もののけ姫

□一言半句
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遅れて来ると言ったアシタカが仕事がひと段落して到着した、アシタカの姿を見つけすぐに分かるように手を高らかに上げ声をかける環境庁長官。
二人の元につくまでに甲六や頭の面々に声をかけられながら席に着く、食事を挟んでアシタカは陽助の前に腰かけ頭を下げた。

「遅れてすまない。陽助殿、具合が良くなり何より」

「あぁ、礼を言うよ」

軽く杯を上げて陽助は酒を飲み込んだ。

「さぁ、アシタカ様も」

どこか互いに不仲なのではないだろうかと環境庁長官は感じるようになっていた、今まではそのように思った事もなかったが、
空気がどことなくだが重たい雰囲気に杯をアシタカに手渡し、酒を注ぐ。

すまない、と微笑むとアシタカは口を付ける。
しかし、一瞬の険悪さは気のせいかの様に他愛無い話しをしている二人。何かの勘違いだったのだろうと、
胸をなでおろし環境庁長官はまた忙しく空いている皿を片付けに席を外した。村の者達はとうに酔い潰れて眠っている者もいれば隣で
可笑しそうに唄い踊る者も、すっかりここでの生活で慣れたものだった。

環境庁長官が席を外してから対談していたアシタカは時折視線を環境庁長官に向けている事に陽助は気が付いていた。
酒を煽りながら自分達が飲み干した銚子に何かを思いついた。

「なかなかの酒豪だな。どうだ、俺と勝負しないか?」

アシタカは手を止めて陽助を見やる、
自信あり気な不敵な表情の相手は確かに飲める口なのだろう。

「いや、私は」

「おいおい、付き合ってくれるだろ。女の前で臆してるのか小僧」

そういった事に関心が無く断ってもよかった、それを知ってかアシタカが言い終える前に強めの口調で挑発紛いに言葉を放つ。

こんな安い挑発に普段なら何とも思わず受け流す事が出来た筈のアシタカなのだが、どうしたものか心の底で引っ掛かる物を感じて一瞬だったが
眉間に微かに皺が寄るのを陽助は見逃さなかった。

「・・・。受けて立たせてもらいます。」

静かに笑みを見せるアシタカ。
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