企画

□深山様(群青)
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今回の任務について説明しよう。
オレが護るべき対象は、大規模マフィア、ラニャテーラファミリーのボス。
そしてオレ達が参加するパーティーは……。

「仮面パーティー?」
「金持ちどもが開く、道楽の集まりだぁ」
「じゃあ顔が見られる心配はないのねん?」
「そこだけは、助かるが……なぁ」

鏡に写る我が身を眺めて、深く大きくため息を吐く。
オレの髪を梳かしてくれていたルッスーリアは、何故かウキウキと楽しそうだ。

「良いじゃないのぉ、たまにはこんな風におめかししても!似合ってるわよ〜?」
「似合ってねぇよ!」
「あん!もう!女の子が脚広げないの!」
「〜っ!クソ!」
「女の子が汚い言葉使わないの!」
「バカ!」

機嫌の良いルッスとは逆に、オレの機嫌は最悪だった。
顔には煩わしい化粧を施し、目立つ髪は色を変えて肩に垂らしている。
着ているのは、背中全体と首の両脇から腰にかけてが、レースのシースルーになっていて、さらに片側に深いスリットの入った、タイトな丸首の黒いドレス。
脚にはプラットフォームでスティレットなパンプス……まあ、俗に言う厚底のハイヒールを履いている。
そんな9代目が用意したっつー衣装を身に付けて、いつも以上に仏頂面を晒している自分が、鏡の中に写っている。
ちなみに、服についての知識は全て、ルッスの受け売りだ。
詳しい服の知識なんてわかんねぇよ。

「あ〜ら!髪のセットしたらもっと可愛くなっちゃったわぁ!流石は、わ・た・し♡」
「けっ!」
「あんたも不細工な顔してないで、もっと愛想よく笑ってみたらどうなのよぅ?」
「何でオレが……」
「いつまでも文句言ってないの!」

オレの不満は尽きないが、確かにそろそろ護衛対象も来る。
愛想よく、なんて知ったこっちゃねぇが、よくした方が後々楽だろうことはわかる。

「チッ、愛想よく、だろぉ。それくらいわかってる」
「本当かしら〜?」

疑うルッスを鼻で笑って、奴の肩にそっと触れる。
控え目に笑みを浮かべながら、その耳に口を寄せた。

「ありがと、ルッス。……これで、良いんだろ?」
「ちょっと……やりすぎじゃない?」
「そうかぁ?ま、何とかなんだろ」

もう時間か。
ルッスから離れて仮面をつけ、部屋を出る。

「じゃあ、行ってくる」
「気を付けるのよ〜!」
「わかってるよ」

ヒラヒラと手を振りながら別れて、一人で廊下を歩いていると、突然バッグから軽快な着メロが響いた。
見ればメールが1件届いている。
……って、誰かと思えばディーノの馬鹿からかよ。
中身は『今日暇?』とか言う内容で、ため息を吐く。
オレが普段から暇がないことわかってんだろうが、カス。
忙しいと返信をしたとき、ちょうど外に続く扉をくぐった。

「やあ、君が今日のパートナーかね?」
「……ええ、そうです、ドン・ラニャテーラ」

タイミング良く滑り込んできた車から、身形の良い中年の男が降りてくる。
ルッスーリアに言われた通りに、愛想良く微笑み、差し出された手に自分の手を重ねた。
白い仮面の向こうで微笑むラニャテーラのボスを見て、胸の内でもう一度ため息を吐く。
一刻も早く、帰りたいと思った。
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