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□とまどい
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塾生とクラスが別。
確かにそうなのだが、体育は隣のクラスと合同なのを先程知った。
隣のクラスには塾生、志摩くんがいる。
理事長め、クラス離してくれたらいいのに。

塾生が一緒だと力の出し方をどうするか悩む。
気を抜かずやれば女子はもちろん、男子より体力もスピードもある。
だが、それでは目立ってしまう。
学生生活は目立たず静かに過ごしたいのに。

かと言って気を抜けば絶対失敗する。
そんな姿、塾生には見せられない。


体育の先生がドッヂボールをします、と告げた。
ドッヂボール。
外野でいれば力の入れ具合なんて気にしなくて済む。
素敵な球技じゃないか。

先生が決めたチーム分けで、私は志摩くんと一緒になった。
さっきまで遠くにいた志摩くんが、いつの間にか横に立っていた。
 


「体操服姿もかいらしなあ。
 結衣ちゃんと同じチームで
 めちゃ嬉しいわあ」

『そうですか...』

「俺が守ったるからまかしてや!」



守る、か。



『私、外野行くんで。大丈夫です』

「あれ、外野もう決まっとるみたいやで」

『うそっ!?』



まわりを見てみると、枠の外側に既に外野の人が立っていた。
いつの間に。



「さっき、せんせが勝手に決めてたで」



心の中の問いに志摩くんが答える。
外野行きたかったのに...
いや、でもさっさとボールに当たれば行けるのか。

そんなことを考えていると、志摩くんが女の子達に名前を呼ばれた。
ごめんな、
と言ってその子達の方へ行く。



「俺が守るやん」



そう聞こえてきたのは、少ししてからだった。
あぁ、こういう人のことを女たらしっていうんだな。
守るって言葉に意味なんてないんだ。




 
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