記念企画部屋
□遥か、蒼の夢に 第三章
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「おや、テニスを続けていたんですね」
熊本のモノとも違うこの訛りを、千歳は覚えていた。
「木手」
沖縄は九州と予選を同じくするので、去年までは獅子楽がことごとく比嘉の全国大会出場を拒んできた。
だが。
「比嘉優勝したとやろ」
「ええ、貴方達の居ないチームに勝つくらい造作もないこと。」
「やろうね……。」
そうとしか応えようがなくて、それで会話を終わらせた。
*******
全国大会の二回戦には『注目のカード』があった。
獅子楽vs氷帝。
昨年の成績は獅子楽ベスト4、氷帝16で、獅子楽が上に来るが、今年の関東・九州は波乱が続き、両校共不本意な成績になっている。
殊に氷帝に至っては実力で勝ち取った出場ですらない。
他校の試合は基本あまり興味がない千歳も、この試合は別だった。
四天宝寺とは、この試合の勝者が直接当たるわけではなく、この試合の勝者vs青学戦の勝者が、四天宝寺vs不動峰の勝者と当たるため、他の皆は今日は練習しているが、渡邊が千歳には観戦に行ってこいと言った。
適わないと思いつつ、感謝した。
流石に氷帝の試合は人数が多い。
「千歳だ」
「千歳?うわ、マジだぜ」
「見に来たんだな」
「テニス続けるんなら千歳ってなんで転校したんだ?」
この長身はこういう時本当に不便だ。
とくに目立つつもりがなくても勝手に見つけられてしまう。
「っておい!向こうに橘も居るぜ!!」
ざわめきの中から聞こえた声に従って、ギャラリーの視線の流れに沿って目を向けると、金色が見えた。
この距離では顔は見えないが。
それはどうやら近づいてきて、すぐに隣に来た。