軌跡の先で…
□1.旧校舎のディアボロス
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ユーリヤを除くキリエの弟子達は上級悪魔の眷属になっているか、"漆黒の騎士団"の構成員となって生活を送っている。
たまにこうして孤児院に帰っているキリエ達の楽しみは娘のように思っている"姫島朱乃"からの手紙である。
場所を特定されないように同じところから送らないが手紙に同封させてある転移符でこの孤児院に返事の手紙を送らせているのだ。
そんな手紙をキリエはリオから受け取り入れたばかりのコーヒーを飲みながら読んでいく。
『・・・・・なるほど』
リオ「朱乃からはなんて?」
『いつも通り"体調を崩していないか?"とか"こちらは元気です"と言ったところか』
ルドナー「あまり変わらないわね」
『いや、そうとも言えない』
キリエは眉間にしわを寄せながらルドナーの言葉を否定した。
ルドナー「どういうこと?」
『ここの行を読んでみてくれ』
こう言うと気になる行を指で指し示しながら手紙を差し出した。
そこには、
リオ「なになに、"以前書かせていただいた兵藤昴さんの事なのですが、偶然だと思い前回の手紙に書きませんでしたが彼女、フェリ姉様と同じ剣術を使っているのを見たことがあるのです"ってこれって!?」
『おそらく考えている通りだろう』
ルドナー「私たちの世界のキリエの血族が転生している、か。
この考えが本当ならどうする気なの、我が騎士キリエ・リンベルト」
ルドナーがいつもの態度を一変させるとともに子犬モードから1mほどの大きさの狼モードに変わり己の契約者であるキリエに問いかけた。
それにキリエはルドナーの前で片膝を着き、
『もしそうならば私は会いに行こうと思います。
転生していたとはいえまだ完成されていない我が一族の剣、別の世界といえどそんな醜態(しゅうたい)晒したくありません。
我が王よ、もしかの者が敵として貴女の前に現れるなら私は迷いなく斬り捨てましょう。
ゆえに私情での行動をお許しください』
キリエは普段の無気力な態度とは違う、世界のバランサーであるフレイムヘイズとして、そして騎士として敬愛している主である戦友にそう答えた。
ルドナー「…ふぅ〜、許可するよ。
でも無茶だけはしないでね、貴女すぐ無茶するんだから」
リオ「そうだね、この前も内緒で悪魔が人身売買してる取引を強引に中止させたし」
『グッ、あれはたしかに悪かったと思うが…』
リオ「まあそれは置いといて、とりあえず手紙の返事でも書きましょう。
ついでに写真も入れて。」
ルドナー「そうね、また朱乃をここに連れて来ないといけないから丁度いいかもね。
返事を書いたらみんなと一緒に写真を撮りましょう」
『やれやれ、面倒だが了承した。
ユーリに説明して来るから手紙の返事頼むぞ』
リオ「了解〜、と言っても今回は私の担当だから当たり前か」
そんな会話をしながらキリエはユーリヤの元に向かい、リオ達は手紙の返事を書くのだった。
返事を書き終えた後、孤児院をバックに移した全員で撮った写真が朱乃の手紙に同封され郵送されるのであった。
そんな平和な刹那(日常)が終わりが近づいているのをキリエ達は長年の経験から感じながら過ごすのだった・・・・・
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