群青の鮫_

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「スクアーロさんの魂、どこにいっちゃったのかな……」
「結局、しらみ潰しに行くしかないんじゃないのか?」
「時間が掛かるが……、それ以外に方法は無さそうだな……」

シモンファミリーとスカルは、一階の廊下を歩いていた。
全員でそこら中の部屋を、しらみ潰しに調べていく。
だが、目的のモノは見付からず、時間だけが過ぎていく。

「後は……食堂だけだね」
「ここにいなければ、次は2階を見てみるか」

アーデルハイトが食堂の扉を開け放つ。
その瞬間……、

―― ドガッ
「なっ……!!」

アーデルハイトのすぐ横、開かれた扉の蝶番に、剣が突き立てられる。
硬直したアーデルハイトに向けて、声が掛けられた。

『……ゔお゙ぉい、女ぁ。ちょっとオレと、遊んでいけぇ!!』

見知った人の面影を残した、銀髪の少年が、剣を引き抜き、一閃した。


 * * *


「なんだか宝探しみたいで面白いね♪」
「にゅにゅ!だよね!!どこにいっるのっかなー♪」

白蘭達、ミルフィオーレ一派は、三階を探していた。
あまり真剣みが感じられない白蘭に、ユニが怒った調子で言う。

「ダメですよ白蘭!!後1時間と少しでスクアーロさんが死んでしまうかもしれないんです!!」
「もう少し真面目に探せ!!」
「真面目だよ?遊ぶことに関しては、僕は誰よりも真面目だからね♪」
「白蘭!!」

だが、確かに、口調こそフザケたものだったが、白蘭はかなり率先して動いている。
部屋に入ってまず最初にゴミ箱を調べることは、ちょっとしたお約束だ。

「でも本当にいないねぇ。あとどれくらいかな?」
「あと1時間程です」

桔梗が時計を見て答えた。
1時間……。
長いような、短いような。

「ただ見付けるだけなら良いけど、連れ戻すって一体どういうことだろうね?」
「ただ見付けるだけでは済まないとお考えで?」
「だってスクアーロクンだもんねー♪大人しく連れ戻されてくれるかなーって、ちょっと心配になっちゃうでしょ?」

白蘭の予想通り、後にチェッカーフェイスの口から『暴れる』と語られるのだが、今の彼らは知るよしもなかった。
そんな彼らは、書斎、と書かれた部屋の前で足を止めた。

「次はここを見てみましょう」

ユニの前に立ち、γが扉を開ける。
途端、中から冷たい風と細かな水滴が吹き込んできた。

「……ビンゴ。見付けたよスクアーロクン♪でも……」

開けたその部屋は、書斎などではなかった。
広がるのは森の風景。
デイジーとトリカブト以外の全員に、見覚えのある場所だった。
そして、その森の中央に立つ人影は、彼らの未来の記憶の中の姿と一致する。

「なんで、10年後の姿で、この森にいるんだい?」
「ここ、未来で最後に戦ったあの場所か!?」
「アニキ、これってどういうことだよ!?」
「オレにもわからん……わからんが」

目の前に立つ、10年後の姿のスクアーロが、無表情に剣を構えたのを見て、γはユニを己の背に隠した。

「向さんはやる気の満々みたいだな」

青い炎が、一面に広がった。


 * * *


「スクアーロの魂、いないなぁ」
「どんな形してるんだろーな魂って?」
「やっぱこう、光る玉的な感じなんじゃないのか?」
「人魂のような感じではないですか?」
「ケムリみてーなもんじゃねーかコラ?」
「いや!極限熱く燃える炎だ!!」
「どんな形にしろ見た目がわからないと探しようがないよ……。」

いつものメンバーに、コロネロ、風も加わり、更にハルや京子も着いて大所帯での捜索をしているボンゴレグループは、なかなか見付からない魂の欠片に辟易し始めていた。
一階の北側を炎真達が、反対を綱吉達が探しているのだが、なかなか見付からない。
そこら中探し回った挙げ句、自分達が入ってきた玄関ホールまで戻ってきてしまった。

「今度は上の階も探してみようか。」
「でも、上の階は他の皆さんが探しているんですよね?」
「……沢田さん、このまま外も探してみませんか?」
「え、外?」

風の突然の提案に、全員が首を傾げる。

「でも、その魂ってのは屋敷の中にあんだろ?」
「ええ、ですがチェッカーフェイスはその前に、『敷地内に留めてある』と言っていました」
「!そうか、もしかしたら敷地内には庭も含まれてるかもしれないってことだな風!!」
「はい、可能性は大きいと思います」
「よし、じゃあ行ってみよう!!」

綱吉達は玄関を飛び出し、そして……

「……あれ?ツナ君、あそこにいるのって……!!」
「あ、あれ!スクアーロだよ!!」
「おーい、スクアーロ!!そんなところにいないで早く戻るのな!!」

山本が、遠くに見えた人影に駆け寄っていく。
その後を全員が追い掛ける。

「魂って……人の形してるんすね!!」
「予想外だけど、分かりやすくて良かった!!」

山本が、あと数歩でスクアーロに触れられる、そんな距離に踏み入れた瞬間だった。

―― ビュゴッ
「っ!?」

山本の体が突然仰け反る。
その上を、目にも止まらぬ速さで、剣が通り過ぎていった。

「さがれツナ!!」
「え、な……なんで!?」
「……10代目、コイツ、こんなに背、ありましたっけ?」
「……え?」

了平が京子とハルを遠ざける。
様子のおかしなスクアーロに全員が身構えたとき、ふと落とされた獄寺の疑問に、綱吉は目の前のスクアーロをまじまじと見詰めた。
言われてみれば、いつもよりも少し、背が高い、よう、な……?
山本が、時雨金時を構え、距離を取ったところで、スクアーロが俯いていた顔を上げて、口を開いた。

『ちっ、上手く避けやがったかぁ!!』

地を這うような低い声……。
紛れもない、男の声が、そう言った。

「スクアーロ、じゃ、ない!?」
「誰なのな!?なんでスクアーロと同じ格好して……!!」
『あ゙あ!?同じ格好してんのはあっちの方だぁ!!勝手に人の名前名乗りやがってクソがぁ!!』
「勝手に……、って、そんな、まさかっ!!」

全員の脳裏に、未来の戦いの最中、白蘭が話していた言葉が蘇る。

――他の世界のスペルビ・スクアーロは身長180pを越える男……

――みんなを騙して、勝手にスペルビ・スクアーロの位置に入り込んでた偽物

目の前に立つ男の正体を、綱吉が絞り出すような声で、言い当てた。

「この世界に存在するはずだった……本物の、スペルビ・スクアーロ!?」

左手に直接括り付けられた、大剣が唸りを上げた。
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