もののけ姫

□一新紀元
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「アシタカ様ー!」

「おトキさんか!みんな無事かっ。」

爆音の中で突然聞こえた声に顔を上げれば城塞から顔を出すトキやタタラ場の女達。
廓からトキが言うにはタタラ中の男達が居ない留守を狙いもめていた侍達が乗っ取ろうと
攻めて来たが女達が持たされた石火矢銃で応戦している最中だと。

「エボシ殿は。」

「動ける男はみんな連れてシシ神退治に
行っちまってる、こう囲まれては知らせようが無くてさっ!」

「シシ神退治?やはりさっきの音は・・・。」

丘で聞いた爆破音はエボシが森に向かった事を知る。エボシにこの事態を知らせに行く事を
アシタカは決心する、女達だけではいつまで耐えられるかは分からずシシ神退治をやめさせる事も
一時的かも知れないが出来るだろう。呼びに行く事を伝え甲六から弓矢を受け取った。

「アシタカ様!その子はどうするんだいっ。」

「連れて行く、ここでは追手が多く1人にするには危険だ。」

タタラ場に入れればトキ達に預けアシタカ1人で行くが全体を侍に囲まれている為
連れて行く方がまだ安全と考えた。船が湖を渡り矢を放ちながら近づいて来た、ヤックルに跨り
トキ達と一端別れを告げて森へと急ぐと高らかに矢が撃たれた合図が武装した騎馬が追って来る。
向かう先に何やら黒い煙がのぼっている、風向きが変われば強烈な異臭に思わずアシタカが
ヤックルを止める。

「酷い臭い。」

「生き物の焼ける臭いだ。」

鼻を塞ぎ黒煙の方を見ていた束の間に後方から1つの矢がヤックルの足に突き刺さり崩れ
丘から転げ落ちる。急いでヤックルに近付けば立ち上がろうともがくが痛みから
うまく立ち上がれずにいた、アシタカはヤックルの足に突き刺さる矢を引き抜きその矢を
こちらに向かい来る侍に射るが鎧に弾かれる。右腕の痣が色濃く浮かび上がり指まで広がり
呪いの力か追って来た侍をあっと言う間に倒してしまう、傷付いたヤックルを連れて
黒い煙の方へと向かいました。

丘を登り全貌が現れれば目を覆いたくなるような酷い有様、血と炎でどす黒くなった地面に
折り重なるように横たわる無数の猪の屍。進んで行けば並べられたタタラ場の人間の死体に
麦藁が覆われている死屍累々という悲惨な状況だった。遺体の近くでしゃがみ込み震えている男を
見つけアシタカは坂を滑り降り近付くが環境庁長官とヤックルはその場で待つ事にしたが吐き気すら
感じる強烈過ぎる光景にヤックルに顔を押しあてる、不意に思い出したかのように射ぬかれた
ヤックルの足に布を引き裂ききつく縛った。遺体を掘り起こしていた男達もアシタカに気付き
出てくれば唐傘との言い争いに振り返ればアシタカが突然何処かに向かう後ろ姿が見え
ヤックルを連れ後を追ってみれば猪の屍に挟まれもがいている山犬を助け出そうと猪の
屍押し上げていた。

「旦那、何を。」

山犬が生きていた事に驚いた男は他の者を呼び寄せるがアシタカが助け出そうとしている事に
驚いているようだ。全員が唖然としている中で押し退けて出て来た唐傘が険しい表情で問うた。

「小僧、何をしているっ!」

「この者に案内を頼むのだ、私がエボシを呼びに行く。」

「さては魔性の類かっ。」

山犬を助けようとする行動に男は仕込み傘が吹き矢に変わりアシタカ目掛けて針を飛ばす。
アシタカは避けると針は首横に突き刺さるがたった1人で巨大な猪を背負うように持ち上げるには
重過ぎ、少しでも気を抜けば体勢を崩してしまうだろう。

「シシ神の首とタタラ場とどちらが大切なのだ。」

「毒針だ!」

「おやめ下さいっ!アシタカ様は皆を助けようとしているのです!」
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