群青の鮫

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「何っ!?10年前の沢田達が日本に現れただとぉ!!どういうことだ!!極限わからん!!」
「だーからー!あの牛ガキの持ってた10年バズーカとか言うやつで10年前のクソガキたちがこの時代に来たんだっつの」
「つ、つまり……沢田たちが甦ったということか!?」
「ちげーっ!!!」

とある筋により伝わった情報で、ヴァリアーアジトは俄に騒然としていた。
いや、具体的には少し違う。
10代目ファミリー、晴れの守護者笹川了平と、ヴァリアー嵐の幹部、ベルフェゴール、この二人のやり取りだけが、微かにざわつくアジトの中に、騒々しく響いていた。

「沢田は死んだだろーがっ!」
「つまり……ゾンビか!?」
「ちっげぇぇええっ!!!」

片方はトンチンカンなことを言い、もう片方はイラつきのあまりに叫んでいる。
かれこれ30分は同じようなやり取りを繰り返しているのだから、イラつくのも当たり前だろうが……。
むしろ気の短いベルフェゴールにしてはよく耐えている方である。

「10年前からアイツらが来たんだよ!!」
「むぅ、つまり……、つまり……!わからんぞ!!」
「っんでだしっ!!!」
「……何やってんだぁお前らぁ」

関わり合いになりたい者などいるはずもなく、皆が皆二人を避けて通っていく中、呆れたような様子で声を掛けた者がいた。

「スクアーロこいつマジでバカっ!!王子なのに手に負えないとかどういうことなんだよ!?」
「王子なのにって理屈はわからねぇがぁ、苦戦してることは100メートル先からでも理解できたぞぉ」
「スクアーロではないか!!今こいつに事態を説明してもらっていたのだが極限にわからん!」
「日本のボンゴレアジトに、中学2年の姿の沢田達が現れたそうだぁ」
「つまりボンゴレのアジトに沢田たちがいるのだな!?」
「お前の妹もいるらしいぜぇ」
「なっ!京子もか!?ならばすぐに戻らねば……!」

何故かスクアーロが話すとすんなりと話が進む。
ヴァリアーでは密かにこれをボンゴレ七不思議と呼んでいるそうだが、あくまでこれは噂である。

「勿論そのつもりだぁ。だがその前に、日本のやつらに伝えてもらいてぇことがある!」
「伝言か?オレは何と伝えればよいのだ?」
「先ほどボンゴレ、及び主要同盟ファミリーのトップ間で話し合いが執り行われ、そこで1つの計画が立てられたぁ。ズバリ、日本にいる過去の沢田達の力……ボンゴレリングの力を借りてミルフィオーレを打倒する!!その為に沢田達にはこう伝えろぉ!!『6日後にミルフィオーレ日本支部の主要施設を破壊しろ』となぁ!」
「ミルフィオーレに殴り込みをかけるのか!?中学生の沢田がそれを良しと言うとは思えん!」
「それでもやらなきゃならねぇ。この作戦は奴らの……いや、ボンゴレリングの力に頼りきった不確実なもんだぁ。その上襲撃を取り止めたりしたら、ミルフィオーレは2度と倒せなくなるぞぉ……」
「……ならば沢田にその事も含め全てを伝える!!その上で奴に決めさせればよいのだ!!日本のアジトの主は、ボンゴレ10代目たる沢田なのだからな!」
「チッ……、まぁ良い。とにかくてめぇは、忘れずにミルフィオーレ襲撃のことを伝えろぉ。決行するかしないかはすぐに決めてこちらに伝えるんだ」
「む、了解した、が、長いぞ……極限」
「忘れねぇよぉにメモってけぇ!」

笹川了平にメモ用紙と筆記具を投げ渡し、書き取らせながら、スクアーロは先ほどの会議を思い出す。
10年前のガキどもに頼りきった杜撰な計画。
鬼気迫る顔で交わされる、無駄な責任の押し付け合い。
あの強かったボンゴレは、ここ数年で地の底まで堕ちた。
そして9代目が行方知れずになったことで、大マフィアボンゴレファミリーは崩壊へ向けて、着実に進み始めている。
形の良い眉を吊り上げ、三白眼を一際鋭くする様子に、周りの者たちは更に遠ざかった。

「うむ!書けたぞ!!では早速出発を……、」
「待てぇ。日本までウチの隊員に案内させるぜぇ。下手に動いてミルフィオーレに捕まると厄介だからなぁ」
「極限助かる!」
「それと、アジトに行く前に黒曜ランドに寄っていけぇ」
「何故だ?」
「そこにもてめぇらの仲間がいるはずだぁ!!」
「黒曜……クローム髑髏か!!まさか骸から連絡が……?」
「連絡っつうよりかは指示だな。それもかなり一方的な。黒曜のクローム髑髏を救出しろとのことだった」
「そうか……」
「わかったらさっさと行けぇ」
「うむ!極限感謝だぞスクアーロ!本国は日本とは比べ物にならないほどに危険だからな!!お前たちも気を付けるのだぞ!!」
「あーはいはい、わかったから早く行けって。五月蝿いのとかスクアーロだけで充分だし」
「うむ、ではまたな!」

まるで嵐のごとく、騒がしく去っていった笹川了平に、ベルフェゴールはべっと舌を出して見送っている。
その頭を小突いたスクアーロは、カツカツと靴音を立てながら足早に歩き去っていく。
余程忙しいのだろうか。
その背中からは、いつもは見られない疲れが滲み出ているようにも感じられた。

「しし、やぁーっといなくなって超スッキリ。王子暇だし、またあのカエルで遊ぶか」

ベルフェゴールはスッキリした様子でナイフを弄びながら踵を返した。
ヴァリアーのアジトは微かにざわめき立っている。
決して騒がしくはないが、確かに大きく、事態は動き始めていた。
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