夏の風物詩

□不思議語り
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「友達の洋服」

これは母から、聞いた話です。
その日、Aさんは、友達Bを連れて買い物に出掛けました。
よそ行き用の洋服が、欲しかったAさんは、洋服店でオーダーメイドしました。
自分の体型にキッチリとあわせた洋服は、作るのに一ヶ月程、かかりました。
ところがAさんは、一ヶ月後、突然の病に倒れて、亡くなってしまったのです。
Bさんは、歎き悲しみました。
葬儀が終わり、暫くしてから、Aさんの母親がBさんに
「Bさん、娘の服を貰ってくれないかしら?」
と言いました。
Bさんは、Aさんの母親に付いて、Aさんの部屋に入りました。
「結局、この洋服に一度も腕を通さないままだったのよ。」
ビニールで梱包されている洋服を眺めて、Aさんの母親は、言いました。
Bさんにとって、Aさんと最期に行った買い物の品でした。
Bさんは、Aさんの母親にその洋服を手渡され、
「これを貰って欲しいの。」
と言われ、断れませんでした。
だって、それは、Aさんの体型に合うように作られた洋服だから、Bさんに合うはず、ありません。
とりあえず、Bさんは、持ち帰ったオーダーメイドの洋服に腕を通すことにしました。
すると、どういうことでしょうか?
Bさんの身体にピッタリと合ったのです。
まるで、この洋服が、始めから、Bさんの服だったかのように…。
以来、Bさんは、この洋服をAさんが残してくれたんだろうと思って、今も大事に着ているそうです。
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