企画

□ユハレイン様(海を越え)
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10年後のあの世界に行ったときぶり、オレは久々にランボの10年バズーカに被弾した。

「こ、ここどこなのーっ!?」

オレの叫びに答える人間はいない。
代わりに答えてくれたのは、人間とは掛け離れた姿の化け物達だった。

「げへへ、生き肝寄越せ〜!」
「どこまでいっても逃げ切れないぜ兎ちゃぁぁあん」
「ひぃいいい!!誰か助けてーーっ!」

虐めからの逃走、リボーンのしごき、ついでに数々の戦いのお陰で鍛えられた逃げ足に、ここまで感謝したことはない。
というかここ、10年後の世界じゃないの!?
何で匣アニマルでもないこんな化け物がいるんだよ!

「がぶぁっ!?」
「あ、相棒どうし……ぶぎゅあ‼」
「ひいー!またなんか出たー‼」

突然、追い掛けてきていた化け物達の姿が消えた。
思わず振り返った綱吉の目の前には、完膚なきまでに潰され、消滅しようとしていく化け物の姿と、そいつらを消滅させたらしき人影が見えた。

「お"い、真夜中にこんなところを彷徨いてんじゃねぇ。夜は出歩くなって警告を知らねぇの……か……?」
「す、すすすすすみません‼オレ何にも知らなくてー!」
「……さわ、だ?」
「と言うか突然ここに連れてこられたって言うか飛ばされたって言うか……て、今なんて言ったんですか?すみません聞いてなくて!」
「……いや、聞こえなかったなら良い。後始末するから、そこで目ぇつぶって待ってろ」
「は、はい!」

目の前の人は全身を黒い服で固めて、頭には厳ついヘルメットを被っている。
手に持ってるのは、剣?
どう見ても不審者かつ犯罪者な風体だけど、少なくとも今、自分を助けてくれた恩人だ。
例え背中側から『ずしゃっ、ごちゃっ』とか『カチッザクッ』とか『シュボッ、ボウ……』なんて妖しげな音が聞こえたとしても、あの人は恩人、あの人は恩人、あの人は恩人、あの人は恩人!

「……終わった。目を開けていいよ」
「?は、はい」

少し言葉遣いに違和感を抱いた。
でも気にすることはないか、と思って目を開く。
あの化け物達は影も形もなくなって、そこには怪しい人がぽつねんと立ち尽くしているだけだ。

「君の家は?どこから来たんだ?」
「え、えーと……」

やっぱりしゃべり方、さっきと違う。
ってそれより、どうやって10年バズーカの事を説明しよう!?

「えーと……うーんと……」
「言いたくないなら言わなくても良いけど、家に帰れるの?」
「か、帰れる……はずだったんだけど……」

5分間はとうに過ぎてる。
そう言えばランボのやつ、撃つ前にバズーカを壁にぶつけてたっけ。
……これってもしかして、オレ戻れないんじゃない!?

「ど、どうしよう〜!?」
「……お金は?」
「な、ないです……」

だって家の中で被弾したんだもの、お金なんてない。

「……じゃあお金あげるから、今日はネカフェでもいって朝まで時間潰してた方がいい。妖怪はまだまだ出続けるだろうし」
「……妖怪、って?」
「さっきみたいな化け物。生きた人の心臓を狙ってる」
「何それ怖いー‼」

怖いって言うかグロテスク!
いつの間に日本はそんなファンタジーで悪趣味な世界になっちゃってたわけ!?

「き、君は!?どうするの?」
「……オレはまだここら辺うろうろしてる。君みたいに襲われてる奴がいるかもしれないし」
「そ、そんな、一人で!?危ないよ!」
「別に、こんなのは慣れてるから」
「それでもダメ!……オ、オレも手伝う、から‼一人で戦うなんて危険なこと、絶対ダメ!」
「……」

ヘルメットで表情がまるで見えないけれど、彼は黙って……困ってしまっているようだった。
それでも、譲りたくない。
一人で戦わせるのは駄目だと、ボンゴレの血が警告していた。
一人にしたら、この人はきっと自分が壊れるまで戦い続けるんじゃないだろうか。
体の横にぶらりと垂らされた手を掴んで、強く握りしめる。

「オレ、いつまでここにいられるかわかんないけど、いられる間は君と一緒に戦う!だから、一人で無茶しないで!そんなの、オレは許さない‼」
「なんで……」
「え?いや、その……な、なんでだろ!?なんか偉そうに言っちゃってゴメン!」
「……いや、良いよ。じゃあ夜が明けるまでは、付き合って」
「う、うん!」

頷いてくれた!
良かったと安心する気持ち半分、言っちゃったと後悔する気持ち半分って感じかな。
でも、と、オレは手につけた指環をなぞる。
これは、ボンゴレリングは人を守るための力だ。
彼のためになら、この力を使いたい。
拳を握って胸に当てる。
その時、ふと予感がした。
誰か来る。
後ろを振り向くと、一瞬遅れて彼も振り向く。
オレ達の視線の先には、着物を着て、指ぬきグローブを嵌めて、大きな刀を持って、顔の前に木の板をたくさん突き刺した男がいる。

「聞いたぞ。つまりそのガキ、貴様の仲間と言うことだな」
「っ‼」
「え、なに!?てか誰ー!?」
「騒がしいガキだな……」

雰囲気、すごく怖い。
でも何だか、二人は知り合いのようだった。
お互いに刀や剣を構えて、ピリピリと緊張した空気を感じる。
今にもお互い、斬りかかっていきそうだ。

「よお、オレのことだけ警戒してて良いのか?」
「……なに?」
「周りを見てみろ。ここら一体の妖が、ここに集合してきてるのがわかるだろう?」
「っ!」
「う、うわぁあ!?」

ヘルメットの彼と一緒に辺りを見渡す。
オレ達の周りには、大小様々な異形達が大量に……

「うぇええ……気持ち悪っ‼」
「おい!お前は逃げろ!これだけの数、お前を守りながらじゃあ戦えない‼」
「どうすれば良いの?」
「だから逃げろって……」
「違うよ!どうやって戦えば良い?」
「……殴れ、そんで、絶対に相手を畏れるな。相手の空気には絶対に飲まれるな」
「ああ、わかった!」

指環に意識を集中する。
覚悟の炎を点す。
体に力が満ちていくような感覚と共に、オレは飛び上がった。

「うおぉおお‼」
「ぐあぁ!」
「な、なんだこいつは!ぎゃっ!」
「周りの雑魚は任せろ!君はそいつを‼」
「……ああ、ありがとう」

彼はそれだけ言うと、木の板の男と向かい合った。
きっと、もうこちらを振り返ることはない。
オレと、彼の心が通じ合ったのだと、直感したんだ。

「お前らを全員、死ぬ気で倒す!」
「やってみろや人間!」

妖怪の山に殴りかかった。
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