小説

□道化師と貴公子の思い出作り
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身も凍える寒さの冬。
この季節になると、普段昼でも夜のような暗黒城も、雪で真っ白に染められる。


そんな中、暗黒城のバルコニーでは、いつものトレードマークであるスカーフの代わりに同じ色のマフラーを首に巻き、震える体を両手で擦りながら、降る雪をただ眺めているミスターLがいた。
その隣には、相変わらず鬱陶しくくっついているディメーンの姿が。

二人は互いに一言も喋らず、空から降ってくる雪をただ眺めていた。


マフラーという防寒だけでずっと冷たい風に晒されていたミスターLの体は、もはや氷のように冷えきっていた。
擦っていた手を更に上下に速く動かし、必死に体を暖めていると、ふと隣が静かなことに気が付いた。


こんなに雪が降るくらいの寒い冬、ましてやその外風にずっと晒されているのだから、少しくらい奴だって寒がってる筈だ!
そう思い、ミスターLは視線を隣に移した。


そこには自分とは違い、平気そうな顔をして座っているディメーン。
何でコイツは平気そうなんだ?と頭でぐるぐる考えていたので、ミスターLはその体勢のまま自然とディメーンをガン見する形になった。


そんな隣からの視線に気付き、ディメーンが此方を向いた。

「そんなにボクを見つめてどうしたんだい?エリリン。まさかボクにみとれt」

「んな訳あるか!」
ディメーンの言葉は直ぐに遮られた。

「俺はこんなに寒ぃのに、お前は平気そうだからちょっと不思議に思ってな…」

「んっふっふ!これくらい大したことないさ♪だってボクは魅惑の道化師だからね♪」

「へーへー……ハァ〜」


予想通りの答えが帰ってきたので、ミスターLは呆れて溜め息をついた。
彼の口から出た息はやがて空中で広がり白い世界に消えていった。








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