群青の鮫_

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「スクアーロー?」
「こっちにいるぜぇ。ちょっと待ってろ」

のんびりとシャワーを浴び終わったディーノは、下着を身に付けると、バスタオルを首から掛けてスクアーロを呼ぶ。
丁度服を乾かし終わった所らしい。
脱衣場で待っていると、スクアーロが服を持って入ってきた。

「サンキュー。服、乾いたか?」
「ちゃんと乾いたぜ?おら、さっさと着ろよなぁ」

言われた通り、サッと服を身に付ける。

「部屋に戻ろうぜ。これ以上面倒なことになるの、嫌だろ」
「あー、そうだな……」

そんな会話を交わしながら、二人は部屋に戻るために廊下を歩く。
もちろん十分に警戒しながら歩き、今度こそは何事もなく部屋にたどり着くことが出来た。

「……やっと、着いたって気がする」
「確かに、なんか必要以上に疲れたなぁ」
「あ、髪、乾かさねーとな……」
「髪?」
「スクアーロ、そのままだとまた体冷えちまうぜ?ってかもう冷えてんじゃねーの?」

既に三つ編みは解いているスクアーロの頭に手を触れると、生乾きの髪が指に絡む。
部屋にある櫛とドライヤーを持ってきて、ディーノはスクアーロを椅子に座らせて、その後ろに立った。

「折角綺麗に伸ばしてんだから、ちゃんと手入れしねーとな!」
「……なら、頼む」
「おう!頼まれた!」

櫛を通し、ドライヤーを掛ける。
気持ち良さそうに目を細めて、スクアーロはディーノの手が髪に触れる感覚を楽しんでいるようだった。
久し振りののんびりとした時間。
穏やかな空気が流れていた。

「猫みたいだな」
「……猫?」
「頭を撫でられて、目を細めてるからさ」
「……お前は犬っぽいな。ゴールデンレトリバーみたいだ」
「なんで?」
「感情が直ぐに表に出るし、怒られたときとか、叱られて尻尾と耳、垂らした犬みたいだった」
「んなっ!そんなことねぇよ!オレ別に誰にだって尻尾振ったりしねーし!」
「そこまでは言ってねえよ」

ムキになって言うディーノに、スクアーロはクツクツと喉で笑う。
ああ、幸せだな……。
こんな時間が続けば良いのに。
しかし盛者必衰、諸行無常。
物事は常に移り変わる。
人生楽ありゃ苦もあるわけで、髪を乾かすその途中で、突然ディーノの手が止まった。

「どうかしたか?」
「なんか……音聞こえねぇか?」
「音?」

ドライヤーのスイッチを切り、二人で耳を澄ませる。
……確かに、遠くから固い音が響いてきている、というか、近付いてきている。

「聞こえるよな?なんか、ドアがしまるような音」
「聞こえるなぁ」

次は何なんだ……。
警戒しながら、二人は揃ってドアに近付き、恐る恐る部屋のドアを開いた。
そしてその途端……、

―― ヒュオッ  ダンッ!!

「うわっ!?」
「ぐあっ!!」

風の音と共に、凄まじい圧力が掛かり、ドアが強引に閉められる。
ドアのすぐ後ろにいた二人は、吹っ飛ばされて、引っくり返ってしまっていた。
幸い、今回は引っくり返るだけの被害で済んだが、スクアーロはサッと起き上がると慌ててドアに駆け寄った。
ドアノブを乱暴に回す。
だがガチャガチャと音がなるばかりで、ドアが開く様子はない。

「開かねぇ!!」
「マジかよ……!?」

ディーノも加わって、二人掛かりでドアを押すが、ビクともしない。
鍵を掛けていると言うよりは、向こうで何かが押さえている、という様子だ。
何度体当たりしても、蹴っても、叩いても、ドアは開かない。

「……閉じ込められた、みてぇだなぁ」
「何でだよ、おい……」

この部屋には明かりとりの窓くらいしかなく、ドア以外に出入り口はない。
完全な密室。
間違いない、また、奴らの仕業だ……!
キレるを通り越し、諦めの境地にたどり着いたスクアーロは、死んだ魚のような目でディーノに提案した。

「とりあえず、このドアが開くようになるまで、大人しく待とうぜ」
「……それしかねーみたいだな」

ソファに戻っていったスクアーロに着いていって、ディーノも大人しく座る。
困った顔をするディーノの腹が、キュルルっと鳴く。
そろそろお昼時である。
腹を擦りながら、天井を見て呟いた。

「今日はなんか、一日が長い……」

二人の疲れたような吐息が、天井に吐き出されたのであった。
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