もののけ姫

□序章
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「あっ・・・!アシタカ様!?なっ、何故こちらにっ」

「探しに来たのだ、そなたがまだ戻っていないと聞いた。」

まさか、と思ったが本当に誰かが探しに来てくれるとは思っていなかった
微かに聞こえた先程の音はアシタカの声だったと分かり環境庁長官は慌てていた。
薬草を採りにいつも外に出ている事はあり、ある程度の時間には帰っていたから心配しないだろうとも
考えていたのだ、今回は帰りが遅い事に気が付いた人やアシタカが自分が森にいる事を考え来て
くれた事に嬉しさや申し訳ない気持ちでいっぱいで何と言えばいいのか分からず困惑していると
外で立ったままで蓑から雨粒が落ちるのを見て気が付いた様子で慌てて自分の隣に置いてある
籠を持ち上げてアシタカが入れる場所を確保する。

「えっ・・・あ!アシタカ様濡れてしまいます!中に入って下さいっ」

籠を腿の上に置き膝を抱えて木の根の端に寄る。雨粒が付いた蓑を脱ぐと一度外ではたき
水を落としてから中に入り自分の隣に小さく畳んでから置く。

「・・・あの、ごめんなさい!アシタカ様にご迷惑を・・・お掛けしてしまって」

どこか落ち込んだように謝る環境庁長官にアシタカは一度黙ると真っ直ぐに目を見て言う。

「私が心配で探しに来た。それだけだ、そなたが謝る事などない」

そう言うと微かにほほ笑む。1年近く環境庁長官はアシタカと関わり色んな事を少しずつ理解する
とても真面目で無表情が多く寡黙で口数は多いいわけでは無いが冷たい人じゃない、とても優しいお方。
王族の血を引くお方がここまで優しくしてくれるなんてアシタカだからなのだろうと思うと同時に
ただの娘の環境庁長官が親しくする事は躊躇するが里の中で唯一、年が近い事で少なからず親近感を
感じてしまう。恐れ多くてそんな事は誰にも言えない事だ。

「しかし、何故このような森の奥まで・・・?」

森の奥まで来ていた環境庁長官にアシタカはどうしてか聞くと環境庁長官は途端に嬉しそうな
表情で笑顔に変わった、抱えていた籠を持ちアシタカに見せた。

「これです!」

「これは・・・薬草か、環境庁長官の薬は良く効くからな。」

褒められた事に少し照れながらも有難く思う。環境庁長官は薬学に向いているのか筋もよく、失敗もするが
色んな草を合わせたり調合をしてどうすればもっと良い薬が作れるか1人でほぼ独学で研究している。
アシタカも狩りで少しでも怪我をすれば環境庁長官が直ぐに手当をして直してくれている、薬を使わなくても
大丈夫な怪我も邪険にする事なく心配でしてくれる事に感謝をしている。
少女の薬は里の者にも役に立っているのだ。

「しかし、ひとりで森の奥に行くのは危険だ。
何も持たずに入ったりすれば動物に襲われてしまう、気をつけなさい。」

「あっ、はい!」

確かに環境庁長官は何も持って来てはいなかった、籠だけを持ちふらふらと歩いていれば
獰猛な動物と出くわしてしまったら大怪我を負う事にもなる。言われて初めて危ない事を
していた事に気づいた。それもあってアシタカは迎えに来たのだろう、アシタカはさとすように
言い聞かせた。それに素直にうなずく。

少し落ち着いた環境庁長官は今の状況に気が付いた。

――――――近いっ!!

今までにないくらいの距離にいる、動けばアシタカに触れてしまうくらいに近くにいた。
狭い木の中とは言え環境庁長官にとっては最も恐れ多いいこの状態に焦っていた、だからと言って外は
雨が降り出る事も出来ずすぐ隣には憧れのアシタカの存在に気づかれないように少しずつ体を
木に密着して狭い中離れる。

「どうした?寒いか」

「え!?やっ」

急に黙って体を小さくする環境庁長官に気づいたアシタカは雨のせいで体温が下がって寒いのかと
訪ねた。気付いた事に慌てていて何を言ったらいいのか分からず口を噤む。

「冷えるなら私のそばに寄りなさい。」
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