夏の風物詩

□里帰り
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その日、彼女は、真夜中の帰宅になってしまった。

実家に帰る途中であっち、こっちと寄り道をしてしまい、スッカリ、遅くなったのだ。

辺りは真っ暗闇で最終便のバスを待っていた。

実家は山手の方で1時間に一本しか来ないバスで、一度、乗り遅れると最後、1時間、待たなければ、いけないのだ。
間もなく、バスが着て彼女は乗った。
彼女は一番、後ろの座席に座った。
一番、後ろの座席は、回りが見渡せるのと広いのとで彼女は空いてると必ず、座るのだった。
バス内には、彼女を含め、三人と運転手だけだった。
暫くして、バスが停留所に停まった。
(誰か、乗る人がいたのかな?)
彼女は、そう思いながら、スーッと開いたドアを見た。
瞬間、外の熱気が、開いたドアから、入って来た。
しかし、ドアが開いても、誰も入って来なかった。
彼女は中から、バス停を見れば、誰もいない。
何だ、運転手の勘違いか〜と彼女が思っている間に入口が閉じた。
「発車します。」
バスの運転手がアナウンスして、動いた。
バスが動いて少しして、生温い風が、フワッと彼女の足元に吹いて来た。
(え?)
彼女は、その瞬間、悪寒がした。
そして、得も言われぬ恐さを感じた。
早く自分の降りるバス停に着いて欲しいと心底、願った。
後、三つ、二つ、一つと数えながら、やっと自分のバス停の名前を言われて、急いで、降りる為のボタンを押した。
ピンポーンと音が鳴り、彼女は、安堵の息を付く。
「次、停まります。」
運転手が言うのを聴いて、彼女は、一刻も早く降りたくて堪らなかった。
バス停に着き、荷物を持つと急いで、お金を払って、出た。
すると、初めから、乗っていたサラリーマンも一緒に降りて来た。
降りる所が、一緒だったらしく、サラリーマンは、すぐに彼女に声をかけてきた。
彼もまた、あのバス停で停まった事を不審に思い、彼女と同じ様に感じていたのだ。
彼女とサラリーマンは、走り去るバスを恐る恐る、振り返った!!
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