群青の鮫

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「スクアーロ隊長ー、センパイがいじめますー。ミーはブロークンハートですー」
「お前が傷心とかあり得なくね?」
「ったく、傷心でもそうでなくても、一々喧嘩してんじゃねぇぞ」

珍しく擦り寄ってきたフランの蛙頭を撫でてやる。
余計に近付いてきて若干うざい。

「珍しいこともあるなぁ。明日は雨かぁ?」
「ミーだって傷付くんですー。それに今のうちに唾つけとかないとー、ヴァリアー唯一の常識人がアホ馬に取られちゃうかも知れないじゃないですかー」
「あらん?もしかして、スクちゃんまた跳ね馬に迫られたの?」
「……なんでてめーが知ってやがるフラン」
「盗み聞きしましたー」
「あれお前だったのか!!」

どうやらこの間の影は、ベルではなくフランだったらしい。
つかルッスーリア、またとか言うな。

「スクちゃんも女の子なんだから、いい加減跳ね馬ちゃんと身を固めちゃったらどうかしら〜?」
「しし、そりゃダメだぜ。スク隊長いなくなったら誰がボスの世話すんだよ」
「それはもちろん、ア・タ・シ♡」
「何を言っている!!オレがボスの役に立つ!スクアーロなどどこへなりとも行ってしまえば良いのだ!!」
「困りますー。駄王子にいじめられてブロークンハートなミーを慰める人がいなくなるじゃないですかー」
「お前らオレをなんだと思って……」
「ボスのママン?」
「邪魔物だ!!」
「ヴァリアーの母、ですかねー」
「同士かしら?♡」
「ルッスーリアは殺す」
「いじめちゃいやーん……グベホッ!!」

野太い悲鳴を上げて飛んでいったルッスーリアをスルーして、部下から各地の戦況報告を受ける。

「――……となっております。日本では、メローネ基地の壊滅には成功した模様ですが、重傷者が複数名。幸いなことに死者はいない模様です。ミルフィオーレAランク隊員だった、入江正一、スパナがこちらへ寝返り、技術力は向上。それから重傷者は、門外顧問機関のラル・ミルチ、あとの者は自力で歩けはするようですが、獄寺隼人や、山本武が……」
「山本だとぉ?」
「ひっ!」

後ろから押さえてください隊長!!やらまだ新人なんです!などと声が聞こえるがそれどころではない。

「山本武が重傷だと!?」
「そ、それが!幻騎士との戦いに敗れたらしくっ!!」
「負けただとぉ!!?」

何やってやがるあのカスガキがっ!!
あの程度のカスに負けたっ!?
剣士としてオレに優っておいて負けただと!?

「許さねぇ……」

目の前の新人がドサリと倒れたがそんなことは些事!

「ああっ!カッツォ!!」
「新人が泡吹いて気絶した!!担架持ってこい!!」
「カッツォ!!死ぬにはまだ早いぞ!」

ズカズカとザンザスの元へ進み、願い出た。

「ゔお゙ぉい!ザンザス!!オレは日本に経つ!!いいなぁ!」
「勝手にしろ」
「そんな何言ってんだしスクアーロ!ボスの暴力は誰がうけんだよ!」
「種馬に攻略されちゃいますよー。ミーの癒しがー」
「るせぇぞ!てめーらは大人しく残党狩りでもしてろぉ!」
「「えーっ!!」」

元々世界中を飛び回っている身だから、荷物整理には然程時間は掛からない。
問題は残党狩りなんかに関する指示だが。

「とりあえず、今日はここにテント張って野宿だぁ」
「えー!王子テントとかやだし!ベッドで寝てー!!」
「カスザメ……」
「我が儘言ってねーで準備しろぉ!」

今日は体を休め、明日必要な指示だけ与えて日本に経つか。
移動中にもミルフィオーレの残党が来るだろうことを考えると頭が重い。
駄々をこねる奴らを、幹部用の豪華なテントに放り込み、オレは一人、明日の準備に鞄を広げた。
山本武……、覚悟しておけよぉ。




「へっきしっ!」
「大丈夫、山本?」
「んー、どっかで誰かが噂してんだろ!」
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