群青の鮫_

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「前回までのあらすじ!ついにやっとようやくとうとう結ばれたディーノクンとスクアーロちゃん!だが二人の前には大きな壁が立ち塞がっていたのであった!ミルフィオーレ&風の仕掛けた罠を無事突破することは出来るのか!?そしてディーノクンはスクアーロちゃんとキッスすることが出来るのか!!」
「にゅうー!白蘭突然どうしたの!?」
「ブルーベル、気にしてはいけません、大人の都合です」

そう、二人をくっ付けるために仕掛けた罠が、今や二人を邪魔するだけのモノと化していたのであった。
ここからが楽しいところだと、気合いを入れてマシュマロを皿に開ける白蘭とユニを見ながら、唯一この企画に反対だった桔梗はため息を吐く。
どうか、スクアーロが無事生き残れますように……!



 * * *



「なんだよこれぇぇえ!!」
「ゔお゙ぉい!どうなってんだこれはぁ!!」

二人が玄関まで戻ってきた時の事だった。
突然人の気配を感じてスクアーロが振り向く。
1拍遅れてディーノも振り向く。
二人が振り向いた先にいたのは、綺麗に着飾った女性の集団。
そして次の瞬間には、二人それぞれに女性が群れて身動きが取れなくなっていたのだった。

「て言うか!誰!?」
「それは良いからとにかく脱け出すぞ!!」
「えー!やだぁー!!」
「もっと一緒にいたいー!」
「ディーノ様ぁ〜!」
「スクアーロ様ぁ〜!」
「だからお前ら誰ぇ!?」

キャイキャイと抱き付いてくる女性達に揉みくちゃにされながら、逃げようと二人は藻掻くが、腕や腰をガッチリと掴まれていて脱け出せない。
前後左右様々な方角からグイグイと押され、甲高い声に囲まれて、気が遠くなりそうだった。

「キャア!ディーノ様ったら意外と筋肉ついてるんですね!!すてきぃ〜!」
「うわっ、ちょっ、あんま触るなって!」
「ヤダ本当〜!」
「胸板厚い〜!」
「触んなって!!」
「かぁわいい〜!!」

綺麗な女性達に身体中ベタベタと触られて、男なら喜ばないはずはない。
正直ディーノだって満更ではないはずだ。
だがこの場合は別である。
恐る恐る少し離れた所にいる彼女を見る。
付き合いたての彼女の目の前で、他の女に詰め寄られているわけなのだから、ディーノのビビる気持ちもよくわかるだろう。
だがスクアーロの方を見たディーノは更なる混乱に突き落とされる事になる。

「スクアーロ腰細いのな!」
「っ!?」
「おやおや、脇腹が弱いのですか?」
「!!!??」
「カスザメが……、テメーはオレの犬じゃなかったのか?」
「オレはお前の犬だが何か?」
「オイ待て!何でそこだけ真顔で断言してんだ!?」

先程まで女性達に囲まれていたはずのスクアーロは、気付けば見知った顔の男達に囲まれているではないか。
いや、囲まれていると言うよりセクハラされている。
スクアーロは嫌がってもがき、山本や骸を押し退けているが、XANXUSに抵抗できない以上、どうにも脱け出せそうにない。
ディーノも女達に絡まれて脱け出せそうになく、二人して混乱のまま揉みくちゃにされることしかできない。

「オイいい加減にしろ!スクアーロ、今そっち行くからっ……ちょっ、どこ触ってんだよ!?」
「んなっ!ザンザスがオレに優しくするわけねーだろふざけんなぁ!跳ね馬コイツら幻覚だ間違いない!!」
「見分けるとこそこぉ!?よくわかんねーけど!幻覚なら思いっきりやっちまうぜ!女殴るのは趣味じゃねーが……この際仕方ねぇ!!」

ディーノが懐から鞭を取り出す。
だがスクアーロは忘れていなかった。
ディーノには今、守るべき部下がいないことを、部下のいないディーノは、ろくに戦うことも出来ないへなちょこになってしまうと言うことを……!
ディーノは鞭を取り出す。
そしてそのまま、取り出した鞭の持ち手がディーノの額に激突した。

「いってぇ!」
「このバカ!!」

見事やらかしたディーノの事を罵りながらも、この事態を予測していたスクアーロは、飛んできた鞭を危なげなくキャッチして、自分達に纏わり付く者達を吹き飛ばした。

「ぐぁぁあ!」
「がはっ!」
「きゃああ!」
「お、お見事……」
「まあな」

幻覚が消え、キリッとした顔で決めたスクアーロに、呆然と拍手を送る。
車内でも拍手が巻き起こっていた。
因みにこの幻術を用意したのはトリカブトである。
彼が面の下で何を考えているのかは永遠の謎だ。

「……なんか、さっきから助けられてばっかだな、オレ」
「へなちょこなんだから大人しく助けられてりゃ良いだろ」
「うっ……」

普段なら、そんなことないと反論もしていただろうが、ここまで完璧に助けられてしまうと、反論することも出来なかった。
ムスくれて体育座りをするディーノに、困ったように眉を下げながら、スクアーロは持っていた鞭を差し出す。

「これ、返すぜ」
「ん、サンキュな。……なあ、スクアーロ」
「あ?なんだよ……わっ!?」

しゃがんで鞭を渡したスクアーロの手首を、引っ張る。
スクアーロはバランスを崩して、ディーノの胸に倒れ込む。
その体を痛くないように受け止めて、ディーノはその髪に顔を埋めた。
花のような、微かに甘い香りがする。

「なんだよいきなり……!」
「……スクアーロ、さっきどこ触られたの?」
「は?」
「どこ?」
「……腰、とか、お腹とか?」
「それだけ?」
「……脚とか?」
「そっか」

ディーノの手が、スクアーロの腰を撫でた。
もう一方の手は脇腹を撫で上げる。
腰を撫でる手がスルリと下がって太ももを撫で、スクアーロは慌ててその手を掴んで止めた。

「ぁ……な、どこ触ってんだよ!」
「オレ以外の奴が触った場所」
「はあ!?」
「ごめん、オレさ、スゲー、独占欲強い。だから、スクアーロが他の奴に触られたりするの、嫌だ。奴らは幻覚だったけど、それでもヤダ」
「……ガキ」
「うっせぇ。良いだろ、恋人の体触るくらい」
「バカ、変態」
「お前さっきから、オレのこと詰ってばっかじゃねえか」

捕まえられた手と、逆の手で脇腹を擽る。
クツクツと体を揺らして、スクアーロが笑っている。
肩を叩かれて止めると、今度はスクアーロが首に腕を絡めて、擦り寄ってくる。

「妬いてたのか?」
「……当たり前だろ」
「カッコ悪い」
「ぅ……」
「でもなぁ、妬いてくれたり、助けようとしてくれたりすんの、嬉しいんだ」
「え……」
「ありがとな」

優しく頭を叩いて、ディーノから体を離す。
立ち上がって、玄関の扉に向かう。
早く顔に集まった熱を冷まさないと、また、顔が赤くなってしまっているはずだから。
だがスクアーロが玄関の敷居を潜るより先に、腕を掴まれて、また引っ張られた。

「スクアーロ……!オレ、こんなカッコ悪いけど、オレで良いって言ってくれるなら、キ……」

だがディーノが途中まで言ったときだった。
ガタン、という音、ザパ……という水の音。
そして直後、二人の頭上からポリバケツと大量の水が落ちてきた。

「ずわっ!?はぶふっ!!」
「ん"っ!?ふむっ!むぅっ!!」

……図らずも、スクアーロの顔の熱は冷まされることとなったわけだが、その代わりに二人はびしょ濡れになってしまったのだった。
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