群青の鮫_

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『ゔお゙ぉい!テメーらその程度かぁ!?それじゃ遊びにもならねえだろうがぁ!!』
「不死身に言われるとムカつくぞ結局!!」

サブマシンガンで紅葉の森の炎を一掃して、距離を取ったスクアーロが、今度は炎真に近付く。
ギリギリでナイフを避けた炎真だが、その横から迫ってきた槍の柄に気付かずに、横っ面を張り飛ばされて倒れ込む。
食堂にあった机と椅子はほぼ全てが薙ぎ倒されていて、大きく開けた空間となったそこで、欠片は数多の武器を手慣れた様子で弄ぶ。

『……ハッ。テメーらヤル気あんのかぁ!?張り合いのねー奴らだぜ。殺す気で掛かってこいよ!!じゃねーと意味がねぇ!!』
「い、意味……?」

欠片は、倒れた炎真を冷たく見下ろす。
聞き返してきた炎真を、不意に掬い上げるように蹴り飛ばして、アーデルの前に落とした。

「がはっ!!」
「炎真!!」
『オレぁなあ。ずっとこうして強そうな奴らを見付けては食い散らかしてんだよ。強いやつと戦えば、見付かるかも知れねえからだぁ!!』
「見付かる……とは、結局何がだ!?」
『決まってる!オレが生きる理由だぁ。なぜ戦うのか、そう聞かれたらそれ以外に何がある?楽しいからか?血が見たいからかぁ!?ちげぇ。誰しもが違うとは言えねえだろうが、少なくともオレは違う!!探してんだぁ!オレの生きる意味を!オレが進むべき道を!!強者どもを食い散らかしていりゃあ、いつか必ず見付かる!!このオレの強さが、何の為のモノなのかが!!』

演説ぶって、演劇ぶって、艶然に、炎々にそう語ったスクアーロは、徐に手にしたダイナマイトに火を付けると、四方八方に放り投げた。

「危ないっ!!」

炎真が大地の重力で捻り潰すより早く、そのダイナマイトから煙が吹き出す。
いや、ダイナマイトではなく煙幕だったようだ。
視界を隠す煙に気を取られている内に、シモン達は欠片の姿を見失う。

「どこに行ったんだあのバトルマニアちゃんは!?」
『お前らは強いぜぇ』
「くっ!声が反響して場所が掴めないわ!!」
『だからオレに、その力を喰らわせろ!!ハッ!殺しはしねーから安心しなぁ!!』

食堂の中に満ちた煙がゆらりと蠢く。
気付いたときには、シモン達は死角から槍の柄で体を掬い上げられ、宙に浮き上がっていた。

「ぐあっ!」
「な、何でこの煙の中で、オレ達の居場所がこんなに正確にわかるんだよ!!」
「くっ……、ジュリー、きっと音を聞いて僕たちの場所を確かめているんだ!!煙が晴れるまで動かないで……うわぁ!!」
「どうした炎真!!結局どこにいる!!」
「おい、お前!炎真を離せ……ぎゃあ!!」
「スカル!?炎真、炎真どこなの!?無事なの、炎真!!」

たかが煙、されど煙。
シモン達はものの見事に翻弄されて、パニックに陥ってしまう。
次第に煙が晴れてきて、少しずつ落ち着いてきた彼らが目にしたのは、スクアーロに足蹴にされて倒れ込んでいる炎真と、ヘルメットを掴まれ持ち上げられているスカルの姿だった。

「炎真!!炎真を離せ!!」

アーデルはそう叫んだが、欠片は耳を貸す様子もなく、マイペースに感想を呟く。

『お前ら、素人だろぉ』
「どういう、意味……?」
『個人技じゃ中々のもんだし、連携だって悪くねーがぁ、臨機応変な対応もできてねぇし、一人一人の長所が生かしきれてねえ』
「そんなことは……!」
『経験不足だ。圧倒的に明らかに、どう考えたってテメーらにゃ経験が足りてねぇ。見たとこ、同い年くれぇか?今まで、何してきたんだ?』

欠片が炎真に向けたのは、失望の目だった。
一体、自分の何に希望を抱いたのか、それすらもわからない内に失望されて、流石の炎真も、痺れを切らした。

「僕達は、血と裏切りに、満ちた世界で、肩身を寄せ合って、生きてきたんだ……。それを、何も知らないで、そんな風に、言うな……!」
『だが、現実、お前らはオレに負けたじゃねーか』
「……僕の、重力操作って、結構加減が難しいんだ。特にこんな風に、体の自由を奪われた状態だとね」
『あ゙あ?何ボソボソ話してんだぁ?』
「本当は使いたくなかったんだ。こうすると、僕まで巻き込まれて、怪我をしちゃうから」
『なに……、がっ!?』

ズシン、と地響きのような音がする。
欠片が、突然バランスを崩して膝をついた。
スカルの体が放り投げられ、残った2人の周りに、小さなクレーターが出来上がる。
炎真が、自分達の周囲に重力を掛けているのだ。

『てめっ、死ぬ気かぁ!?』
「死、なな……いよ。でも、怪我は、する、かも……」

ガクンと倒れた欠片が、苦しそうに喉から唸り声を上げる。
それを見たSHITT・P!が欠片の下に自身の炎で底無し沼を作り出す。
彼女が身動きが取れなくなるまで沈み込むと、炎真はようやく自分の力を止めた。

『……負けた』

拍子抜けした顔で、欠片がポツンと呟き、シモンとスカルの8人は、歓声を上げて抱き合ったのだった。
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