METAL GEAR SOLID

□戦場で出会った夏の日1
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熱帯地帯の森を気配を消しながら物陰に隠れて進んで行くは一等兵の姿。
メタルギアの亜種の情報を極秘裏に入手し終え、目当てのメモリディスクを持ち出す事が出来たが
敵地の熱探知機に引っ掛かり敵兵に追われる事となり帰還ルートからは大きく道が外れてしまう。
森に入る前に一度敵に悟られてしまった事をオタコンに報告してから森の中にと姿を暗まし
敵を撒く事が出来たが随分と奥に入ってしまったせいか何度無線をコールしてもスネークも
オタコンにも繋がらずに途方に暮れていた。オタコンが邪魔にならないように特別に造った
耳に付けられる小さな無線は壊れてしまっているのか指で叩いて見ても繋がる事は無く無音だけが
続いていた。森の中に入るつもりも無かった為にブリーフィングも受けておらず、進めば進む程に
方向感覚は無くなり夜の暗さと熱さが感覚を鈍らせて行く。

「一体どうしたら・・・、2人の事だから無線が繋がらなくなった事に気付いてくれるとは思うけど。」

しかし、今いる場所まで分かるとは思えない。見つけて貰うとしても早くて数日はかかるだろう、
自力で元の帰還場所まで行くしかないかもしれないが恐らく夜が明ければ侵入者を捕まえようと
躍起になり増援部隊が道を堅めこの今いる森の中にも敵兵が送り込まれる。夜が空ける前に別の道を
探さないといけないが追って来ている敵に出くわす恐れもあり迂闊には行動できずに木の隅に体を
隠していた。無線が繋がればオタコンに指示を仰ぐが今は誰とも連絡が取れずに頭を抱える。

「仕方ない、敵から聞き出して抜けるしか今は出来ないか。」

少人数で追って来ていた敵を利用しようと考えた。森の中に入った敵兵は恐らく撒いている際に
バラバラになっているだろう、1人の奴を捕まえれば聞き出す事が出来るが熱さで参ってしまう前に
動き出す。

するとそう離れていない距離で湿気った土を踏む微かな音が聞こえた、敵に追われていたのと
ここはまだ敵地の中だった事で神経は立っているお陰で何気ない音を聞き落とさずに済んだ。
立ち上がろうとしていた体を止めてしゃがんだまま木を背にして覗き込む。追って来ていた敵が
もうこんな所まで来ていたのかと息を潜めて窺う。目が慣れて来たとは言ってもやはり夜の暗さに目を
細めて周りを観察するが良く見えなく動物の足音だろうかと考えているとまた同じ音が聞こえる。
その場所を良く目を凝らして見ると何か人影が動いている、この環境に馴染んでいるせいで
気付くのが遅れたがどうやら敵はこちらに気付いてはいないようだ。

敵も1人のようでこれは好都合とM9を手に持ち自分が居る木を通り越し背を向けた時に
ホールドアップしようと警戒している敵がじりじりと行くのを待った。

敵の視界から外れた頃に動き出す、体制を低くしてゆっくりと木の影から姿を出す。
足音が極力出ない特別なブーツは足跡も残さないように作られている
相手の速度と足並み揃え気付かれないように距離を詰めて行くと敵はパタリと足を止めたと
同時に素早く振り向いたのだ。

「!」

なぜ気付かれたのか訳が分からなかったが敵の銃口が一等兵に照準が合うか否かに敵の方に
跳び込み相手の銃を払い銃口がずれた瞬間に擦れ擦れ避け地面に銃弾は着弾した。
このまま相手を振り払い地面に押さえ込み増援部隊を呼ばれる前にケリを付けて終おうと
腕を押さえ込もうとした瞬間どうした事か掴んだ腕から逆に相手に腕をねじられ地面に
背中から叩きつけられそうになっていた、だが素早く同じ方向に体を回転させて受け身の態勢で
衝撃を無くし転がり避ける傍に銃弾が撃ち込まれている、転がる勢いで近くの木に体を隠した。

(・・・出来る)

木に隠れると敵も茂みに姿を潜めて同じように出方を窺っているのだろう。ただの偵察兵に
今までこんなにも手こずる事があっただろうか、速さで勝負して来たがそれを越される
腕の持ち主に目を付けてしまったようだ。いかなる時も勝敗はスピードだったが腕を掴んでからの
技を返された事がその瞬間信じる事が出来なかった、しかし自分から仕掛けてしまったせいで
敵に居場所を知られた上にこの場から逃げ出す事も出来なくなったのだ。

ガサッとすぐそばでこの静けさの中では大き過ぎる物音にドクッと心臓が飛び出すほどに
1つ大きく脈打ち額からは熱さのせいではない汗がにじみ出た。

そんな筈はない、敵がこんな近くまで一瞬で近付ける筈が無い。気を張り敵の気配を
感じ取ろうと神経を集中していたのにすぐ傍まで覚られずに近付ける筈がないと思っていても
体は考えるよりも早く動いていた、それは反射的にと言っても違わなく銃身がぶれないように
両手で銃を構え木を跳び出すと何かが闇夜の光を反射させて光った。
それが何か理解する間もなくトリガーを引き撃たれたモノは弾き跳び姿を見せる。

「・・・マガジン?しまったっ・・・!」

呆気に取られていると物音では無く草を踏む足音が背後で聞こえる、
咄嗟に振り返り銃口を向ければやはり敵が立っており銃口は互いの頭を捕えたまま沈黙が続いた。
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