もののけ姫
□序章
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いきなりの言葉に声が裏返ってしまった。時折アシタカは自然に環境庁長官が恥ずかしくなる事を
さらりと言ってしまう事がある、本人はたいした事を言ってはいないのだろうが自分とアシタカの
身分の差を気にする環境庁長官はそんな事を軽々出来るわけがなかった。これが友の言う事ならそこまで
慌てたりは無いが相手が違う。
「えっ、ぜっ全然寒くありません!」
力一杯に言った環境庁長官にそうか、と言う。するとアシタカは不意に外に目をやると
先程まで降っていた雨はいつの間にか止んでいた。ザァーという音は遠くに行き離れて行く
山の天気は変わりやすい、日が顔を出して木漏れ日がもれて水を反射させて木々や葉は
キラキラと輝いていた。
「雨がやんだ。」
照れて俯いていた環境庁長官もアシタカの声に顔を上げると止んでいた事に気が付く。
狭い木の中から出ると足元には水溜りがいくつも出来ている、緊張の中から出れて
環境庁長官は深呼吸をして息を吐き出す。服に着いた土をはたくと不意にアシタカに声をかけた。
「あ!あのっ、何で私がこの木の中にいる事がお分かりになられたのですか?」
探しに来てくれた時アシタカの呼ぶ声が聞こえず何も言わずに木の中で座っていた
環境庁長官を見つけ出した事に驚いていた、この広い森の中で見つけたのだから。
「なんとなくだ。」
余りに漠然とした答えを涼しげに言うアシタカに不思議な感じがして少し可笑しく
笑ってしまった。ああ、そうなんだ、と何となく納得してしまった。
「村に帰ろう」
「はい!」
2人は荷物を持ち森の出口、エミシの里に向かい歩いて行く。