群青の鮫_

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「スクちゃんの魂を見付けるなんて言っても……こんなに広いと1つ見付けるのも大変そうねぇ……」
「ム、でも早く見付けないと。とりあえず、そこの階段降りてみようよ」
「地下室には確か……、ワインセラーがあったな」
「見付かると良いんだけど……。あら?ベルちゃん、どうかした?」

地下に向かっていたヴァリアー達は、一番先を行くベルの異変に気が付いた。
一言も話さないまま、黙々と歩いている。

「……マーモン、スクアーロ大丈夫?」
「え?」
「ベッドに寝てたスクアーロ、血の気なくて顔が真っ白だった。スクアーロ、本当に生きてたのかよ……?」
「それは、チェッカーフェイスの言うことを信じる他ないよ……。ねえ、ベル。いつもと様子が違うけど、大丈夫かい?」

マーモンがそう言った瞬間、はたりとベルが立ち止まってしまった。
ベルの顔を覗き込んだマーモンは、驚いてアッと声を上げた。
ベルの顔は、今にも泣き出しそうに口がへの字に曲げられていて、肩もフルフルと震えている。

「ゔ〜!!」
「ベ、ベル!?」
「オレ、スクアーロの様子オカシーの気付いてたし!なのになんで止めなかったんだよ……!!」
「え、え?ベルどうしたの!?」
「ゔぅ〜〜!!」

遂にはしゃがみこんでしまったベルの横で、マーモンがあたふたと慌てている。

「ベルちゃん、こんなに小さい頃からスクちゃんに面倒見てもらってたんだものねぇ。親代わりみたいな所あったし……、不安だったのね〜……」

冷静に分析するルッスーリアだったが、今はこんなことをしている場合ではない。
なんとかベルを立たせて進もうと、マーモンが彼の肩を揺すった時だった。

―― ガッコン
「うあ?」

ベルがしゃがんで寄り掛かった壁の一部が、唐突に凹んだ。
重たい音が鳴り、石壁が動き出す。
人一人が通れるほどの穴が開き、そこでやっと、壁の動きが止まった。

「……しし、隠し部屋?」

すんっと鼻を啜ってベルが言った通り、それは確かに、隠し部屋のようだった。
入ると、自動で蛍光灯が灯る。
その灯りに照されて、部屋のそこら中がキラキラと光を反射した。

「やだ、これってまさか隠し財産!?」
「金銀プラチナ……ルビーにサファイアって、これ売ったら凄い金額になるんじゃないの!?」
「しし……やっぱり王子スゲー。いきなり隠し部屋見付けるとか」
「しかし隠し部屋を見付けた所でスクアーロの魂が見付からなければ何の意味もないぞ?」
「うるせーレヴィ。お前スクアーロのこと嫌いなんだろ?お前いても王子の足手まといだから帰っていーぜ」
「なんだとっ!?」
「まあまあ」

睨み合う二人を、ルッスーリアが諌めた時だった。
マーモンの視界に、何か、宝石とは違う光るものが映った。
見覚えのある、その白銀色は……。

「スクアーロ……!?」

白銀が見えた辺り……部屋の奥の扉に飛んでいき、ドアノブに手を掛け開けたマーモンは、その奥の部屋の景色を見て絶句した。

「こ、これって……!ボスが封印されてた、ボンゴレの地下室じゃない……!?」

松明の柔らかな灯りが、巨大な氷の塊と、その前に立つ白銀色の人影を照らしていた。


 * * *


「骸さん、なんれあんなムカつく奴、助けようとしてるんれす?」
「あーそれ、ミーも気になってましたー。師匠あの人のこと嫌いっぽいのに、なんで助けるんですー?」

足早に屋敷の2階を歩いていた六道骸は、城島犬とフランの質問に鬱陶しそうにしながら答えた。

「簡単なことです。彼女は僕が殺さなければ気が済まない。こんなところで死んでもらっては困るんですよ」
「殺すために助けるとか、師匠性格ネジ曲がってますねー」
「何とでも言いなさい」

そんな3人をやる気の無さそうに眺めるのは、M.Mと柿本千種だ。
二人は骸が行くと言ったから着いてきたのであって、スペルビ・スクアーロの生死に関しては、そこまで興味はないらしい。
そしてそんな二人の後ろには、キョロキョロと忙しなく辺りを見回しているクロームが着いてきている。

「しかし、見付かりませんね。どこに隠れたんだか……」
「隠れるんならやっぱり食堂が良いびょん!!行ってみましょーよ骸しゃん!!」
「食べることしか考えてないんですねー、犬にーさんは。ミーならもっと面白そーなとこがいーですー」
「言ってる側から、面白そうな部屋が見えてきましたよ。遊戯室……入ってみますか」

骸がドアに手を掛け、少し押し開けたその瞬間だった。

「!?」
―― ビッ ドスッ

何か異様な気配を感じ取り、一歩身を引いた骸の脇を、刃をギラつかせてナイフが通り過ぎる。

「骸様っ!!」
「ナイフですか今のー?」
「な、なんらよ今のナイフ!?」
「何の気配も、感じなかったのに……!」
「ちょっと、何がいるのよ、その部屋!?」

キイッと、軋みながらドアが開く。
遊戯室であるはずの、その部屋の向こうに広がる景色を見て、彼らは皆、絶句した。

「これは……!」
「うっ……、スッゲー、臭いびょん……!」

彼らの前には、死骸の山が広がっていた。
血と死骸ばかりのその空間には、何故か壁も天井もなく、サラサラと雨が降っている。
その中央。
彼らの目の前に、見覚えのある姿が立っていた。

「ガット、ネロ……!!」

ヘルメット、長いコート、ゴツいブーツ、皮の手袋。
全てが黒い中で、その首を隠すマフラーだけが赤かった。

「あれが、あの銀髪なの?」
「なんかミーの知ってるスペルビ・スクアーロとは全然違いますけどー」
「間違いようもありません……。あれは、ボンゴレの掃除屋と呼ばれた、幻の殺し屋……。スペルビ・スクアーロの、もう1つの姿です……!!」

ガットネロが、手を振り上げた。


 * * *
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