RKRN短編&SS&シリーズ

□追いかけたその先に待っていたのは
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俺には一つ上で幼馴染の綾が居る。
綾はくノたまには入学せず、この男だらけの忍術学園に入学した。

戦術は得意で、誰にも負けないほど強い。
一つ下の俺は綾の背中を見ているしか出来ない。


そう、距離が幼馴染から縮まらない。
追いかけても、綾は一つ前に行く。

その距離がなくなればいい。俺は綾が好き。
でも、綾にとって俺は“弟”みたいなもので。



恋愛対象にされてない。好きと言っても、軽く流されてしまう。『ありがとう』のその一言で――――。




『兵太夫!また、誰かをカラクリで落と締める気?』

俺がカラクリを作っていると、五年の長屋に綾が来た。

「――そうだけど?“誰か”じゃなくて俺は綾を落としたいけど?」

『残念!そんな簡単には落ちませんから!』

と俺の頭を撫でる。

――ちッ…上から目線。

そんな顔も堪らないんだけど。

「何しに来たんだ?」

『別に、兵太夫に逢いに来ただけ。なんの理由もないよ』

俺の隣に腰掛ける。

「そうか……」

作業をしたまま、呟いた。
正直、嬉しい。




ちょっと沈黙。
綾は喋り上手で話が絶えないのだが、今日は様子がおかしい。



「どうしたんだ?」


作業を止めて、綾を見ると少し表情が暗い。

『明日から…ちょっと危険な任務に就くの――』

そう呟いた唇が少し震えていた。

「…………!」

『だから、目の保養に兵太夫に逢いに来た。』

さっき、理由がないって言ってたくせに…。

無理に笑う顔が俺には苦しかった。
もしかしたら、このまま帰って来ないかもしれない。

そう考えてしまう。

「大丈夫!綾は強い!………」

俺も無理に勇気付けてるような気がする。うまく笑えてる?

すると、あまり甘えない綾が俺に胸板にしがみ付いた。

―ぎゅ

『………このまま、兵太夫に逢えなくなると思うと…泣けてきたッ』

と、反笑いで鼻を啜る音が聞こえる。
俺は力いっぱい綾を抱きしめる。

「大丈夫、何かあったら…俺が助けにいくから。」

『馬鹿ね、そんな簡単な任務じゃないの…』

「それでもいい。綾を助けたい。護りたいんだ!」

『!!…………兵太夫』

声を少し荒げてしまった。
でも、俺はこんなに綾を想ってる。

「好きなんだ、幼い頃から…十四年間ずっと」

いま、この事を言っても良いのか分からないけど、今まで溜まっていた想いを吐きだす。

『!!………』

「でも、お前は…俺を“弟分”でしか見てない…」

今の俺…情けない顔してる。

「どうしたら、綾に追いつける…どうしたら、綾を俺のものにできる?」

『兵太夫……うれしい。ありがとう。』

俺の腕の中でそう呟く、いつもの言葉。
やっぱり、綾は落とせないのか…。

綾は俺から身体を離す。

『あたしも兵太夫のこと好きだよ?』

「??………それは幼馴染としてだろ?」

『違う。…異性として』

嘘だ。今までなんで……拒否してた?

『隠してた。兵太夫を好きなこと…』

「なんで、そんなことしたんだよ」

『だって、あたし年上だし…兵太夫には同年か年下が良いかと思って…』

「馬鹿言うな!俺は綾がいい。綾じゃなきゃ…嫌だ」

また、力強く抱きしめる。

『我儘な子ね……兵太夫は』

「悪かったな!我儘で――」

『でも、そういう所も好きよ?』

綾は顔を上げると俺の唇に綾の唇を重ねた。

「!!………////」

俺が赤くなってどうすんだよ…///
でも、綾と口付けできて嬉しいや。

『……気持ちが伝えられてよかった』

「俺も…」

『明日から、三日間任務だから。帰り待っててくれる?』

「ああ、いつでも待ってる」

『ありがとう、兵太夫――』



もう一回、俺たちは口付けた。





追いかけたその先に待っていたのは

(――兵太夫)
(綾…――おかえり)
(ただいま――)



2011.10.24

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