もののけ姫

□序章
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山々に囲まれ木々が豊かな恵みを実らせとても穏やかな日々を送る村があった。
その環境のお陰で他の里の人間とかかわりは薄いが今では人の争いはない、その村はエミシの隠れ里
里にはエミシの人間ではない他の村から来たと思われる少女が住んでいる。
少女は深い森の中で行き倒れていた所をエミシの人間に発見され連れ帰られたのが始まりだった。

倒れていた少女は負傷していた切り傷、打撲、動物に襲われたのかはたまた崖から落ちたのか
誰にも見つからなければそのまま森の中でひっそりと死んで動物の餌になっていただろう、
手当を受け数日後に意識を取り戻した少女に里の者は早くその少女の村に返す事を上げられた
隠れ里のエミシでは他の里の人間は好ましいものではない。だが、少女は怪我のせいか何処から
来たのかを思い出せなかった。

追い出してしまおうと言う意見にさらされた時に反したのは少女を見つけた青年だった。
正義感が強い青年はこの状況でまた森の中に入れる事は死を意味している、そんな事を
安易に了解できる訳なく少女をエミシの里の者として受け入れようと提案したのだ。
よそ者を村の仲間として受け入れる事に抵抗を感じる者もいたがその青年の提案を真っ向から
否定する事は無かった、見つけてくれたのがその青年でなければ追い出されていたかも
知れなかったのだ。その青年はエミシ一族の末裔、王族の血を受け継ぐ時期エミシの長になる青年。
若い男女が少ない里で信頼もある。その青年のおかげで少女はエミシで暮らす事が許された。

そして、月日は流れ1年経っていた。里の老巫女のヒイ様から薬草から薬の作り方を教わった
少女は毎日のように茂みや森の中で薬草を採って貸して貰っている薬研や薬板で薬を作る。

今日も薬草を採りに森の中まで入って捜し歩く。

ガサガサと木々を別けながら歩いて行く、手には採った薬草を入れた籐で編んだ籠を大事に
持ちながら覗き込んで満足そうにほほ笑む。

「今日は大量っ」

採る事に夢中になってしまいいつもより少し森の奥に入り過ぎてしまって帰り道が遠い、
この森は色んな葉が茂りついついと誘われるように奥に来てしまったがそんな家路に行く道を
歩きながらも他に薬草がないかと目を配りながら帰る。

すると、突然頭の上から雷鳴が轟き一瞬強く光った。

ビクリと肩を震わせ大木の木の葉からぬうように空を見上げると空は段々と雲行きが
怪しくなっていった。山の天気は変わりやすいと思いながら駆け出す。

「雨が降る前に雨宿りしなきゃっ。」

駆け出しながら周りを見渡すと大きな木が目に入った、大木は雨をしのげるくらいの洞が
空いている木の中に入り空を窺っていると案の定雨粒がぽつぽつと降り出して来た。
この位なら濡れてでも里に戻るのだが今回はそうもいかなかった、摘んで来た薬草の中に
採ってから水にさらしたら意味がなくなってしまう草があったのだ。参った様子で溜息がもれる。

「あ〜あ・・・、降って来ちゃった。」

もう少し早く帰っていれば、と想いが浮かび少しだけ反省する。夢中になって
奥まで入って行かなかったら今頃はもう里について屋根の下で雨にあう事も無かったと
思いながら隣に置いた籠を軽くつつき退屈そうに膝を抱え座る。

木の中で座っていると微かに環境庁長官、と自分の名を呼ぶような音が聞こえた様に思えが
風の音や雨の打つ音で空耳だと考えた。こんな雨の中こんな森の奥まで誰が探しに来ると
言うのだろう、ましてや自分を探しに来てくれるなんて迷惑をかけたくは無かった。
ただでさえ自分を置いて貰っている里の人達に疎ましくなる行動はしたくない、そうしなければ
自分の事を庇い助けてくれた最も尊い青年に申し訳が立たないと思っているのだ。

だが、やはり1人は心細くさびしく感じる。聞こえるのは雨の音しか聞こえない。

動物の声も無くここには自分しかいないような感覚で身を小さくして最も尊く信頼している
お方の姿が浮かんで自分にしか聞こえないくらいの小さな声で呟いた。

「アシタカ様・・・」

「なんだ。」

誰もいないと思っていたのに直ぐそこには大木に片手を付けて藁の蓑をかぶって
雨をしのいで立っているアシタカがいた。返事が返ってきた事に驚くがその事以上に
微かに名前を口にした人物がいる事に目を見開いた。
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