記念企画部屋2
□想いが重なるその前に
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『君の目に映る青空が……』と、唱うそれを聴いて、泣きたくなって、目を閉じた。
大会の時、あの人はずっと蒼の空を見ていた。
もう飛べないと知っている空を。
どんな夢見てたんですか?と訊いた時、蒼い空の夢と言った。
千歳先輩は最近真面目に学校に来る。
どうしてかなんて訊いたことは無いけどきっと……。
『ねぇ、いつか君は、僕のことを、』
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図書室に、鍵をかけた。
場所が場所だけに、そんなにしっかりはしてないなりに防音になっているから、外に声が漏れることは無い。
「なんで皆に言わんのですか?左目も、悪くなってくって。」
「…………そぎゃんこつ、言わんでももう、何となく気づいとうばい。」
金ちゃん以外は、と優しく微笑う。
「……なら、質問変えます。なんで俺には話したんですか?」
「うん、ごめん。」
「……謝れって言うてるんやなくて。」
白石部長にだけ話した、でも、遠山にだけ話したでも納得しただろう。
部長は部長だったし、遠山は多分、この人の夢のひとつだ。
あるいは、師範にだけ話した、でも、副部長にだけ話したでも、何となく納得出来たと思う。
どうして俺だったのか、まるで解らない。
ポツリと、落とすように、応えはあった。
「慰めも励ましも欲しくはなかったけど、片手に乗せられるくらい少しだけの優しさは、欲しかったから。」
方言ではなく言われたそれは、だから千歳先輩の言葉じゃないみたいだった。
あるいは、そう聞こえるように、意識的に方言を排除したのかもしれなかった。
でも何となく、言いたいことは、解った。