜けるだろう。
それまでが勝負。

「わかってねーなーバーロー。お前はオレにゃあ勝てねーんだぜ」
「ゔぉ゙おい、変わった遺言じゃねえか」

マグマのような濃密度の炎が、ザクロかろ噴出した。
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