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□とまどい
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朝、聖十字学園の自分の教室へ向かう。
ここが塾でないとはいえ、塾生に対して昨日と態度を変えるのは変だし、先生という立場上、失敗は見られたくない。
塾生と接するときだけ、塾と同じ様にしようと決めていた。

クラスには塾の生徒がいないので、多少気を抜いていられる。



「あれっ」



教室の扉に手を掛けたところで、後ろから声がした。
振り向くと志摩くんがいた。



「おはよ。なんや、学生やったんやな。
 制服よぉ似合ぉとるね。
 クラスここなん?俺、隣やわ」

『...おはようございます』

「よろしゅうな、結衣ちゃん」

『え?』



結衣ちゃん?
いきなり下の名前を呼ばれ、どう反応すればいいのか戸惑っていると、予鈴が鳴った。
 


「ほな、またな」

『あ、はい...』



ここは塾じゃないんだし、先生もおかしいか。
かと言って親しくないのに下の名前で呼ばれるのも...

ふと、昨日のことを思い出した。
志摩くんは女の子をデートに誘っていた。
つまり、志摩くんはそういう人なのだ。
名前の呼び方など気にしないのだろう。
私も気にしないでおこう。




 
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