ゼルダの伝説

□トワイライト
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トアル村に住んでいる牧童の青年リンクはいつものようにヤギ追いを手伝いひがな一日
草笛を吹きのどかな有り触れた田舎の風景に満ち足りていた。これと言って大きな騒動も
無ければ事件も無い、事件と言えば子供達が悪戯で畑のカボチャを人の家に投げ飛ばし大目玉を貰う位だ。

そんな穏やかな日常にちょっとした変化が訪れたのはモイが言った言葉。

「リンク、村の外にある山野まであるモノを取って来てはくれないか?」

小高い丘に腰かけ空を仰いでいると少し困った顔で隣に座ったモイはお使いを頼む、
いったいどうしたのか尋ねたリンクに前にお城から帰る途中で大事なお面を
落としてしまったらしい。動物の骨で作った代々受け継がれて来たトアル村の祭具を
お城の画廊に預け数ヵ月後に取りに行って帰って来ればハイラル平原に置き去りにして来たのだ。
いくら探しても見つけられない為リンクにも手を貸して貰おうと話す、それに付け加え
この事は2人しか知らないため他言無用との事。大事な祭具を無くした事を村長に
知られたくないのだろう。

2人はトアル村の人々にはお城まで配達する物があると作り話で誤魔化してハイラル平原に出発する。
平原にある大きな木の下にエポナに乗せていた荷物を下ろすと山に日が落ちる時にまたこの場所で
落ち合う事を取り決めモイとリンクは別々の方向に探し出す。

エポナに跨り果てしなく広い草原を駆け走らせる。見落とさないようにリンクは確りと目を配り
探していると平原の奥にある森の間で何かが動いたのに気付きエポナの手綱を引いた。

「あれは?」

森の方に近付いて行くと見られているような視線を感じた、トアル村とは違う秘境の薄暗い森から
感じられる何者か分からない目線に体が硬くなる。エポナから降りると草木に近付き窺うように
左右に目をやっていると少し離れた木の上から葉が落ちた事に気付きその方向に目をやると
リンクは一瞬ギョッと驚く、顔の様なモノが枝に腰かけ此方をじっと見ていた。だが直ぐに
それは探していたお面である事に気が付くがお面を付けている人物は目が合うと同時に枝から
飛び降りて森の奥深くに逃げてしまう。

「あっ!キミ、待ってくれ!」

リンクはその場にエポナを置いて森の奥に掛け込んで行った。草木を掻き分け見失わないように
後を追って行くが慣れない地形になかなか追い付く事が出来ない、お面を付けている娘は
時折ふり返り楽しそうに笑っているような声が聞こえた。

「待ってくれ!それは大事な物なんだ、返して貰いたいんだよっ。」

いくら呼び掛けようと足を止めてはくれない、ふふっと聞こえる笑い声は追いかけっこでもして
遊んでいると考えているのではと困った様子でリンクは走り続ける。

姿が見えなくなれば木の陰からひょっこり姿を現してはまた走り出す、これでは本当に
追いかけっこだと無邪気な相手に苦笑う。森の中を走り回っていると何処かのひらけた場所に出る
そこは遺跡後か崩れ落ちた塀や屋根につるが伸びて何十年と月日が経っている事が分かる。

「あなたは外から来た人ね。」

「俺はリンク、キミも姿を見せてくれないか?」

遺跡の中を反響する声はお面を持っている娘のもの、声は聞こえるもののどこかに身を隠して
リンクの前に現れようとはしない。何処から話しているか分からない人物に周りをぐるっと見回しながら
声をかけて遺跡の物陰を探して見たが隠れるのが上手いのか姿は確認できなかった。

「だめ、外の人とは話しをしても姿を見られてもいけない掟だから。」

「でもキミは今話しをしているだろう?」

少し不思議そうにリンクが言えば娘は言われて見ればそうだと気付きクスクスと笑う、
姿の見えない相手にリンクは遺跡の瓦礫に腰かけて言葉を投げ掛ける。ここは一体なんなのか
問いかけて見ても娘にもよく分からないらしく曖昧な答えが返って来たがこの静かな遺跡が
お気に入りらしくいつもここに遊びに来ていると楽しそうに話す。

「リンク、このお面はあなたの物なのね。森の外に出た時に落ちていた物なの
返しても良いけど・・・それじゃ詰まらないわね。」

「どうしたらいい?」

「そうだっ、私を捕まえられたら返してあげるよ。」
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