記念企画部屋2
□さようなら神様
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神様なら、いつだって傍に居た。
人のフリをした神様は、ずっと俺達の傍に居た。
だから俺は、神様が、空の向こうまで連れて行ってくれるって、1度も疑ったことなんか無かった―――。
例えば、青学の手塚が腕をやっちまったとか、獅子楽の千歳が、目をやっちまったとか。そんな話は、昨年度、なぜかやたら多く耳にした。
それでも俺は、微塵も不安なんて感じてなかった。
だって立海には神様が居る。
勝てないはずがない。
頂点は、『神様の居るべき場所』だ。
俺達はすでに主の定まっているその場所に、そのことをもう1度確認しに行くだけの事だ。
敗ける恐怖を感じたことは、もうずっと無かった。
俺自身の力にも自信はあるし、何より万が一俺が敗けたとしても、立海は敗けない。
神様が必ず、勝たせてくれる―――。
―――― それがただの錯覚であると知った時、忘れていた感覚が蘇ってきた。
身体が震えて、喉が震えて、手が、震えて、
空を見上げた自分の瞳から涙が伝った時、この感情の名前を思い出す。
これは、恐怖だ。
怖い、という言葉を、思い出す。
その響きをではなく、それがどういう事かを、身体が、感情が、思い出した。
「丸井はホント、直情型じゃの。」
ふと、そんな声がかかる。
声の主は、ポーカーフェイスの大嘘吐き。
「お前学校は?」
「気分じゃない。」
「そ。」
お互い様だ。
「…………幸村君てさぁ、神様じゃなかったんだな……。」
「そうじゃの。けど……、」
「けど、なんだよ。」
「幸村は、神様になりたかったんじゃろ――。」