群青の鮫

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「ツナ、おまえに伝言がある」
「ディーノさん?伝言って……」
「『申し訳なかった』、ってよ」
「え?え?何が?ってか誰からですか!?」
「あー……スクアーロから、だ」
「えぇっ!!?」

リング争奪戦が終わった翌日、山本の家でパーティーを開いた。
表向きにはランボの退院祝い。
もちろん、リング争奪戦での祝勝会も兼ねて。
そこで伝えられたのが、スクアーロからの驚きの伝言だった。

「申し訳なかったって……、なんで……!?」
「『巻き込んで悪かった。』って。XANXUSはそんなこと思っちゃいねぇだろうけど、スクアーロはもともとお前らを殺す気はなかったみてぇだ」

殺す気はなかった、なんて、簡単に信じられることじゃなかった。
だってそうだろ?
スクアーロが初めて並盛に訪れた時から、何度も何度も死ぬ思いをした。
今回は色んな人達に助けられて、何とか勝つことができたけど、仲間がピンチに陥る度に、心臓が止まるかと思った。
でも……、思い出せば、スクアーロは殺気をばらまくヴァリアーたちの中で、一人異質だった。
商店街で襲われたときも、簡単に殺せたはずのオレ達を殺さなかったし、雨戦の時なんて山本を助けようとした。
何より、最後の時、オレ達を殺すべくして潜んでいたはずの、ヴァリアー隊員を退けさせたのは、他でもないスクアーロだった。

「スクアーロは、どうしていますか……?」
「だいぶ回復してきてる。よく脱走してXANXUSの部屋に見舞いに行ってるくらいだぜ」
「あ、ははは……」

それは確かに、かなり元気な様子である。

「XANXUSは……」
「……我が儘放題だな」
「……へ、へぇー」
「そもそも会話が成立しねぇな。まともに会話できるのはスクアーロくらいだ。もう何人もの部下がXANXUSの投げた食器の餌食になってる……」

ディーノさんの目が虚ろだ。
そんなにやりたい放題なのかXANXUS……。

「スクアーロとはちゃんと会話するんですね。なんか意外……?」
「別に他のやつと変わらねぇぜ?」
「へ?」
「スクアーロが『おい』の一言でXANXUSのしたいことをすぐに理解出来るだけだ」
「熟年夫婦っ!?」

聞けば、『酒』の一言だけでどの酒が飲みたいかも理解してしまうらしい。
何者なのスクアーロって!!

「だからなかなかスクアーロに休んでもらえなくてよー。まー回復はしてるから大丈夫だと思うんだけどな……。やっぱりちゃんと休んで欲しいよなー」
「なんか、凄いですねスクアーロって……。スーパーマンみたい」
「スーパーマンってよりウーマ……、あ!」
「え?」

馬?
なんで馬?
慌てて何でもないと言ったディーノさんに思わず疑いの目を向けてしまう。
また何か隠してるんじゃないか、って、リング争奪戦も終わったのに隠すこともないよね。

「そ、それよりよ!昨日スクアーロと少し話したんだ」
「え、大空のリング争奪戦の時ですか?」
「終わったすぐあとだな。で、そんときに言われたんだよ。これでおまえらは裏社会に足を突っ込んじまった、って感じのこと」
「っていやいや!オレ別にボンゴレ10代目になる気とかないですからね!?」

戦いには勝ったし、XANXUSを10代目にはしない。
でもだからってオレがボンゴレを継ぐなんて絶対に無理!!
オレなんてダメダメだし、XANXUS達みたいに……ひ、ヒトゴロシ、とか、できないし……。

「スクアーロはそんとき、血に恵まれてるやつにはわからないって言ってたよ」
「何が、ですか?」
「XANXUSがどんな境遇に立たされていたか。正直、言われて衝撃を受けたぜ。9代目にその気はなくても、結果XANXUSは何年もの間本物の10代目候補から敵の目を反らすための囮にされてたことになんだからな……」
「囮……?」
「9代目の実子で10代目の再有力候補……。他の候補者よりも敵の数は多かっただろうな。でも、それは全部無駄だったんだ」

ただ、血が繋がってない。
それだけで今までの努力も生活も、水の泡となってしまう。

「それでも、9代目はXANXUSを大切に思ってたと、オレは思います」
「……そうだな」
「大切にしすぎて、きっと上手く伝えられなかった。XANXUSも、凄く怒ってたし、自己チューなこと言ってたけど、9代目の想いを期待してたからこそ、あんなことしてしまったんじゃないかな……って」
「……ツナ」
「すれ違っちゃっただけだと思うんです。だから、きっとまだ間に合う」
「間に合う?」
「オレ、今からでも、仲直りできるんじゃないかなって思って……。スクアーロもきっと二人のすれ違いに気付いてた。だから、XANXUSの怒りを……想いを知ってほしくて、気付いてほしくて、この戦いを起こしたんじゃ、ないかな……」
「……すげぇな」
「へ?」
「なぁツナ、やっぱオレ、おまえに10代目継いでほしいと思うぜ」
「ええっ!!」
「おまえなら、こんな悲しい戦い、なくせるんじゃねーかと思える!!」
「んなーっ!?無理ですって!!オレ、ただの中学生なんですよ!?」
「アッハハハハ!!」
「なに笑ってるんですか!!」

超巨大マフィアのボスなんて絶対にあり得ないって!
確かにちょっと喧嘩は強くなったかもしれないけど!
でも勉強も運動もダメなダメツナなんだぞ?
自分で言ってて悲しくなるけどとにかく無理なのだ。
考えただけでも身が縮むよ!!
ていうか、なんでなりたい人はなれなくて、なりたくないオレがならなきゃならないのー!?
突然燃え上がったり、着けただけで血を吐いたり……本当に何なんだよ、このリング……!
泣き顔のオレを笑うディーノさんの声が、竹寿司の店内に明るく響き渡っていた。
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