もののけ姫

□創業守成
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この子をどうしようかと寝転がりながら外を見ると通りから最初に環境庁長官が立っていた場所で
炉を同じように見上げている話しの源のアシタカの姿、環境庁長官はと言うと戸の方に背を向けている
せいでアシタカがいる事に気付いていない保護者を見つけたトキは立ち上がると未だに話し続ける
環境庁長官の手を掴み立ち上がらせて出口の方に背を押しながら歩かせる、急にどうしたのか分からず
後ろに立つトキに振り返りながら見た。

「えっ、おトキさん?まだ他にも御話はあるんです・・・あ!アシタカ様!」

前を向けば一端迎えに来たアシタカに気付き環境庁長官は駆け寄った。

「ここの人達に迷惑などかけなかったか。」

「ま、アシタカ様ったら私は子供ではないですよ。」

迎えに来て最初に言ったアシタカの戯れの言葉に少しだけ心外と言うような顔で
ふざけてむくれて見せるでもちゃんと分かっていての反応、直ぐに可笑しくなり
むくれっ面は笑顔に変わりくすくすと笑う。

「で、旅人さんは仕事場を見に来なさったの?」

「いや、これからエボシ殿の所に。また後で来ます。」

男達のいた小屋から話しを聞き終えたアシタカは一端このタタラを踏んで鉄を造っている
場所に来たのは環境庁長官を迎えに来ただけでエボシの所に行くようだ。

「そんじゃさっさとこの子を連れてお行きよ、色男さん。」

ふざけているのか意地悪そうにほくそ笑みながらグイッと環境庁長官を外に出すように押し出す、
本当に何か迷惑をかけていたのかと分からない環境庁長官は首をかしげる、ひたすらに耳が痛くなるほどの
アシタカの話をしていた事のせいで半ば追い出されるようになっている事に気付いていなかった。
軽くあしらわれるようにアシタカを見ながらトキはからかうように色男と言った、何でそんな
事を言われたのか経緯が掴めなかったが理由を教えてくれないトキはエボシが今いる場所を
教えてくれた、場所を聞いた2人はその場所に足を向けて歩いて行った。熱気立ち込めていた
蒸し風呂のような部屋から一歩外に出れば風が吹き通り涼しく大きな温度差が心地よくさせる。

言われた場所に着くとエボシは何やら鉄の板を叩き仕事をしている途中のようだ、
少しすれば終わると言われた2人はその場で待つ事になった。ただぼんやりと周囲に目を
向けている環境庁長官とは違いアシタカは真っ直ぐにエボシを黙ったまま目をやる姿からはなにやら
男達といた小屋から出て来た時から何か様子が変わったのは何となく環境庁長官は気付いていた。

「アシタカとやら、待たせてすまぬな。
いい鋼だ、明日の送りの仕度に手間取ってね。ちょっと休もう皆にそう言っておくれ。」

「はぃ。」

縁側に腰かけているエボシは叩いていた鉄を傍で仕事の手伝いをするゴンザに手渡すと
直ぐ横に置いてあった木の板に墨に付けた筆を付けると何かをすらすらと書いている、
座った体勢で目線辺りに揺らめく低い台の灯の灯りで文字を書き終えると元置いていた場所に
筆と木を置いた。俵に包まれた鉄を幾つも積み上げられている荷物をタタラの女は何処かに
持って行くがエボシが休憩を取ると言った為今の分だけを運べばしばしの休息を取り、また
仕事を始めるのだろう。エボシは他の木に書かれた文字に目を通しながら流すようにアシタカに
目を向けて話しだす、目を合わすとまたエボシは手元の物に目を通しながら続けた。

「そなたを侍どもかもののけの手先と疑う者がいるのだ、
このタタラ場を狙う者は沢山いてね・・・しかし、まあね。」

急成長を遂げたシシ神の森付近に城を構えるタタラ場、その莫大な収入源と利益を我が物に
しようと幾多の私利私欲に身を任せ乗っ取ろうとしに来た人間は沢山いた。アシタカもその中の
1人だと思われている事を話したエボシは一端言葉を途切るとアシタカの隣に立つ一見ぼんやりと
している連れの女に目を向けた。どう見ても一般人にしか見えない奴、その上に女ときたら
疑いも段々と薄れて行くとエボシの目線が語っていた。

「旅の訳を聞かせてくれぬか?」

自分の懐に手を入れて腕の布の結び目を解くと右腕の布を手の甲の方にずらし腕を
胸の前に出して見せる。腕の赤黒い痣は徐々に広がっていた、肘より少し下にあった痣は
手の方や肩の方にと侵食している、ゴンザやエボシは驚いたように腕に目を向けた。
痣に蝕まれる事を止める事の出来ない環境庁長官は口惜しそうに腕の痣を見つめる、ヒイ様に言われた
薬ではどうにもならないと言われた事が頭から離れた時は無かった今もまた胸に突き刺さる。

「げっ!」
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