群青の鮫_

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『ハッ!面白ぇ!!どういう仕組みか知らねーがぁ!その炎みてぇなやつ、気に入ったぜぇ!!』

シモンファミリー+スカルに相対する銀髪の少年は、遊んでいるようにキャラキャラと笑いながら、のらりくらりと炎真達の攻撃を躱し続けていた。
……いや、銀髪の少年などと濁す必要はないだろう。
全員わかっていた。
それがスペルビ・スクアーロの少年時代の姿であることを。
だから正確には、少年ではなく少女なのだが、その言動からは、とてもじゃないが少女には見えない。

『ゔお゙ぉい!次はどいつだぁ!?一人一人丁寧に捌いてやるぜぇ!!』
「うおぉう!?」

8人という人数に合わせているのか、8種類の武器を使いこなし、楽しげに戦うスクアーロの攻撃を紙一重で躱したジュリーが、アーデルハイトの横まで後退し、悲鳴のような叫び声で文句を垂れた。

「アレ本当に女なのかよ!?アーデル、なんかあの暴走喧嘩マシーン止める作戦はねーのか!?」
「無茶を言わないで!今のところスカルを盾にして近付く以外に、奴を倒す方法は思い付かないわよ!!」
「おい!そんなことしたら本気で怒るからな!!ムチムチアーデルでも絶対に許さないからなー!!」

スカルを犠牲にする案を出すくらいだから、アーデルも相当パニックになってるらしい。
2本のゴツいアーミーナイフ、射程の長い槍、火力の高いダイナマイト、ドーナッツ型の投擲武器であるチャクラム、忘れた頃に両の腕から飛び出してくる仕込み鉄爪、殴った箇所が仕込んだ火薬で吹き飛ぶグローブ、どこから取り出しているのか距離を取ると放たれるサブマシンガン、そして一番厄介なのが変幻自在な型を持つ剣。
その8つの武器が、気ままに8人を襲っていた。

「結局わからん!コイツ、継承式の時よりも強くないか!?」
「きっと、守るものがないからだ……」
「?どういうことだ、炎真」
「おいらも教えてほしいんだな」

聞き返す薫とらうじに首を縦に振って炎真は分かりやすく説明した。

「あの時、この人の目的は罪と客人を守ることだった。だから簡単には退けなかったし、僕達を本気で殺すつもりで来ていたでしょう?でも、今は違う。キツかったら退けるし、殺す必要がないから攻撃は温くても良いし、何より背負うものがないから気楽に動けてるんじゃないかな」
「つまり!逃げにも全力を出せるってことか!!」
「ダカラ攻撃が当たらないんだネ!!」

相手を弄ぶように、ギリギリな戦い方をしていると思えば、突然本気で命を狙うような攻撃を繰り出してくる。
その読めない動きに翻弄されて、シモン達は上手く踏み込めないままでいた。
何より、他の魂の欠片と同じように、この欠片もまた、物理攻撃が無効化されてしまうのだ。
戦いが始まってすぐにそれに気付いた彼らだったが、そんなことは関係なく攻撃を繰り返してくるスクアーロに呑まれて、自分達のペースをすっかり失っていた。

「どうすんよ炎真ぁ!!」
「くっ……!しとぴっちゃん!沼でスクアーロさんを捕まえられない!?」
「さっきカライッパイやってるけど、全然捕まんナイ☆」
「アーデル、氷は!?」
「全てあの剣で砕かれている!!ダイヤモンドキャッスルは私のごく間近でないと発動できない!!けれど近付けばダイヤモンドキャッスルを発動するより早く攻撃を受けるか逃げられてしまうわ!!」
「なんとか攻撃を止めないといけないのか……!」

だが攻撃を止められそうな他のメンバーも、既にかなり消耗していた。
薫の攻撃は強力だが素早さに劣っていて、空振りするばかりで欠片には届かない。
ジュリーの幻術はダイナマイトでジュリーごと吹き飛ばされてしまう。
らうじは防御、反撃専門で、素早いスクアーロに翻弄されて決定打は与えられない。
紅葉の拳や森の炎も、避けられるか防がれるばかりで効果がない。
かく言う炎真自身の大地の重力操作も、全て避けられている。
重力操作は、標的を定め、指で操ってようやく働く。
その僅かなタイムラグを、スクアーロは的確に読んで避けているのだ。

「スカル!何か良い案はない!?」
「オ、オレかっ!?」

最後の砦はスカルである。
今のスクアーロ以外に不死身と言えばスカルだけだ。
その経験が生かせないかとシモンファミリーは期待の目を向けるが、直ぐ様それは失望の目に変わる。

「オレは自分で攻撃できないんだよ!!スタントマンだからな!!」
「……偉そうに言うことじゃないよスカル」

シモンファミリー、絶体絶命であった。
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