短編2

□絵本の中の天使達
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「そんなにいい子になりたかったですか」

木手に言われた途端、千歳は呼吸の仕方を忘れた。


自分の1番汚い、醜い部分を言い当てられた気がして。


あの日から毎日、同じ夢を見る。


杏ちゃんが、不動峰の子達が、

桔平が、

白石が、謙也が、財前が、言う。


責めるように見つめて。

『そんなにいい子になりたかったか』



*******



「よう。おはようさん千歳! ……ってなんやお前具合悪いんか?」


「…ん、そげんこつなかよ。おはよ謙也」

千歳は微笑ったが、謙也は眉を寄せた。

「自分らそんなとこで何してるん?」

入り込んできた声は白石だった。

「なんでんなかよ。おはよ白石。」

「……おはようさん。……で、保健室と図書室とどっちがええ?千歳。」

「え?」

白石は溜め息混じりに千歳を見つめて言った。

「今のお前、めっちゃ具合悪そうやで。」

謙也と顔を見合わせて頷いた。
二人ともがそう感じるのなら、間違いない。

「今日やと人が来んのは図書室やな」

自己完結して納得すると、白石と謙也は無理矢理千歳を連れて図書室に駆け込んだ。




*******


「おいおい財前、お前こんなとこで何してんねん。」

「何って1限サボりッスわ」

図書室の先客は平然と言ってのけて、千歳を見て深い溜め息をひとつ。


「ちょっと。なんなんですか。何でアンタそんな奈落に堕ちてるん。」


「財前、何言うとっと?」


「なんなんその顔色。ちゅうても、身体の具合悪かったらアンタわざわざ学校来る人やないやろ。だから保健室やなくてここに連れてきたんやろ」

言葉の前半は千歳に。後半は白石と謙也に。
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