METAL GEAR SOLID

□戦場で出会った夏の日1
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獣たちの鳴き声が木々のこすれる音と共に耳に入って来る、もし近くで物音でもしたら
弾みで発砲してしまいそうなくらいに神経は切羽詰まっていた。少しでも腕がぶれるものなら
撃たれると言う確信が闇の中で光る眼で理解し生きた心地が感じられない、たった数十秒の
時間が何時間にも感じるのは刺し違える思いで睨み合っているからだろう、すると敵はふっと
銃を構えたまま少し口をつり上げて笑う。

「動きの早さは悪くない。
だが、咄嗟の動きを押さえ込む事が出来ていないな。平静さに欠けている。」

だから確認も無しにマガジンを投げたくらいで跳び出してしまうんだ、と分かったような口をきく。
見透かされたような事を言われ一等兵はちっと舌打ちをならした。敵にそんな事を言われるとは
思いもしなかった、口惜しさを感じ引き金を引いてしまいそうになるがその言葉と声がスネークと
変わらず前に注意された時と今がダブった。

「・・・あなた、誰、スネーク?」

まさかね、そんな思いで口に出したのは仲間の名前。しかし相手はその時今までの余裕が
消えたらしく鋭く睨んだ、動揺とまではいかないが態度が少しだけ変化する。

「何者だ?なぜ名前をしっている?」

「スネーク・・・っ!良かった、私1人じゃこの森ぬけられなくて困っていたの!」

夜空の重たい雲から月が顔を出し月の光が森の中を照らし互いの顔がハッキリと見える程に
明るくなり敵だと思っていた人物はスネークだった。相手が仲間だった事に安堵し先程までの
緊張感から解かれ向けていた銃を下ろす、しかし相手は態度の変わりように困惑した様子で
なぜ警戒を解いたのか分からず銃をなおも突き付けた。

「相手があなたなら私が勝てないのも当たり前だったよね、あれ?でも何でスネークが
ここにいるの?あっ、私の無線が壊れた事オタコンから聞いて来てくれたんだ?」

「おいっ、ちょっと待て!俺はスネークだが別の奴と勘違いしてるんじゃないか?」

相手が誰かを理解できずに警戒したままでいる事に気付いた、いつもなら気付いていてもおかしくは
無いのだが少しだけ引っ掛かった。

だが、明かりが無かった森の中だからだろうと考えた、一等兵も至近距離で声を聞くまでは
相手がスネークだと言う事に気付かなかったのだから同じ事。しかしスネークがこうも早く
迎えに来た事に驚いていたスネークも別の場所で任務に行っていて暫く顔を合わせていなく
その上迎えに来る事も初めてだった、無線が繋がらなくとも電波情況が悪いだけと暫くは待機して
待つのが普通だからだ。知らない奴を見るように間誤付くスネークを見ていてもいいが
本当に分からない様なので仕方ないと被っていた目出し帽を取った。

「ほら、これで分かったでしょ?」

銃を構えたまま相手をまじまじと見るがスネークの顔からは警戒している表情が消えない。

「いや?悪いが見覚えがない。俺に近付いて何が目的だ?
お前はどこの部隊だ、GRUかKGBか・・・答えろ!」

「本気で言ってるの?私一等兵よ!どこの部隊にも入ってないじゃない、ねぇ、どうしたのスネークっ」

なぜスネークがとぼけているのかが理解できなかった、様子からからかっているとは思えず
少しずつ不安の色が浮かんでくる。いつまでたっても拳銃を下ろす素振りも無く
それどころかますます情況が悪化しているようにも思える、一歩近づこうと足を踏み出した瞬間
スネークはこめかみ辺りをワザと外して威嚇の発砲をした、サプレッサーが付いている45口径の銃は
髪をパラパラと散り落とした。その瞳は拒絶に近い敵視する瞳が躊躇も無くトリガーが引かれたのだ。

「・・・何で・・・?何でとぼけるの?また・・・ビックシェルの時みたいな事するの?」

信じられずに身動き取れずその場に立ち尽くした、この気持ちは絶望にも似たモノが心に
重く圧し掛かった。急にそんな態度を取られる理由が分からない事がもどかしい。

「もうあんな事しないって言ってくれたじゃない・・・、仲間だって。
次は何?またイロコィ・プリスキン?ふざけないでよっ、私が邪魔ならそう言ってよ!」

わなわなと怒りに震える声は敵地だと言う事も忘れ怒鳴る、酷い裏切りように胸はあの時以上に
張り裂けそうに悲鳴を上げていた。ビック・シェルの時はまだ自分を思っての行動だった事で
何とか許す事が出来たがまた同じ事を繰り返す事に怒っているのにスネークは表情一つ変えなく銃を
突き付けたままいる事にも怒りが増す、それなのに怒りをぶつければぶつける程に悔しさなのか
悲しいからなのか分からない涙が零れていた。
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