記念企画部屋2
□茜色の想い達へ 〜呉の藍〜 第二章
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―――― 「あ、千歳戻ってきた!どないしたん?大丈夫かー?」
「……うん、大丈夫。金ちゃん……、」
「なんや?」
「……ううん、何でもなか。」
金ちゃんは、ずっとそのままで居て。
俺はテニスを辞めるから、君の未来を見ることは無いけれど……。
「では第3ゲームを始めます。」
ネットの向こうの桔平は、スッキリした顔をしている。
ああ桔平は、未来に歩き出した。
でも……、
「桔平……、」
妬ましいわけじゃない。
恨みたいわけじゃない。
憎みたいわけじゃない。
ただ切ない。
桔平は、大切なことに気付かないまま、なんだろうか?
そんなの、不動峰の子達があまりにも可哀想だ。
あの子達にしてみれば、俺にだけは可哀想だなんて死んでも言われたくないだろうけれど。
俺にはない未来を、お前はこれからも歩いていく。
ヅクンッ、と強く右目が傷んだ。
憎いわけじゃない。
ただ……。
お前は根本的に、間違っている。
俺と向き合う事がお前の未来じゃない。
お前の未来は、俺じゃない。
俺はもうお前の“過去”でしかない。
昔のような本気で俺と向き合えと、そう言ったのは俺だけれど、そのためにお前は、大切なモノを傷つけた――。
「桔平、」
「何だ?」
「杏が、泣くばい。」
俺に言えるのはこれだけだ。
不動峰の子が可哀想だなんて俺には言えない。
不動峰の子達のプライドのためにも、何より、四天宝寺の皆に申し訳なさすぎる。
『杏』は桔平の“大切な人”の代表だ。
これでも気づけなかったら、本当に馬鹿だ――。