短編2
□空の彼方に
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目の検査を終えて、とりあえず全国までは持ちそうだとホッとしつつ大学病院の中庭をふと見ると、青空の下に10歳くらいの男の子がぼんやりと座っていた。
夏の炎天下なので何となく気になった。
目がよくないから自信はないが、周囲に両親、というか大人は見当たらないように見えたから。
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「何しとっとか訊いてもよか?」
「べつに……。」
そう言ったその男の子はパジャマに近いラフな格好だからおそらく通院ではなく入院患者だ。
男の子は本当に、何もしていなかった。
ただぼんやりとしていた。
「好きなこつ、出来んくなったと?」
ビクンッ!と文字通り、まだ小さな身体ごと跳ね上がった。
ゆうるりと、初めてこちらを向いた瞳が、悲しみに濡れていた。
だからただ、抱きしめた。
「泣いてよかよ。何にも訊かんけん。原因も、何が出来んくなったんかも、何も訊かんよ」
諦めるために言葉にしたら、
何故だろう。
大好きなことはもっと諦められなくなる。
俺もそうだったから。
だから独りで居たんだろう?
誰にも、解ったフリなんかしてほしくない。
同情なんてされたくもない。
愛情すらもただ悲しくなるほどの、絶望……。
でも本当は、
「大丈夫たい。俺とは多分もう二度と会わんよ。名前も訊かん。だから、ここで泣いても、泣いてないのと同じばい」
本当は、独りになるのは怖かった。
絶望に押し潰されそうで。
「お兄ちゃん、も?」
「ん?」
「お兄ちゃんも、大好きなこと、できんくなったん?」
もう声は震えていた。
「…………うん。」
出来なくなるよ。もうすぐ。