群青の鮫_

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「で、コイツ誰なんだ?」
「……」

突然襲い掛かってきた女を、危なげなく倒したスクアーロ。
敵を倒したにも関わらず、その顔は曇っていた。
ディーノの問いにも、難しい顔をしたまま答えない。
黙ったまま、女の仮面を剥いだり、持ち物や武器を出して、じっくりと観察する。

「……誰だろうなぁ」
「心当たりねーのか?なんか凄い……キレてる奴だったけど」
「恨まれる心当たりは山程あるが……、この女は知らねぇ」
「あー……そっか」

ヴァリアーとしても、個人としても、恨まれることは山程している。
ただ気になることが1つだけあった。

「この仮面、何処かで見たことがあるような……」

白い気味の悪い仮面。
思い出そうとするが、どうにも浮かんでこない。
ため息をついて、思い出すことは諦めた。
女から武器を取り上げて縛り上げる。
縛った後は適当に転がした。

「とりあえず、先に謝っておく。すまん」
「は?何で?」
「オレに対しての報復に、お前を巻き込むことになっちまったみたいだからな」
「……別に、そんなこと気にしねぇよ。それより、怪我とかなかったのか?」
「あんな雑魚相手にあるわけねぇだろ」
「うん、カッコ良すぎて惚れ直しそう」

ディーノにはそう言ったものの、やはり能力は落ちている。
手を閉じたり開いたりしながら、スクアーロは眉を顰める。
常に動き回っているような日常から、突然怪我人としてほぼ動かない生活に変わったせいか、スピードも、力も、技術も、落ちているようだ。
その事に不快感を感じ、眉間に深いシワを刻むスクアーロを、ディーノは心配そうに見詰める。

「……眉間にシワ、よってるぜ?」
「あ?……ああ、気にすんな」
「笑ってくれ、とは言わねーけどさ。もうちょっと力抜けよ。じゃねえと肝心なところで失敗するぜ」
「……そうだなぁ」

頷きこそしたが、まだ固い顔をしているスクアーロに、ディーノは軽くため息を吐いた。
優しく背中を叩き、先を促す。

「とりあえずさ、先に進んでみようぜ!まだ敵、いそうだしな」
「ああ。行こう」

チラリと仮面を見て、二人は部屋を出る。
庭に出ても大丈夫なように、狙撃手を倒さなければならない。
たまに転けそうになるディーノに、スクアーロが手を貸しながら、二人は階上へと上がっていった。



 * * *



「……来てくださいましたか」
「しし、王子達呼ぶとか、高くつくぜ?」
「一体何がどうしたって言うの〜?」
「ム、そのモニタ、映ってるのってスクアーロだよね?」

その頃、風達の元には助っ人として呼ばれたヴァリアーが到着していた。
と言っても全員ではない。
ベル、ルッス、マーモンの3人の幹部と、何人かの部下達。
ほとんど事情を聞かされないまま駆け付けたらしく、風はその場で掻い摘んで説明する。

「……何してるんだい、風」
「少し調子に乗りすぎてしまったことは認めましょう」
「しし、何でコイツちょっと偉そうなの?つか、スクアーロ、マジ?」
「そんな楽しいことしてるなら私も呼んでほしかったわぁ〜!でも困ったわねぇ……。一体誰がスクちゃん襲おうなんて、命知らずな真似をしてるのかしら?」

首を傾げるルッスーリアの言う通り、かなり命知らずな連中である。
もしスクアーロが彼らの正体を思い出したのなら、先程戦っていた女性は殺されていたかもしれない。
気絶させただけなのは、決して優しさや情けではなく、後で話を聞くための合理的な判断なのだ。

「んー、でも確かに、私もこの子の仮面、何処かで見たことがあるような気がするわ」
「あ、王子も」
「奇遇だね。僕もさ。でも、どこで見たんだったかな……」
「マーモンもですか。実は私も、見たことがあるような気がしているのですが、思い出せなくて……」

全員で頭を抱えるも、答えは出ない。
もう一度じっくりと女の様子を見てみる。
気味の悪い仮面、黒い革のパンツ、毛皮のブーツ、派手な装飾のベルト、赤い革のベストに、二の腕まである手袋、顔は意外と小綺麗で、髪や肌は色素が薄い。
どれだけ見ても答えが出ないまま、モニタの中の二人が2階に到達した。
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