METAL GEAR SOLID

□大要塞グロズニィグラード3
1ページ/6ページ

カツカツと足音が響く地下トンネルの中を進んで行く、前に進んで行くにつれて肌寒く
悴んでしまいそうだ。真夏だと言うのに冬のように寒いのはココが北にあるロシアだからだろう、
オタコンが策定してくれた野戦服のお陰で外に出ても体を保護し低体温症ではよっぽどでも
無い限り凍死はない、スネークが着ていたスニーキングスーツと比べてしまえば劣る性能だが
布地の中には紡績技術を駆使して創られている為一見すれば何の変哲もない布地だが強度も
考えられてある為破れ難くなかなか頑丈に出来ている。外に出るまではまだ余裕があり
出口が見えないのでついつい癖で使えない無線に耳を傾けてしまう、もしかしたらと言う
期待で通信するがやはり繋がらなく無音に小さく溜息を漏らす。

「8月なのに寒いね。」

「ソ連だからな、季節なんて関係が無いからだろ。」

前を行くスネークは当たり前の事を答えた、そうでは無く寒くは無いのだろうかと思うが
恐らく寒いに決まっているだろう。だからと言ってこんな所で火を付けて暖をとる程
悠長には出来ないので黙って足を動かす。

「仲間との連絡がまだ取れないようだな。」

不意に振り向くと足を止めて言った。顔は目出し帽を被っているので表情などは分からない筈だが
連絡を取ろうとしていた事に気付いていたようだ、あれから数日が経っても2人とは
連絡も出来ずにいたが情緒不安定にもならずにいられるのは今自分がやらなくてはいけない事
目的があるからパニックにもならないでいられる。

「まぁ・・・ね?でも今はスネークの任務の協力が最優先だから。」

「・・・協力か、一方的な協力を求められて良くこんな所までもったものだ。」

兵士は所詮駒でしかない、上官の命令なら何だって聞き入れ実行する。しかしスネークも
人間で情や良心が普段は押し込めていても人間臭さは出て来る、何も現状を教える事無く
約束を守るとも限らず切り捨てるとも知れぬ他の組織の人間に良くついて来ていると
自分の中の道徳心が顔を出してはいい様に利用しようとしている組織にも自分自身にも
胸糞が悪くなるのを感じていた。

今からだって逃げ出してもかまわないと言えど此処まで来て放棄するのも納得できず、
約束しといてこのまま引き下がりたくない。それに今辞めてしまったら帰る手立てが全て
無くなる為裏切られるようとも何の情報も教えて貰えなくても僅かな望みを自ら手離せない。

「少し待ってくれ、・・・大佐、任務の確認をしておきたい。」

「スネーク?」

突然胸の小型無線機に手をかけて自分の上官に連絡をする。コールでも入ったのかと
思ったがどうやら自分の方から掛けて任務確認をするらしい、大佐とやらの声は周りに聞こえないが
ナノマシンの体内通信を使っていないスネークは声を発しないと相手には聞こえないので
一等兵が居ては疑問を口に出して言えないだろう、何の情報も教えないと言う条件なので聞かないように
先に行っていようと歩き出す。だが、肩を掴まれて静止させられた、此処にいろとでも言うのだろうか
スネークは目を合わせないまま何事も無いように話している。

「兵器廠の東棟に潜入、ライコフと言う少佐を倒し服を奪い
目的の1つであるソコロフを西棟から救出だな。了解だ、また連絡する。」

わざわざ聞かせるような説明的な確認の仕方に目を見開き驚いた様子でスネークの顔を窺った、
これはこれからの任務の形勢を教えているようだ。しかしこれはスネークが一等兵に対して
話した事にはならない、ただ無線越しの上司と任務確認をしただけだ。それまでは暗黙の了解で
スネークが無線をする時はどちらかがその場を離れるか距離を取っていたが今回の行動で
一等兵の事を少なからず最初の時よりは信用をしたのだろうか。

「スネーク、・・・ありがと。」

「どうした?」

「いいえ?何でもないわ、さぁ行きましょ。」

何でそんな風に言ったかなんてわざわざ口にする必要はない。2人の顔に浮かんでいる
含み笑いの様な表情で理解しているのだろう。そして2人は歩き出す、小さな進歩だが
何も分からないで動いていた時に比べれば大きな一歩。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ