短編2
□絵本の中の天使達
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「そんなにいい子になりたかったですか」
木手に言われた途端、千歳は呼吸の仕方を忘れた。
自分の1番汚い、醜い部分を言い当てられた気がして。
あの日から毎日、同じ夢を見る。
杏ちゃんが、不動峰の子達が、
桔平が、
白石が、謙也が、財前が、言う。
責めるように見つめて。
『そんなにいい子になりたかったか』
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「よう。おはようさん千歳! ……ってなんやお前具合悪いんか?」
「…ん、そげんこつなかよ。おはよ謙也」
千歳は微笑ったが、謙也は眉を寄せた。
「自分らそんなとこで何してるん?」
入り込んできた声は白石だった。
「なんでんなかよ。おはよ白石。」
「……おはようさん。……で、保健室と図書室とどっちがええ?千歳。」
「え?」
白石は溜め息混じりに千歳を見つめて言った。
「今のお前、めっちゃ具合悪そうやで。」
謙也と顔を見合わせて頷いた。
二人ともがそう感じるのなら、間違いない。
「今日やと人が来んのは図書室やな」
自己完結して納得すると、白石と謙也は無理矢理千歳を連れて図書室に駆け込んだ。
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「おいおい財前、お前こんなとこで何してんねん。」
「何って1限サボりッスわ」
図書室の先客は平然と言ってのけて、千歳を見て深い溜め息をひとつ。
「ちょっと。なんなんですか。何でアンタそんな奈落に堕ちてるん。」
「財前、何言うとっと?」
「なんなんその顔色。ちゅうても、身体の具合悪かったらアンタわざわざ学校来る人やないやろ。だから保健室やなくてここに連れてきたんやろ」
言葉の前半は千歳に。後半は白石と謙也に。