ゼルダの伝説

□トワイライト
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所々に板が腐り落ちた壁から冷たい風が入り込んでくる。

風が戸を叩くように吹き付けている、どうやら外では強い風が吹き止まずに吹いている様だ。
ぽつりぽつりと床を照らすのは天井から漏れて差し込まれる月の光、相当に傷んでいる天井はいつ
崩れ落ちて来ても可笑しくない程に抜け落ちてしまいそうだ。

木の箱が所々に無造作に置かれている薄暗い中で黒い影が木箱に寄り掛かり小さく震えている。

強く風が戸を叩く度にビクリと肩を揺らしているのは人間だ、膝を抱えて小刻みに揺らす
少女は怯えた瞳で床を眺めて挙動不審に瞳を左右に動かし警戒している。
震える口は呪文の様に何かを呟いているが風の音で掻き消されて聞こえて来ない。



「ここじゃないか・・・?聞いた通りだな。」

狼と共に魔物が噂の古びた建物の前にいる魔物は楽しげに見上げているのとは反対に
狼の方は怪訝そうに見ている、それもその筈だ、建物の周りだけを吹き続ける強い風は
奇妙で誰もこの中に入れようとしない様だからだ。

「さぁ〜て、どうするお前?これじゃ扉から入れないぜ。」

困った様な素振りをする魔物だが口元は興味津津と目を光らせている。
何処からか入れないだろうかと狼はその周りをグルグルと周り首を傾げ魔物に目を向ける。

「しかしこれは自然の力じゃ無いんじゃないか?モンスターの仕業なら中に何か大事な物でも
隠してるんじゃないのか・・・、ククッ、だったら入るしかないな!こんなボロ屋だ、
屋根なんて脆いんじゃないか?おっ、ここから上に登れそうだぜ。」

壁から飛び出ている板を見つけた魔物は上へと誘導をするとふわりと浮くと茜色の髪が手の様に
伸びると自足を付けて足場に跳ぶ狼の手助けをしながら高く、高くと登りスムーズにあっと言う間に
古びた建物と同じ高さに立っている。

推測の通りに見るからに古くなり亀裂が走っている、何かの衝撃ですぐに壊れるだろう。
風は塀に沿って吹いているので屋根の上までは囲ってはいなく飛び移るのは容易な事だろう。

「さぁ、ここまで来たんだから中に入ってやろうじゃないか。ほぉ〜ら、ジャーンプッ!」

魔物はまた狼の背に乗り、跳ぶ事をおちょくり口調で急かすと狼は掛け声と共に
身を低くし一気に飛び移った。

崩れる瓦礫と騒々しい割れる音と一緒に狼は家の中へと落ちて行った、
ガラガラと崩れる屋根はいびつな円の穴が開きそこからは月の光が中に入った物をまっすぐに
照らし出している。狼は相当に身軽であの高さから落ちてもしっかりと着地をしていた。

容易に中に入った2匹は暗い中をきょろきょろと見渡す。

「ん〜?なぁ〜んだ、ただのボロ屋じゃないかぁ?ちぇ!来て損だなこりゃ。」

予想と反して外も中も見た目通りの光景に魔物は機嫌を損ねた様だ。
だが狼はまだきょろきょろと中を見渡しながら耳を左右に動かしている、屋根を破った時に
瓦礫の落ちる音だけでは無く微かに他の音も混じっていた。

「なんだよ、何捜してんだ?モンスターも宝も無いんだ、長居なんて・・・なんだアレ?」

さっさと帰ろうとする魔物は狼が耳をぴたりと一点の方向に向けているのに気付き
そちらを目を細めて見ると何かが端の方で動いている。

狼が近づいて見ようと前足を動かした途端に物影が大きく揺れた。

「・・・ぁ・・・ぁあ・・・っ」

発せられた声に誰かいる事に気づいた、2匹は距離を詰めようと近付くと掠れた声は
突如恐怖に染まった悲鳴に変わった。

「きゃぁぁぁああっ!!!」

「!!」

力いっぱいに押し開けられた扉から人影は2匹から逃げようと飛び出すと、
吹き止む事無かった風はぴたりと止まり静まり返っていた。魔物は訳が解ら無いと言った顔で目を見開いた。
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