I love your song

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あれから一週間。音也と名前の関係はギクシャクもせず、名前の音也に対してのウザい絡みもなくなることもなかった。みんなは何も気づくことはなく。ごく普通の幼馴染に戻ることができたのだ。



「真斗が受ける、舞台のオーディション練習に付き合えと…?」


「うん!手伝って!!抱擁ができないらしくて困ってるんだ!…ね?いいでしょ?」


両手を合わせて頼み込む。


「んー。今日はオフだからいいけど…。ま!玄関開けたままだとイケないから中入ってて!準備する」


「サンキュー名前!!」


―ガチャン


音也は玄関を閉めた。




「真斗が抱擁できないって…どういうこと?…」


鏡の前で髪を整えながら音也に話しかける。


「真斗にもいろいろあるみたい…ι」


困ったように言い返す。


「ふ〜ん。簡単なことなのに―――ねッ…ぬ〜脱げない!!」


スタスタと歩き、クローゼットを開けて着る服を見つけると寝巻を脱ぎ出した。


「ちょッ!!名前、目の前で脱がないでよ///」


音也はあわてて顔を手で覆う


「思春期の少年か!!あたしの裸何度も見たくせに…今頃何を言う音也よ。」


と言いつつ脱ぐ脱ぐ脱ぐ。


「うわあああああ////」


「かわいい音也。……ふふ」


その様子を見て名前は笑う。
服を着終わるとウィッグに櫛を通し整える。


「そういえば、名前の姿久しぶりに見た………」


「ああ…そうだね。芸名の姿だったもんね今まで。」


長く綺麗なストレートヘアに少し見とれた。


「2年前より伸びてるね……」


そっと名前に近づくと音也は名前の髪に触れた。


「そうだよ…2年も伸ばしてんだもん!伸びるよ〜音也どうしたの?ふふ」


当たり前のことを言う音也に名前は可笑しくて笑う


「………なんか、名前を遠く感じてきたなって………」


少し悲しい瞳に名前はニコっと笑って見せた。


「何言ってんの?あたしたちは幼馴染!これだけは変えられない事実だよ?あたしは音也のこと大好きだし。遠く感じない。寧ろ近過ぎww」


そう言うと音也の頬に触れる。


「あたしにとって大切な人だよ……ね?そんな悲しい顔しないでよ!笑って!音也は笑顔が一番なんだからさ!!」


「名前………うん!俺たちはずっと幼馴染だよね!誰よりも一番近い存在だよね!」


そう言うとニコっと笑った。


「あたりまえだよ〜もう。……真斗待たせてるんでしょ早く………あ!」


「ど、どうしたの!?」


名前は何を考えたのかニヤリと笑った。


「真斗には好きな人いないの?」


芸名のウィッグを被りながら音也に聞く


「んー。七海かな?」


「七海?あの〜音也たちの作曲家さん?可愛い子だ」


「そう言えば話したことないんだね。顔は合わせたけど。」


「んー…なるほど。そうかそうか…真斗の想い人は七海ちゃん」


頭にインプットする。


「七海がどうかしたの?」


「いいこと思いついたの!よし!行こう…メイク室!」


音也の腕を引き名前はいつものメイク室に行った。

















「あら?メイクしてない……あ!それは私の仕事だわ☆」


メイク室にはいつものようにコウが居る。名前は衣装を見ながらコウに言う。


「ねね。七海春歌ちゃん知ってる?」


「ええ〜知ってるわよ!新人作曲家さんでしょ?可愛いわよね〜☆」


「ええ〜…コウちゃんあたしは〜??」


名前はムッとした表情でコウを睨む。


「あら!もちろん名前ちゃんもベリベリキュートよ☆」


「うれしい〜コウちゃん大好き!!」




二人のやりとりを音也はポカーンと見ていた。


「名前ってこういうキャラしてたっけ?」



「でね!その七海春歌ちゃんの格好したいんだけど…ウィッグとかある?」


「探せばあるわよ!なんでも揃ってるんだから」







似たようなものを探して名前は七海に変身した。





「おおおおおおお!!!」


「ゴホンッ……んん……お、音也くん……どうかな?」


声も七海の声に変えてみた。名前はものまねが得意分野である。前にHAYATOのものまねをしてトキヤに殴られたこともあった。


「すごいよ!!名前!!ものすごい似てる!七海だよ!!」


きらきらした瞳で名前を見る。


「ありがとうございます………そ、そんなに見ないでください。恥ずかしいです///」


仕草も七海に似つかせる。さすが名前である。



「それでは行ってくるね!ありがとうコウちゃん!ちゅッ」


名前はコウに投げキッスをすると音也とその場を後にした。













「ほんと似すぎて………」


「あははwwwどーだ!あたしの完成度はwww」


腕を腰に当て豪快に笑う。


「そんなんことは七海しないけどι」


「ゴホンッ………んんんんっ!!あ〜あ。はい!そうですよね……」


七海の声に戻す。





真斗たちが居る部屋に着いた。


―ガチャ


「マサの練習相手連れてきたよ〜!!」


元気よく入る音也。名前は少し遅めに窺うように入る。


「!!おはようございます!…みなさんも聖川さんの練習に?」


「おう!おはよう七海!!」


翔が名前とは気づかず挨拶を交わした。名前の近くに来ると……


「ん?………」


翔が何かに気付いた。


「どうしたんですか?翔くん………」


「お前……背が伸びたか?」


「「「煤I!!???………」」」


そう言うとみんな名前を見る。翔と並んでみると目線が翔より少し見下ろす形になっている。


「え?………昨日、牛乳飲んだからですかね…(やばいwwwwやばいwww身長まで考えてなかったwwwwwあたし、翔より1p高いんだったwwww)」


「本当ですね〜翔ちゃんよりハルちゃん少し高いです!!」


「あはは…………さあ!聖川さんの練習しましょう!!台本貸してください」


「「「……………(おかしい…)」」」


「…(みんなだまされてるwwwククッ……これもまたおもしろいwww)」


音也は笑う。
名前は台本を借りるとものすごい目つきでセリフを読み始めた。


「はい!覚えました!!やりましょう!聖川さん」


「「はやッ!!!!!!!」」


「あた…わたし!セリフ覚えが得意なんです!!」


するとトキヤが着ていた着物を借り名前は急いで着替えた。


「おおお!ハルちゃん似合ってます☆」


「そ、そうですか!ありがとうございます」


微笑むとみな名前の笑顔に見とれた。











「………………お慕い申しておりました………」


「よせ…。俺など、お前の想いに応えられる男ではない――」


「されど!!どうしてあなた様なのでしょうか…………気なんに赴くままです――」





名前の演技にみな驚く。


「七海こんなことまでできたのか……」


「さあ!そのまま娘をギュッと抱擁だ!!」






「ぅう…………ι」


真斗は動かなかった。


「何をしてるんですか?聖川さん………」


「すまん……七海」


「はぁ…………もう一度いきましょう!」






何回も練習するものの抱擁しそうになるが中々出来ずにいた。すると名前は真斗の耳元で囁く。


「さあ………わたしもギュッとしてください。聖川さん」


「な、七海!!…………///」


いつもの雰囲気と違う七海に真斗は違和感を覚えた。


「もう……教えてあげます。こうするんです!!優しく……包み込むように――」


名前は真斗をギュッと優しく抱きしめた。その逆の行動にみんなポカーンと見つめる。


「なッ!!!…………」


「わかりましたか?」


そっと体を離す。


「さあ!もう一回です」








それから沢山練習をしてやっと抱擁ができるようになった真斗。


「これで主演のオーディションは大丈夫ですね!!」


名前は着物を脱ぎ服装を整える。


「ありがとう。」


「いえいえ!とんでもい!真斗が主演じゃなきゃ面白くないよこの舞台…あ!」


名前の聖川さんからの真斗呼びにみんな引っ掛かった。


「今、七海…聖川のこと真斗って言ったよな…。「あ!」って言ったし。」


「しかも、呼び捨て………」


名前もそれに今気づいたらしくーーー


「ああ!!ごめんなさい……呼び捨てしてしまって。しかも名前でなんて……」

(やらかしたよwwwwもう、バレる!!)


「まあ……別にかまわんが。完璧な演技だったぞ。リョウ」


「煤I!!???……………え」



真斗の意外な人物の名前が出てきて音也以外皆、驚く。


「うぇッ!!芸名!!………ここに居る七海が?」


「バレてはしょうがねぇな…………そうだよ。七海のマネしてた」


声も変え芸名の声に戻す名前。


「なにか雰囲気違うと思ったら、あなたでしたか芸名。」


トキヤは溜息混じりに応える。


「がんばって演じてたんだけどな!――ちょっと誤算だったのは翔と並んでしまったことだな!あははwwww翔より俺、背が高いんだったwwwww」


豪快に笑いだす。


「笑うな!!!!!お前も男のくせに160p代とか小さいんだよ!!」


「うるせぇよ!!チビ!!」


「お前もチビだろ!!!」


七海の姿で翔と喧嘩する名前。七海にそっくりなためあまり気持ちのいいものではなかった。


「レディーの姿で喧嘩しないでくれる?ボーイ」


「無理!!今、気に入ってるから七海の変装。」


そう言っているとセシルと七海と先輩方が入ってきた。名前は目が点になる。


「煤I?…………………(あなたたち(先輩組)仕事では?)」













つづく。


2013.06.18

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