ブラックバカラを貴方に。

□夢を見るから、人生は輝く。恋をするから、人生は色付く。
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あの日から、またポツポツと黒子君と話せるようになった。
すごく嬉しい。
伊達先生が時折冷やかしてくるのがウザいけれどもね。

「それで、新しくバスケ部に入った人がすごいんです。
あっという間に二軍にまで昇格して……次の昇格試験でよっぽどのことがない限り一軍に昇格するだろうって。」
「そうなの……。
そうなると、黒子君の後輩ができるってことね。」
「はい。
僕も頑張らなくてはと思います。」
「良いライバルにもなる、ということね。」

話も、以前よりスムーズにできるようになったのよ?
私は主に聞き役だけど、黒子君が色々話してくれるから、楽しいわ。
今は、文芸部の部室で話しているの。
お昼休みにお弁当を食べながら。
私はいつも、ここでお弁当を食べたり本を読んだりして昼休みを過ごしているのだけど、それを黒子君に話したらたまにお邪魔しても良いですか、と訪ねられた。
放課後だと練習があって中々よれないから、昼休みに立ち寄りたいのだそうだ。
来る度に本を借りていくから、もしかしたら都合の良い図書館のように思っているだけかもしれないけれど、それでも私は嬉しかった。

「そう言えば、文芸部は多々良さん一人しかいないんでしたよね。」
「そうね。
今年も誰も入らなかったし……、私の卒業と同時になくなってしまうかもしれないわね。」
「それは……残念ですね。
居心地の良い部室なのに。」
「そう言ってくれると、嬉しいわ。」

文芸部は黒子君の言う通り、私一人だけ。
だから私が居心地の良いように色々とモノをおいてある。
小型冷蔵庫だったり、コンロだったり、食器だったり、クッションだったり、ふかふかの一人用ソファーだったり。
後はひたすら本本本。
そして本の山に埋もれるようにして、作業用の机とワープロしか使っていないノートパソコン。
自分で言うのもなんだけど……、とんでもない充実具合ね。
パソコンだって、一応ネット環境整っているし。

「あの、ずっと思っていたんですが……。」
「何かしら?」
「文芸部って具体的にはどんな活動をしているんですか?」
「そうね……。」

お弁当を食べる手を止めて、ふむと考え込む。
文芸部の活動って言うよりは、私が勝手に始めた活動ばかりなのだけど。

「前に手伝ってもらったように、図書館司書のお手伝いや、図書委員のお手伝い、後は個人で創作活動をしたり、そうね……ひたすら本を読む。
コレくらいかしら。」
「創作活動……?
って、もしかして何か物語を書いているんですか!?」

あ、やっぱりそこに食い付いちゃう?
気になるわよね、読書家としては。

「その、友人と、協力して部誌を作ったり……。
賞に投稿したりしてるけど、あまり面白くないわよ?
下手くそだし……。」
「多々良さんの作品ならきっと面白いですよ!
僕も読んでみたいです。」
「え。」
「ダメですか?」
「……どうしても?」
「是非。」
「でも、きっと面白くないわ……。」
「読んでみなければそんなことわかりません。」
「それは、そうだけど。」

文を書くと……、どうしたってそこには自分が出る。
文を読まれることって、丸裸の自分を見せているようで、すごく恥ずかしい。
何度も、何作も書いてきたけれど、人に読まれることはやっぱりまだ恥ずかしい。
特に相手が知り合いだと、余計にね……。

「その、でも……。」
「いや、ですか?」

そんな捨てられた子犬みたいな目をされたら断れないじゃない……。

「恥ずかしいけど、どうしてもって言うなら……。」
「ありがとうございます!」

本当に、本当に本当に恥ずかしいけれども、黒子君の笑顔の対価だと思えば……!
机の上をごそごそと探して、埋もれていたファイルを発掘する。
その中から、一番マシな作品を引っ張り出して、空のファイルに入れて黒子君に渡した。
大切そうに受け取った黒子君に、人にはあまり見せないでほしいと頼むと、快く了承してくれた。

「大切に読みますね。」
「……本当に面白くないわよ?」
「そんなことありませんよ。」

そう言ってくれたけれど、私の文章はまだまだ未熟で……。
しかも好きな人に読んでもらうだなんて……。
い、今からでも返してもらいたい……!

「そろそろ時間ですね。
教室に帰りましょうか。」
「……そうね。
遅れちゃまずいものね。」

未練たらたらに原稿用紙の束を見つめて、私はゆっくりと頷いた。
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