企画

□きみたまご様(朱とまじわれば+10×探偵)
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ザンザスと一緒に、新しく日本に移ったボンゴレ本部へと来ていた。
大した用事ではなかったため夕暮れには仕事も終わった。
帰る前に飯でも食いにいこうかと言う話になり、とあるホテルのレストランに立ち寄ったオレ達。
そこまでは良かったのだ。
だが、まさかこんなことに巻き込まれるなんて、誰が予想しただろう。
やはり暗殺者としての性が、人の死を呼び寄せたのか?
それとも、別のなにかが……?
とにもかくにも、オレとザンザスは殺人事件に巻き込まれ、容疑者の一人として足止めを食らうはめになったのである。

「だから!オレ達はただ仕事で日本に来ただけで、ここも偶々立ち寄っただけなんだよ!人殺しなんてしちゃあいねぇ。何度説明すりゃあ良い!?」
「何度でもよ!今のところ一番怪しいのはあんた達なの、わかってるでしょう?」
「ぐ……それは……」

女刑事に言われて、流石にオレも言い返せない。
だってさっきから身体検査を拒み続けているから。

「なあザンザス。頼むから身体検査受けてくれよ」
「なぜ、オレが、見ず知らずのドカスに体を触られなければならねぇ」
「事件があったからですよ!」
「きっと犯人だから検査されたくないんだぜ!」
「元太くんシー!聞こえちゃうよ!」
「お前ら全員聞こえてるってのバーロー」
「みんな、警察の人達の迷惑になっちゃうからあんまり騒がないの!」
「ちょっと蘭〜、あの二人すっっっごいイケメンじゃない!?」
「もー、園子まで!」

それにしても、何故殺人現場に子供がいるんだ?
それも複数人。
小学生らしきガキが五人、高校生らしき少女が二人、何故か慣れた様子で現場を彷徨いている。
は?第一発見者?参考に意見聞く?
少なくともこいつらのせいでザンザスの機嫌が急降下していることは間違いないから、すぐにでも出ていってもらいたい。
とばっちりが来るのはオレなのだ。
その上小学生の内の一人、明るい茶髪の少女が、ずっとオレ達を警戒したように睨んできている。
オレ達が何したってんだぁ?
しかし何より、一番イライラするのはこれだ。

「ザンザス様ぁ、お久し振りですぅ!また会えるなんて、あたし感激っ!」
「……」
「ザンザス様が犯人な訳ないですもんね!あたしぃ〜、信じてます!」
「……カスザメ、酒が空だ」
「そこでオレに話を振るのはやめろ……!」

ザンザスの隣に勝手に座って、鬱陶しく絡んでくる、派手な着物と化粧の女。
何でも、昔ザンザスと……何というか、ねんごろな関係だった女、らしい。
ザンザスのことだし、まるで覚えてなさそうなもんだが、しかし振り払ったりしない辺り、そこそこ深い関係だったのか?
普段なら気にしない程度のことにもイライラするほどには、オレは疲れているようだ。

「とにかく、身体検査も受けてくれない内は帰してはあげられないわね!」
「ぐぅ……」
「……チッ、おいカスザメ。こっちにこい」
「は?なんだよ……」

ザンザスに呼び寄せられて、仕方なく近寄る。
一体誰のせいでオレがこんな目にあってると……。
ちょいちょい、と手招きされて顔を寄せると、髪を掴まれて耳打ちされた。

「うぁだだだ!」
「帰ったらたっぷりサービスしろ。そしたら身体検査でも何でも受けてやる」
「は、はあ!?」
「もちろんベッドの上でだぞ」
「なぁ‼」

みるみる顔に熱が集まっていく。
こ、このバカはこんなときになんってことをほざいてやがる……!
聞かれても困らないようにイタリア語を使ってくる辺り本当にっ!もう!
つーか横で女が睨んでんだよ!
いい加減にしろ!

「日本じゃあそれ、セクハラだぞぉ……!」
「知るかカス」

ニヤニヤと笑うザンザスと、一瞬で顔を真っ赤にしたオレ。
刑事達も子供達も首を傾げている。
彼らを見て、ザンザスを見て、唇を噛む。
よし、オレも男だ……違った、女だが。
覚悟は決めた。
どうせ帰ったら散々な目に遭うことはわかっているのだ。
それが更に酷くなることくらい…………うん、嫌だな。
しかしここは仕方がない。
腹を括ろう。
サツに捕まって首括るよりはずっとましだ。

「っ……わかったから、大人しく身体検査受けてこい、よ……」
「ふはっ、Sei una bravo bambina.(良い子だな)」
「っ、くそ」

立ち上がったザンザスを、若い刑事の方へと押し出す。
若い刑事は可哀想なほどぶるっちまってる。
安心しろ、この後酷い目に遭うのはオレだけだ。
でも少し八つ当たりしたくて、彼に小声で囁いた。

「おい、身体検査受けるってよ」
「ほ、本当ですか!」
「だが、気を付けろよぉ。下手な真似したらてめぇ、クビが飛ぶだけじゃあすまねぇからなぁ」
「ヒイっ!?」

ガッチガチに固まった刑事を見て、流石に哀れに思えてきた。
いやまあ、いくらザンザスと言えどただの刑事を虐めることはねぇだろう。
冗談だ、と言おうとしたところで、再びオレは髪を引かれて仰け反った。

「のぉあ!?」
「お前はそこの女のボディーチェック受けろ」
「……オレのこと心配して」
「ねぇ」
「だよなー」

空笑いを浮かべながら、オレは女刑事に声を掛けてボディーチェックをしてもらった。
良かった……今日は大した装備も着けてなかったし、武器も持ってきてなかったからな……。
義手のところは少し怪しまれたが、昔色々あったんだと言えば、一応のところは納得してくれた。
というかやはり、女であることには気付いていなかったらしい。
色んな事を悟ったらしい刑事は、『その……あんたも大変なのね』と言ってオレを個室の外へと送り出した。

「……で、高木くんの方も何も出なかったって訳ね」
「は、はひ……」

あの若い刑事……少し脅しすぎただろうか。
ぐったりとして生気が感じられない。
ザンザスは仏頂面のままオレの方へ向かってくると、オレの頭を唐突にぶっ叩いてきた。

「いっで!」
「覚悟しておけ」
「待て!オレが何したぁ!?」
「ひ、ひっどーい!お兄さん何もしてないのに叩いた‼」
「ちょ、ちょっと吉田さん……!」

たまたま、その様子を見ていた女の子が、ザンザスを指差して避難し始める。
茶髪の子が止めようとするが、続けて周りのガキどもも援護射撃を送り始める。

「おい兄ちゃん!虐められてんならちゃんと言わなきゃ誰も助けてくれねぇんだぞ!」
「そうですよ!刑事さん達が味方してくれるはずです!」
「そ、そうよ!いくらイケメンでもして良いことと悪いことがあるって言うか……!」
「頭、痛かったですよね?あ、私ハンカチ濡らしてきます‼」

あれよあれよと言う間に、オレは濡れたハンカチを渡されて子供達に囲まれてしまった。
え、何これどういう状況。
別にあれくらいはいつものことだし、たんこぶも出来ねぇくらいのよくあるスキンシップだ。
当のザンザスは子供の言うことなんか完全に無視して、元の席で酒を飲み始めている。
こんなときに呑気な奴だなぁおい!

「あのねお兄さん」
「あ"あ?」
「自覚ないみたいだけど、今の暴力だよ?訴えたらたぶん勝てると思うけど」

眼鏡のガキにそう言われて、しばらく考え込む。

「……マジか」

言われてみたら確かに、そんな気がしてきた。
チラリとザンザスを見る。
腕に絡み付く女を放置したままウィスキーをストレートで飲み下していた。
それを見て、イラッとした気持ちが再燃してくる。

「訴えねぇけど、今とてもイライラしてきた」
「いや、遅いよ」

眼鏡につっこまれて、大きなため息を吐いた。
どうやらまあ随分と、自分は毒されているようである。
……後悔は、別にしてないけど、なぁ。
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