夏の風物詩

□「デパートの駐車場」
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自宅付近にあるデパートの立体駐車場には、トイレがありました。
ところがある日を堺に閉鎖されてしまったのです。
しかも、閉鎖のされ方も何だか、不気味でそこにトイレがあった事をまるで隠すように壁と同じ柄のシートで入口を封鎖してしまったのです。
だから、遠目には、壁にしか見えません。
私がどうしてかな?と回りに尋ねると姉から、こんな話を聞きました。

閉鎖をされる前にその駐車場のトイレへ入っていた時の事だったそうです。
1番奥のトイレは使用中でした。
姉は手前の空いているトイレに入りました。
姉は1番手前のトイレに入っていると1番奥の個室から、着メロが流れてきたそうでした。
一回鳴り、二回鳴り、エンドレスに曲が鳴り響き、まだ、電話に出ないのかしら?と姉は思いながら、トイレを出たそうです。
手をゆっくりと洗っていても、未だに着メロは、鳴っていました。
姉は何と無く、着メロが鳴っている個室が気になったそうです。
声をかけようかなとも、思ったそうですが、迷惑かもしれないと思い直して、トイレを後にしたそうでした。
それから、店内で買い物をして、2時間くらいが、経っていました。
姉はさあ、帰ろうと車へ向かい、また、立体駐車場のトイレに差し掛かりました。
すると同じ着メロが、トイレから、流れていたそうです。
不気味に思いながら、トイレをソッと覗きました。
やはり、1番奥の個室は、使用中でした。
同じ人だろうと姉は確信していました。
姉は声をかけようかなとまた、迷いましたが、通り過ぎました。

それから、一週間と経たずにトイレは閉鎖されました。

それから、一年の月日が流れ、例のトイレで心臓発作を起こして亡くなった人がいたと聞かされました。

姉は今でも、あの時、声をかけていれば…と後悔していました。
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